AVIATION ASSETS

陸軍航空の情報センター

編隊飛行におけるCRMと通信の重要性

上級准尉2 ジョナサン・オースマン
第2-158強襲ヘリコプター大隊A中隊
ワシントン州ルイス・マッコード統合基地

ある同僚のパイロットから、こう言われたことがあります。「機長になったならば、副操縦士にヒヤリとさせられる経験をするのは時間の問題だ」と。私の場合、それを経験したのは機長に昇格してから約4ヶ月後のことでした。それは、編隊内の他の航空機とのニアミスでした。航空における事故事例の多くがそうですが、そこには数多くの貴重な教訓がありました。

問題の事案は、カリフォルニア州フォート・アーウィンにあるナショナル・トレーニング・センターでの訓練期間中に発生しました。その副操縦士と私の機体は、旅団長の戦場連絡飛行任務を遂行していた2機編隊の2番機でした。私はその若い副操縦士を左席(操縦士席)に着座させ、操縦桿を握らせていました。我々は、旅団長以外のVIP(Very Important Persons, 要人)を搭乗させて前方作戦基地を出発しました。副操縦士が編隊内通話を担当し、私は管制機関への位置通報および統制線通過の連絡を担当していました。出発したばかりの地上部隊との交信も行っていた私は、ワークロードを軽減するため、編隊内通話の無線機のピン・スイッチを下げ、聞こえないようにしていました。

長機の搭乗員は、搭乗している旅団長から、先ほど追い越した車両縦隊を確認するよう指示され、そのことを編隊内通話でアナウンスしました。その無線交信は私の耳には届かず、機内通話システム上でもその変更についての会話は一切ありませんでした。長機は、アナウンスしたとおりに非常にゆっくりとした左旋回を開始しました。私は、長機のその動きを単に針路を変更しているだけで、180度方向転換するものではないと判断していました。

我々は左千鳥隊形で飛行していました。操縦桿を握っていた副操縦士は、編隊飛行の経験がほとんどなかったので、長機の旋回経路の内側を通常よりも大きな距離を保ちながら追随していました。我々が旋回の半分を終える頃には、長機はその針路反転をほぼ完了していました。このため、我々は長機と交差する飛行経路に入ってしまいました。

機首下方の長機を見失い始めた副操縦士は、「ユー・ハブ(操縦交代)」を宣言しました。まだ長機を視認できていた私は、直ちに操縦を交代しました。距離が非常に接近していたため、長機を回避するためには急激な機首上げと右旋回を実施せざるを得ませんでした。我々の機体は、間一髪の距離で長機とすれ違いました。

教訓

振り返ってみると、この状況を回避するため、搭乗員として、そして機長として、実施すべきだった事項がいくつかありました。それは主にCRM(Crew Resource Management, クルー・リソース・マネジメント)と通信に関する問題でした。任務終了後、我々は何が発生したのかを検討し、今回の状況から得られた教訓を明確にしました。

副操縦士は、すべての操作を搭乗員にアナウンスするとともに、今回のような大きな旋回の場合には可能な限り旋回の外側に移動するべきでした。私は、それ以降、自分がどの無線をモニターしているかを確実に搭乗員に伝達しています。また、他の誰かがモニターしていない無線があり、その者に関係する内容を受信した場合には、そのことを確実に伝達するようにしています。これらはすべてブリーフィングにおいて徹底すべき事項です。ただし、それでも問題が発生した場合に備え、代替案を準備しておく必要もあるでしょう。

                               

出典:Risk Management, U.S. Army Combat Readiness Center 2025年09月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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1件のコメント

  1. 管理人 より:

    機長が編隊内通信をモニターしないなんてことが、あるものでしょうか?
    パイロットの方のご見解をいただきたいです。