AVIATION ASSETS

陸軍航空の情報センター

FM 3-04 Army Aviation

米陸軍の航空科運用です。統合地上作戦における陸軍航空の役割、陸軍航空の編成及び任務指揮、陸軍航空の運用、陸軍航空の維持、陸軍航空の能力及び特質等について記載されています。

<部分訳>

第5章 陸軍航空の能力と特性

AH-64D/E アパッチの特性

5-1. AH-64D/E アパッチ・ヘリコプターは、攻撃、接敵機動、偵察、警戒作戦を実施可能な双発、タンデム・シートの武装航空機である。AH-64が搭載するセンサーと兵装システムの組み合わせは、地上機動部隊指揮官の相対戦闘力を優位にする。図5-1と表5-1は、アパッチの基本的な特性および寸法を示している。

AH-64D/Eは、ローター・システム上部のマストに様々な種類の装備品を取り付けることができる。ロングボウ火器管制レーダーは、地上および空中の目標を探知、標定、区分する能力を持つ戦場レーダー・システムである。火器管制レーダーは、レーダー誘導型ヘルファイア・ミサイルと連動した目標捕捉ロジックにより、ヘリコプターの火力発射能力を向上させる。アパッチは、UASを含む他のプラットフォームからのビデオ信号受信や、先進的な有人・無人協調作戦(Manned Unmanned Teaming, MUM-T)を可能にするための装備品も搭載できる。詳細については、該当する技術マニュアルを参照のこと。

5-2. AH-64D/Eヘリコプターの兵装は、30mm機関砲攻撃兵器システム、構成を変更できる2.75インチ空中ロケット・システム、ヘルファイア・モジュラー・ミサイル・システムで構成される。30mm機関砲は多重目的成形炸薬弾であるM789高性能榴弾を発射し、約1,700mまでの軽装甲目標に対して極めて有効である。

ヘルファイア・ミサイルおよび空中ロケット・システムは、任務要求に基づき、4つの汎用翼下パイロン(機体両側に2つずつ)に非対称に搭載可能である。各パイロンのロケット発射筒には最大19発のロケット、ミサイル発射筒には4発のAGM-114ヘルファイア・ミサイルを搭載できる。また、各種のロケット弾および派生型ヘルファイア弾を使用できる。ロケット弾は、高性能榴弾、フレシェット、多目的子弾、発煙弾などが使用できる。さらに、より精密なロケット攻撃のために先進精密殺傷兵器システムも使用できる。

ヘルファイア・ミサイルはレーザーまたはレーダー誘導が可能で、その弾頭には高性能成形炸薬弾、破砕弾、または多目的/プログラム可能弾頭などが使用できる。ただし、環境条件によっては、兵器搭載量やそれに伴う滞空時間が大幅に制限される場合がある。外部および内部増槽燃料タンクを搭載できる。アパッチの兵装システムに関する詳細については、TC 3-04.3を参照のこと。

図 5–1 AH-64D/E アパッチ・ヘリコプターの寸法
表5-1 AH-64D/E アパッチ・ヘリコプターの性能諸元

UH-60/HH-60 L/M ブラックホークの特性

5-3. シコルスキーUH-60L/Mブラックホークは、双発、複座の多用途ヘリコプターである。ブラックホークの主要任務は、空中機動、航空輸送、指揮・統制(C2)支援、航空医療後送(HH-60派生型)、および患者後送である。本機は、戦闘装備を搭載したヘリボン部隊11名(座席設置時)を輸送できるように設計されている。また、軽野戦砲や支援物資も輸送できる。図5-2および表5-2(5-3ページ)は、UH-60L/Mの基本的な説明と特性を示している。詳細については、該当する技術マニュアルを参照のこと。

図5-2 UH-60 M/L ブラックホーク・ヘリコプター
表5-2 UH-60 L/M ブラックホーク・ヘリコプターの性能諸元

CH-47F チヌークの特性

5-4. ボーイングCH-47Fチヌークは、双発、タンデム・ローターの大型輸送ヘリコプターである。その主要任務は空中機動および航空輸送であり、空中患者後送、空中消火用バケット、空挺降下、ヘリキャスト任務も実施可能である。CH-47の多用途性により、機動部隊は作戦地域(area of operations, AO)の広範囲および縦深全体にわたって迅速な再配置が可能となる。図5-3および表5-3(5-5ページ)は、チヌークの基本的な寸法と特性を示している。詳細については、該当する技術マニュアルを参照のこと。

図5-3 CH-47F チヌーク・ヘリコプター
表5-3 CH-47F チヌーク・ヘリコプターの性能諸元

MQ-1C グレイ・イーグルの特性

5-5. MQ-1Cグレイ・イーグルは、師団の戦闘航空、火力、戦場監視旅団、旅団戦闘団(BCT)、その他の陸軍および統合部隊に対し、専用の任務適応型無人航空機システム(UAS)支援を提供することを主要任務とする多目的、多ペイロード・システムである。長時間の滞空能力を有し、ほぼリアルタイムの偵察、精密攻撃が可能である。グレイ・イーグル中隊は、戦闘航空旅団(Combat Aviation Brigade, CAB)および軍事情報収集航空旅団に編制装備されている。グレイ・イーグルは、CABの有人航空機と連携することも、地上部隊指揮官の目標および情報要求を支援するために自律的に運用することもできる。

5-6. 図5-4はグレイ・イーグルの基本構成を示しており、表5-4は航空機の特性を概説している。詳細については、該当する技術マニュアルを参照のこと。

5-7. MQ-1Cグレイ・イーグルUASは、偵察および監視を支援するために使用される。MQ-1Cは、AGM-114ヘルファイア・ミサイルを装備し、選択された目標を攻撃することができる。レーザー測距器およびレーザー指示器を使用することで、目標までの距離を測定し、レーザー誘導弾を投射する目標を指示できる。攻撃兵装では4発のミサイルが搭載され、偵察/攻撃兵装では2発が搭載される。AGM-114 P+およびAGM-114R/R2シリーズのミサイルを搭載できる。

AGM-114Rは、統合された爆破破砕スリーブ弾頭を組み込んでおり、指揮官に3つの能力を提供する。すなわち、先行炸薬による高性能対戦車能力、軽車両および人員に対する爆破破砕能力、そして弾頭が構造物に侵入し、爆発前に弾頭の過圧特性を最大化するように設定可能な遅延能力である。AGM-114R2は、それに加えてミサイルが目標に命中する前に弾頭を爆発させる空中炸裂能力を有している。グレイ・イーグルの兵装システムに関する詳細については、TC 3-04.3を参照のこと。

図5-4 MQ-1C グレイ・イーグル無人機
表5–4 MQ-1C グレイ・イーグル無人機の性能諸元

RQ-7BV1/V2 シャドウの特性

5-8. RQ-7BV1/V2は、偵察を主要任務とする戦術UASである。CABの空中騎兵大隊(ACS)および旅団戦闘団(BCT)の軍事情報中隊に編制装備されており、シャドウはCABの有人航空機と連携することも、地上部隊指揮官の目標達成を支援するために自律的に運用することもできる。図5-5はRQ-7BV1およびV2の基本諸元を示しており、表5-5(5-8ページ)は特性を示している。詳細については、該当する技術マニュアルを参照のこと。

図5-5 シャドウ無人機
表5-5 シャドウ無人機の性能諸元

C-12シリーズ固定翼機

5-9. C-12シリーズは、PT6A-42ターボプロップ・エンジン2基を搭載した与圧式、低翼、全金属製の固定翼機である。全天候型能力を有し、流線型のエンジン・ナセル、4枚ブレードのプロペラ、T字尾翼、および後部胴体下部の二重のストレーキという特徴を有する。世界のあらゆる地域で、定期または不定期の旅客および/または貨物の航空輸送を提供することを基本任務としている。図5-6(5-9ページ)は、C-12の基本諸元を示している。表5-6(5-9ページ)は特性を示している。詳細については、該当する技術マニュアルを参照のこと。

図5-6 C-12固定翼機
表5-6 C-12固定翼機の性能諸元

RC-12 ガードレール

5-10. ガードレールは戦域レベルの空中信号情報収集・位置特定システムである。脅威となる通信および非通信発信源を対象とし、戦域内の戦闘員に対してほぼリアルタイムの信号情報収集と目標情報を提供する。乗員は2名のパイロットで構成され、すべての任務装備は本拠地から遠隔操作される。

MC-12 強化型中高度偵察監視システム

5-11. MC-12強化型中高度偵察監視システム固定翼機は、フルモーション映像およびその他の情報収集の両方が可能である。乗員は2名のパイロットと2名のペイロード操作員で構成される。広範囲な任務を可能にするため、豊富な通信能力を有している。

5-12. この航空機の任務能力は、偵察、パターン解析、変化検知、目標の位置特定・追跡、広域偵察・監視で構成される。任務は戦域に割り当てられるが、必要に応じて個別の部隊レベルに割り当てることもできる。

UC-35固定翼機

5-13. UC-35は、双発ターボファンの中距離固定翼機である。主要任務は、旅客および貨物の航空輸送である(図5-7および表5-7参照)。

図5-7 U-35固定翼機
表5-7 U-35固定翼機の性能諸元

AN/MSQ-135 – モバイル・タワー・システム(MOTS)

5-14. AN/MSQ-135モバイル・タワー・システム(MOTS)は、到着、出発、地上運用に関する航空交通管制サービス(ATS)を迅速に確立する、迅速展開可能な航空交通管制(ATC)管制塔および飛行場照明システムであり、CABの航空管制中隊および飛行場運用大隊に編制装備されている。既存の飛行場照明の制御など、飛行場運用を遠隔制御するための機器を装備する。地表から半径5マイルの範囲で10,000フィートまでの空域を管制できる。適切な航法援助施設(編制装備外)があれば、昼夜を問わず全天候条件下での軍用および民間機に対し航空交通サービスを提供できる。

標準的な陸路、鉄道、海路で輸送可能である。さらに、システム全体をC-17以上の固定翼機で輸送可能である。ATC管制塔、飛行場照明システム発電機/機器トレーラー、飛行場照明システム照明/機器トレーラー、および飛行場照明システム移動装置1および2は、CH-47以上の回転翼機でスリング輸送できる。図5-8(5-11ページ)はAN/MSQ-135を示している。詳細については、TC 3-04.6を参照のこと。

図5-8 モバイル・タワー・システム(MOTS)

AN/TPN-31 航空交通航法・統合・調整システム(ATNAVICS)

5-15. AN/TPN-31(図5-9、5-12ページ)は、通常、初期または後続部隊の一部として管制塔システムとともに展開され、統合運用および戦域責任範囲内の着陸地点/飛行場において全天候型計器着陸能力を確立する。航空交通航法・統合・調整システム(ATNAVICS)は、作戦地域(AO)到着後60分以内に地上誘導着陸運用を提供できる。CAB、TAB、飛行場運用大隊(AOB)、師団、および戦域空域要素の管制塔システムおよび戦術空域統合システム(TAIS)と音声およびデジタル・データ・リンクで直接接続することで、現在の運用を支援する空域データを取得する。

安定化および民生支援運用に関する連邦航空局、国際民間航空機関、北大西洋条約機構、および欧州航空航法安全機構の基準に準拠しており、必要に応じ、国内または受入国の空域システムと統合できる。戦術システムではあるが、平時における常続的な支援も提供できる。柔軟性のある設計により、固定基地での使用も可能である。

5-16. ATNAVICSは、半径25海里の範囲内での地域監視および航空機識別能力を有する。空港監視レーダー、精密進入レーダー、二次監視レーダーの3つの統合レーダーと7名の航空管制官で構成される。C-17以上の戦域貨物機で輸送し、システム全体(牽引車、シェルター、レーダー・グループ、発電機)を展開させることができる。ATNAVICSのシェルター、センサー・パレット、および発電機は、UH-60以上のヘリコプターで懸吊輸送が可能であり、分割可能となっている。詳細については、TC 3-04.6を参照のこと。

図5-9 AN/TPN-31 航空交通航法・統合・調整システム(ATNAVICS)

AN/TSQ-221 戦術空域統合システム(TAIS)

5-17. AN/TSQ-221(図5-10)は、空域統制計画、運用、および航空交通管制サービス(ATS)地域支援のためのデジタルおよびアナログ・システムである。本システムは、あらゆる空域計画に自動化された支援を提供し、空域管理の運用(リアルタイム)を強化し、戦域内の全てのATS施設と空域利用者の間の連携を確保する。TAISチームは、作戦地域(AO)到着後30分以内に空域情報センターの運用を開始できる。詳細については、TC 3-04.6を参照のこと。

5-18. TAISは、航空運用センター内に位置する戦域戦闘管理コア・システムに直接リンクする。ウェブ空域競合回避アプリケーションは、統合部隊の空域要求を計画および実行するための統合空域管理ツールである。本システムは、統合、多国籍、および民間の指揮・統制・通信・情報システムとの互換性を有し、C2システムに統合される。

5-19. TAISは、4つのワークステーションを備えた移動式システムである。通信には、見通し内および衛星ベースの音声通信システム、GPS、ファックス、改良型データ・モデム、秘匿電話ユニットIIIが含まれる。本システムは、部隊運用を支援する戦場空域の同期を最大限に実現し、友軍相撃を局限する。

図5-10 戦術空域統合システム(TAIS)

AN/TSQ-198B 戦術ターミナル管制システム(TTCS)

5-20. AN/TSQ-198戦術ターミナル管制システム(図5-11)は、戦術航空管制チーム任務用の高機動多目的装輪車(HMMWV)搭載型航空交通管制(ATC)システムである。戦術ターミナル管制システムは、降下地域、降着地域(LZ)、搭載地域(PZ)、燃料弾薬再補給点(FARP)、暫定飛行場、および一時的なヘリコプター運用地域における航空交通の有視界飛行方式管制を可能にする。本システムは、リスク管理上ATCが重要となる局所的な大量航空運用における初期進入作戦に最適なシステムである。到着後15分以内に確実かつ適正な航空交通管制サービス(ATS)の統制を開始できる。4名の航空管制官を配置することで、24時間運用が可能である。

主要な通信コンポーネントには、AN/VRC-114、マルチバンド無線機、およびAN/VRC-104高周波無線機などがある。通信システムは、携帯型バッテリー駆動の携帯構成に変換でき、車両から最大1キロメートル離れた場所から遠隔操作することができる。ブルー・フォース・トラッカーは、無線機制御装置の隣に搭載されており、移動中においてもGPSを使用し、ほぼリアルタイムの水平および垂直方向の情報を共有できる。

GPSは、無線/衛星ベースのネットワークに接続し、自身の位置を表示し、他のシステムに位置を報告し、状況把握および指揮・統制(C2)データを送受信および表示する。AN/TSQ-198は、UH-60または同程度のヘリコプターで懸吊空輸が可能であり、C-130航空機で輸送することもできる。詳細については、TC 3-04.6を参照のこと。

図5-11 戦術ターミナル管制システム(TTCS)
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発行:Headquarters Department of the Army 2020年04月

備考:米陸軍が公開しているファイルへのリンクは、こちらです。

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5件のコメント

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