航空事故発生状況－油圧系統への異物混入による操縦不能

当該AH-64Dは、ナイト・ビジョン・システム（NVS）を使用した夜間訓練において、5フィート（約1.5メートル）の高度で安定したホバリングを実施中、操縦桿に左への制御不能な変位が生じ、地面に約60度傾いた状態で墜落した。墜落の衝撃により、機体に壊滅的な損傷が生じたが、搭乗員に重大な負傷はなかった。

発生状況

搭乗員は1700L（現地時間）に集合し、NVS訓練飛行の任務を開始した。任務ブリーフィングに参加した搭乗員たちは、飛行のリスクを低いと評価した。1845、搭乗員たちは機体に向かい、飛行前点検およびエンジン始動を行った。天候は晴れで視程は10マイル、風向は340度、風速は9ノットであった。気温は摂氏10度、気圧高度は100フィートであった。1940L（現地時間）頃、搭乗員たちは駐屯地を離陸し、超低空飛行任務を行うため指定された訓練区域に向かった。超低空飛行訓練を終了した後、搭乗員たちは傾斜地着陸を行うため場外着陸場に向かい、2030L（現地時間）頃に到着した。傾斜地への着陸を完了した後、副操縦士が操縦して5フィートのホバリングを行っていたところ、右に1回、左に2回の制御不能の横揺れが発生した。教官操縦士は操縦を引き継いで、機体を安定させた。その後、機体は左右に制御不能なロール運動を始め、続いてサイクリックが左側に変位し、メイン・ローター・ブレードが地面に接触した。機体は墜落し、重大な損傷が生じたが、搭乗員に重大な負傷はなかった。

搭乗員の練度

後部座席に搭乗していた教官操縦士の総飛行時間は約3,000時間であり、そのうちAH-64での飛行時間は2,800時間、教官操縦士としての飛行時間は1,200時間、NVS飛行時間は800時間であった。前部座席に搭乗していた副操縦士の総飛行時間は142時間であり、そのうちAH-64Dでの飛行時間は62時間、NVS飛行時間は12時間であった。

考察

当該AH-64Dを前日に操縦した搭乗員も、地上運用中に左サイクリックへの制御不能の入力があったこと報告していた。整備員は当該異状に対して適切な整備を実施したうえで、当該機を飛行可能と判断した。当該機は事故当日の事故発生前にも1回の飛行を行っていたが、その際には異状が報告されなかった。調査の結果、油圧系統内に異物（contaminants）が混入していたことが機能不良の原因であると判明した。当該異物は、メカニカル・スプール・バルブと安定増大装置（SAS）アクチュエータ・スリーブとの間に固着を生じさせた。その結果、ラテラル・サーボ・アクチュエータは、サーボに接続された機械的リンケージを通じて、飛行制御系統を反対方向に駆動させてしまったと推定される。