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陸軍航空の情報センター

アメリカ海軍がV-22クラッチ改修を予算計上

ブライアン・エヴァースタイン

写真:アメリカ海兵隊

アメリカ海軍は、問題が生じているV-22ティルトローターのクラッチの部品の交換を2026年から開始する。加えて、オスプレイのトランスミッションにかねてより生じてきた安全上の問題を解決しようとしているという。

オスプレイには、少なくとも2010年以降、プロップローター・ギアボックス(PRGB)にハードクラッチ・エンゲージメント(HCE)が生じ、複数の事故が発生してきた。最も良く知られているのは、2022年6月にカリフォルニア州で発生し、アメリカ海兵隊員5人が死亡したMV-22の墜落事故である。問題はインプット・クイル・アセンブリ(IQA)にあると見られ、これに不具合が発生することでクラッチが損傷すると考えられている。2023年初め以来、V-22を運用する各軍は、800時間ごとにインプット・クイル・アセンブリを交換している。

海軍は、2025年度予算要求の中で、V-22のプロップローター・ギアボックスのインプット・クイルを改修する新たな計画を明らかにしている。その改修の目的は、インプット・クイル・アセンブリの既存の問題を解消するとともに、シンデンス・クロム(薄くて密度のあるクロムメッキ)を使用した部品を一掃することにある。

V-22のギアボックスに使われているシンデンス・クロム・メッキは、ほぼ20年間に渡って問題になっていた。それは、運用中に摩耗し、オイル系統にチップ(金属片)を生じさせる原因になっていたのである。この問題は開発初期の試験でも発生していたが、安全上の問題があるとは考えられていなかった。チップの発生は、現在も続いており、近年も複数の不安全事例が報告されている。

改良されたプロップローター・ギアボックスを開発することにより、スプラグの嵌合(かんごう)特性が変化しスリップしにくくなるだろう、と海軍は予算説明資料の中で述べている。これにより、ハード・クラッチ・エンゲージメントの発生が抑制されるはずである。この資金調達は、2つの事業に区分される。1つ目は開発、試作機の調達および改修結果の確認試験を行うものである。2つ目は、全機を改良型インプット・クイルおよびクラッチに交換するためのキットを取得するものである。

この資金調達は、2026会計年度に開始され、45個のキットを4,800万ドルで調達する予定である。計画全体では、328個のキットに1億3,800万ドルが投入される。

予算要求された一連の改修事業には、この計画に加えて、新型のマスト・トルク・センサー・システム、加速度計を使用して内部構成品の状態を監視するオスプレイ・ドライブ・システム・セーフティ・アンド・ヘルス・インフォメーション、フラッペロンの信頼性改修などが含まれている。

アメリカ海軍航空システム・コマンド(Navair)は、エアロスペース・デイリーに対する3月12日の声明で、ハード・クラッチ・エンゲージメントの根本原因を絞り込みつつあると述べた。それは、「ギアボックス内部における位相のずれ」が原因であるというものである。

海軍航空システム・コマンドは、現在、ハード・クラッチ・エンゲージメントに関連して3つの取組みを行っている。
1つ目は、インプット・クイル・アセンブリのライフサイクル評価である。これは、全機のクラッチ・アセンブリの状態データを収集することで行われる。このデータにより、インプット・クイル・アセンブリの摩耗特性を把握し、摩耗モードのさらなる軽減および分析、ならびに800時間の交換間隔の検証を行う。
2つ目は、インプット・クイル・アセンブリ全体の再設計である。これは、現在、その最終段階にある。今年初めには、試作品の試験が開始される予定である。
3つ目は、ダイナミック・ディスエンゲージメント試験(嵌合解放試験)である。これにより、「ギアボックス内部における位相のずれ」が原因であることを確認し、再設計がその原因を排除しているかどうかを判断することができる。

海軍航空システム・コマンドによれば、再設計されたインプット・クイル・アセンブリには、ハード・クラッチ・エンゲージメントが1回も発生していないという。

この問題に加えて、2023年11月にアメリカ空軍のMV-22が日本沖で墜落し8人の搭乗員が死亡した事故においても、重大な欠陥が確認されている。3月上旬、海軍航空システム・コマンドは点検整備を強化することでオスプレイの飛行再開を許可すると発表したが、この事故の根本原因も不明のままである。

                               

出典:Aviation Week 2024年03月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

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