AH-64の過去5年間の航空事故発生状況(2020~24年度)
航空事故は陸軍にとって、人命の損失、航空機の損傷、および陸軍航空の即応性に影響を及ぼす重大な問題である。これらの事故の原因には、人的ミス、器材の欠陥および環境など、多岐に及ぶ要因が相互に絡み合っている。事故の原因を究明し、それを軽減または防止するための戦略を実行することが、陸軍航空の運用を改善することにつながる。
AH-64アパッチについては、2020年度から24年度第3四半期までの約5年間(飛行時間約586,000時間)に105件のクラスA~Cの航空事故が発生した。その内訳はクラスA事故が16件、クラスB事故が12 件、クラスC事故が77件であり、被害総額は4億3,720万ドル、死者数7名、負傷者数27名であった。表1は、クラスA~Cの事故の年度別発生件数を示している。
表2は、同じ期間におけるクラスA~C事故の死亡者および負傷者数を示している。クラスA事故は16 件、クラスB事故は12件、クラスC事故は77件であった。
陸軍の事故報告用アプリケーション(事故および不安全報告 – ASMIS2.0)は、陸軍安全管理情報システムからアクセスできる。このアプリケーションを使用することにより、航空事故を部隊識別コード(Unit Identification Code, UIC)ごとに送信および確認できる。そうすることによって、航空事故を正確に把握・分析し、事故防止に役立てることができる。表3は、105件の事故の事故発生状況および事故分類別の発生件数を示している。
AH-64の(飛行中の)事故は、事故発生率を計算するための発生件数にカウントされる。 クラスAの(飛行中の) 事故は16件発生し、事故発生率は10万時間あたり2.73件であった。(飛行中の)クラスA~C事故は64件発生し、発生率は10.92であった。これに対し、回転翼機全体のクラスAの5年間の事故発生率は0.90、クラスA~Cの発生率は 6.74 であった。回転翼機の総飛行時間の15.6%を占めるアパッチが、クラスA事故の42%、クラスA~C事故の23%を占めた。
AH-64DからAH-64Eへの移行が進むに従って、総飛行時間の割合も64Dから64Eへと年を追うごとに移り変わっている。2013年度から2024年度にかけて、AH-64全体の総飛行時間は162万時間を超えたが、2020年度から2024年度は約58万6,000時間にとどまった。64Dは総飛行時間の33.9パーセントを占め、105件のクラスA~C事故の32パーセントを占めた。その内訳はクラスAが6件、クラスBが2件、クラスCが26件で、死亡者が5名、負傷者数が9名であった。
64Eは飛行時間全体の66.1パーセントを占め、105件のクラスA~C事故の68パーセントを占めた。その内訳はクラスAが10件、クラスBが10件、クラスCが51件で、死亡者が2名、負傷者が18名であった。表4は、2013年度から2024年度(第3四半期)までの総飛行時間の推移を示している。
航空事故は通常、人的ミス、機体の故障、環境条件の組み合わせによって発生する。人的ミスは、パイロットや整備員が疲労、経験不足、コミュニケーション不足、認知能力を超えた過負荷などにより誤りを犯したときに発生する。航空機の構成品に不具合が生じると、機体が故障する。潜在的な問題を把握するためには、定期的な整備および徹底的な検査が必要である。環境条件とは、天候が予想よりも悪化した場合、鳥と衝突した場合など、飛行の安全に悪影響を与えるその他の外部要因である。105件のクラスA~C事故を分析した結果、人的ミスが主因の事故が69パーセントであり、機体の故障が主因の事故は19パーセント、環境状況が主因の事故は11パーセントを占めていた。表5は、事故の原因別割合を示している。
結 論
人的ミスは、クラスA~Cの航空機事故の主な原因であり、これを抑制しなければ、より重度な事故の発生を防止できない。多くの航空事故は、チェックリストや規定された手順に適切に従うことで回避できる。陸軍における航空事故の主な原因を把握し、人的ミスを減らす戦略を継続し、陸軍における航空運用を改善することが求められている。
出典:FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness Center 2024年07月
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。
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