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陸上航空(陸上自衛隊航空科職種)の教育訓練、運用、装備、安全等に関連する米軍情報の発信源

障害物地図は更新されていますか?

上級准尉4 ジョンズ・アドコック
第160特殊作戦航空連隊(A)第1大隊F中隊
ケンタッキー州フォートキャンプベル

それは、12月の初め、韓国のキャンプ・テグ(訳者注:ソウルの南東約250kmに位置する大邱(テグ)広域市に所在するいずれかの駐屯地を指すものと思われる。)でのことでした。私は、キャンプ・ハンフリース(訳者注:ソウル市の南約60kmに位置する米軍キャンプ。飛行場がある。)を拠点としている患者後送部隊での2回目の勤務を開始してから7ヶ月が経過していました。このことが起こる1週間後には、米国本土で妻や子供達とクリスマスを過ごすための休暇を取得する予定でした。
 その日、私は、既に何回も経験済みのキャンプ・テグでの派遣待機任務に上番し、緊急患者後送の電話を待ち受けていました。1900頃、運の良いことに、部隊医務室から、妊娠に伴う合併症を発症した米軍兵士の妻をソウルまで航空搬送して欲しいという要請を受けました。機長である私は、搭乗員が飛行準備を行っている間に、気象ブリーフィングを要求するとともにフライト・プランを提出しました。
 気象予報によれば、「散在する雲によるシーリングが5,000フィート、低地の靄(もや)及び霧により視程が6,000メートルに制限されているが、離陸後1時間で快晴になり、視程障害は解消する」ということでした。キャンプ・テグから目的地であるソウルまでの経路は、何回も飛行した経験があり、地形にも習熟していました。
 航空機の位置で他の搭乗員と合流すると、最終ブリーフィングを実施し、患者搭載点に向けて地上移動を開始しました。駐機位置から100メートル程移動したところで、第2待機要員の一人が機体に近づいて来て、「患者が旅行バックの到着を待っているので、離陸が15分程遅れそうだ」と伝えてくれました。その15分は、30分になり、次に45分になったところで、やっと患者が現れ、気象予報有効時間が切れる直前に離陸することができました。
 患者の容態は、化粧ポーチを待つために出発を遅らせるくらいでしたので、慌てることなく飛行していました。離陸してしばらくの間は、夜空が美しく澄み渡っており、すべての星が見えるようでした。しかしながら、離陸後約30分で視程が2,000メートル位まで悪化し始めました。韓国の南部地域を縦断してから、ソウルがある平地に入る直前の最も高い稜線に近づいた時、ひどい雪が降り始めました。我々は、谷から流れ出ている川に沿って、まるでクリスマスのようにライトアップされた小さな町の上空を飛び続けました。低空をゆっくりと飛行し、稜線を超える直前までたどり着きましたが、雲に行く手を阻まれ、前進できなくなりました。
 やむを得ず方向を転換し、5分ほど引き返したところ、吹雪から脱出することができました。計器飛行高度まで上昇してから計器飛行を申請し、目的地の手前にあるキャンプ・ハンフリーに向かい、給油することにしました。着陸後、キャンプ・ハンフリーに所在する別の即応待機要員に患者を申し送ったところで、我々の任務は終了しました。
 我々は、速やかに燃料補給と気象情報の入手を済ませると、キャンプ・テグに帰投するために離陸しました。気象観測員に予報されていなかった吹雪が発生した時間と場所を情報提供しましたが、恐らくそれはもう既に移動したか、消滅していると思われました。新たに入手した気象予報によれば、経路間は快晴で視程障害がなかったため、有視界飛行方式で離陸しました。キャンプ・テグに向かう途中で、先ほど前進しようとした経路を北上してみることにしました。すると、先程は吹雪だった町の北側にある稜線上に、町の北側の麓に向かって谷を渡っている3インチのケーブルとそれを支える巨大な支柱を発見したのです。
 そのケーブルは、更新されているはずの我々の地図には記載されていませんでした。我々は稜線の直前まで行ってから引き返したので、気がつかないうちに1度だけでなく2度もそのケーブルの下を飛行していたのです。キャンプ・テグに帰投後、改めて自分の地図とキャンプ・テグにある障害物地図を比較したところ、そのワイヤーは、キャンプ・テグにある障害物地図にも記載されていませんでした。しかし、後ほど確認したところ、キャンプ・ハンフリーにあるマスターの障害物地図は、既に更新されており、ワイヤーが記載されていたのです。
 本件は、我々に悲劇の結末をもたらしていたかも知れません。我々がワイヤーに衝突しなかったのは、単に運が良かっただけなのです。飛行に関わる事項は、すべて慎重に確認しなければなりません。自分の地図に正しく障害物が記載されているか、しっかりと確認することが必要なのです。

出典:KNOWLEDGE, May 2015, U.S. Army Combat Readiness/Safety Center
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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