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陸軍航空の情報センター

小型UASの現況と懸念事項

小型UAS(Small Unmanned Aircraft System, 小型無人航空機システム)とヘリコプターとの衝突事故が初めて発生したのは、2017年9月のことであった。ニューヨーク州で警戒任務を行っていたUH-60Mの搭乗員は、高度500フィートを飛行中に何かと衝突した可能性があることを通報した。着陸後に飛行後点検を実施したところ、機体内部からモーター1個を含むクワッドコプター・ドローンの部品が発見された。当該小型UASはUH-60Mの下方から接近し、左前方胴体に衝突した後、メイン・ローター・ブレードに接触して下方に跳ね返された。その機体の一部がトランスミッション・ドライブ・シャフトの下方に残っていたのである。ヘリコプターは、ドアが損傷し、メイン・ローター・ブレード1本の交換が必要となった。

最近になってからも、UAS(Unmanned Aircraft Systems, 無人航空機システム)により有人機への深刻な影響が生じた事案に関し、2件の改善命令(EXORD, execute order)が発出されている。陸軍は、その変革を継続して技術的優位性を維持するため、今年の3月にすべてのRQ-7Bシャドウ(戦術UAS)およびRQ-11Aレイヴン(小型UAS)の運用を停止して売却し、より戦術的に有利なシステムの調達を進めることを決定した。将来型戦術UAS(Future Tactical UAS)は従来のシステムと同様の特性を維持しつつ、VTOL(vertical takeoff and landing, 垂直離着)能力を備えたものになる。滑走路が不要となるため、従来のシステムでは運用が困難であった地域でも運用できる。退役するRQ-7Bと同じく、旅団(旅団戦闘団または戦闘航空旅団)レベルの編制装備品として配備される予定である。

そんな中、小型UASも大きな変革を遂げ、陸軍全体への配備拡大が進められている。小型UASは、短距離偵察(short-range reconnaissance, SRR)、中距離偵察(medium-range reconnaissance, MRR)および長距離偵察 (long-range reconnaissance, LRR)の3つのカテゴリに分類されており、陸軍のさまざまな部隊に配備される。その操縦は、すべて航空科職種以外の特技保有者によって行われる。2023会計年度の時点では、陸軍全体で約400台の小型UASシステムが保有されていた。航空プログラム・エグゼクティブ事務局の予測によれば、2025年度にはその数が800台以上まで増加する。さらに、2026年度には1,600台を超える見込みだという。図1に示すように、小隊レベルまでのほぼすべての部隊が何らかのUASを編制装備することになる。計画されているすべての機体は、多少なりとも殺傷性を有しており、有人機との衝突を防止するための対策が必要である。

図1:小型UASファミリー

航空科職種ではあまり知られていないが、歩兵プログラム・エグゼクティブ事務局は、SBS(Soldier Borne Sensor, 兵士携帯センサー)プログラムの拡大を計画中である。この個人用UASは、重量が1ポンド(約0.45キログラム)未満、飛行範囲が900メートル以下で、滞空時間の短いドローンであり、関係当局の許可が得られれば、特別な訓練や専用の空域を必要とせずに飛行させることができる。現在は分隊レベルまで配備が進んでおり、陸軍全体で9,000機を超えるSBSが使用されている。部隊に近接した地域を超低空で飛行する有人機にとって、潜在的な脅威となりつつあるのだ。

図2:SBS(兵士携帯センサー)

これらの新型UASの開発および配備が完了するまでの間も、民生品のUASを部隊で調達することが推奨されている。その調達は、各部隊指揮官の裁量により実施されることになる。その総機数は不明だが、有人機と空域を競合し合うUASの総数をさらに増加させることになる。

最初に述べたUH-60Mへのドローンの衝突は、軍用小型UASによるものではなく、軍が運用していたものでもないが、それがもたらした教訓およびそれに伴って発出された安全指示は現在も有効である。ほとんどの小型UASは、有人機との相互連携が必要な高度や地域において運用される。それへの対策(運用制限空域、制限区域、高度制限などの設定)はもはや不可欠であり、有人機の搭乗員にはそれに対する高い警戒心が求められる。無人機との衝突を回避するためには、所在する駐屯地などから飛行を開始する前に、誰が地上にいて、どのようなUASを運用しているのかをあらかじめ把握しておくことが何よりも重要である。

図3:RQ-11レイブン
                               

出典:FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness Center 2024年06月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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