競技会から戦場支配へ:米陸軍ドローン・チームが主導する小型無人機戦力の革新


UAS (Unmanned Aerial Systems, 無人航空機システム) の戦力化は、戦闘の様相が急速に進化する現代の軍事作戦において、決定的なゲーム・チェンジャーとなっています。敵対勢力が新技術に適応していくなか、米国陸軍はこの変革の最前線に立ち、UASの能力を活用して、状況認識、精密打撃、および後方支援能力の強化を進めています。イラクの砂漠から太平洋の鬱蒼(うっそう)としたジャングルに至るまで、ドローンの役割は単なる情報収集・警戒監視にとどまらず、戦闘の概念そのものを根本から覆すものとなっています。
最近の軍事論評において、有識者たちは、小型ドローン戦において米陸軍は「後手に回り、必死に遅れを取り戻そうとしている」と指摘しました。しかし、この評価は、米陸軍における戦闘力の生み出され方を根本的に誤解しています。陸軍は、後手に回って泥縄式に対応しているのではなく、歴史的に最も得意としてきたアプローチを実践しています。すなわち、新たに出現する戦い方をいち早く特定し、優れた人材を組織化し、実戦的な競技会、訓練、そして技術革新を通じて、戦場における圧倒的優位の確立を加速させているのです。この姿勢が最も顕著に表れているのが、USADT (U.S. Army Drone Team, 米国陸軍ドローン・チーム) なのです。

陸軍ドローン・チームの創設
2025年夏、アラバマ州フォート・ラッカーのAVCOE (Aviation Center of Excellence, 航空教育研究センター) に所在する第1航空旅団の隷下に創設されたUSADTは、「ドローン領域における優勢確立」に関する大統領および陸軍長官の命令により編成されました。部隊の立ち上げは、RQ-7シャドーの操縦士からFPV (First Person View, 一人称視点) オペレーターへと配置転換された、わずか数名の隊員によって始められました。初期の競技会での輝かしい戦果は、この部隊コンセプトの正当性を即座に証明するものとなりました。これに続いたのは、周到な組織化でした。正式な任務の付与、指揮官の配置、標準化された教育訓練課程の構築、そして「国内外の競技会を通じて無人システムの技術革新を推進し、現代戦における技術的および作戦的な優越を確実にする」という明確な目的が設定されました。USADTは、次世代のドローン・オペレーターの募集と練成を通じて、陸軍の「持続的な部隊変革構想」に沿った戦術的および技術的能力の向上を牽引しています。
正式な部隊として編成された直後の最初の課題は、陸軍内でトップクラスの無人システム・オペレーターを発掘し、採用することでした。私たちは、そうした素質を持つ人材が陸軍内に埋もれていることを認識しており、その才能を見つけ出し、部隊の戦力として組み込むための効果的な手段を必要としていました。これを達成するため、私たちは2025年10月15日から29日にかけて、主にVelociDrone・FPVシミュレーターを適性評価ツールとして活用し、大規模な募集選考を実施しました。120名を超える志願者に対し、推薦状や身上明細を綿密に分析し、面接試験を実施した上で、30名の新メンバーを厳選しました。私たちの人材獲得の目標は、陸軍屈指のFPVオペレーターを見出し、共通の練度基準に達するまで錬成し、最新のドローン技術を装備させた上で、国内外の競技会で覇を競わせつつ、陸軍全体の技術革新を波及させることです。
志願者は、ハワイやドイツ駐留部隊、そしてFORSCOM (United States Army Forces Command, アメリカ陸軍総軍) 隷下のほぼすべての主要な師団から集結しました。USADTは、歩兵科、EOD (Explosive Ordnance Disposal, 爆発物処理班)、軍事情報科、航空科、憲兵科、およびサイバー科の隊員からなる、多様なMOS (Military Occupational Specialties, 特技) と経歴を持つ混成チームとなりました。
部隊編成後、私たちが挑んだ初の本格的な部外対抗は、フロリダ州オーランドのフル・セイル大学とキャンプ・ブランディング統合訓練センターの2か所で開催された、全米ドローン協会の「マニューバー・アンド・クルーシブル(機動および総合戦闘評価)」でした。USADTは、フル・セイル大学での機動(マニューバー)種目において最速タイムを叩き出して優勝し、総合戦闘評価(クルーシブル)における長距離交戦種目でも、目標に対する最も高精度な命中判定を獲得しました。しかし、競技での勝利以上に価値があったのは、第75レンジャー連隊や海軍特殊部隊(ネイビー・シールズ)との競い合いを通じて得た実戦的な練度向上です。これにより、私たちの戦術は限界まで試され、小型ドローン戦への理解が飛躍的に深まりました。部隊内で現在「キャンプ・ブランディングの戦い」と語り継がれている夜間の部隊対抗(フォース・オン・フォース)訓練では、特に制限された空域、複雑な地形、限られた装備という悪条件下において、今後の陸軍全般の無人システム訓練の指針となる貴重な戦訓が得られました。これこそが、机上の空論ではなく、戦場の「摩擦」を通じて迅速に学習し、状況に適応していく、教育訓練の真骨頂なのです。

戦訓の反映と急速な戦力化の融合
しかしながら、「戦訓を学ぶこと」は決して「後手から必死に挽回すること」と同義ではありません。ドローン領域での圧倒的優位の確立に向けた米国陸軍の取り組みは、小型無人システムに関する装備調達、教育訓練、そして専門的知見の蓄積において、過去のいかなる施策と比較しても、前例のない圧倒的なスピードで進められていると、部隊の多くの隊員が証言するでしょう。さらに言えば、米国陸軍は長年にわたり無人システムを実戦投入してきた実績があります。ロシアによるウクライナ侵攻が始まる遥か以前から、無人システムを最前線で運用していた隊員もいるのです。陸軍のドローン戦への資源投入は、他国への受動的な反応ではなく、自らその進化を加速させている状態にあります。過去わずか6か月の間に、陸軍航空部隊という単一の部門だけを切り取ってみても、装備品の保有枠を大幅に拡充し、UALC (Unmanned Advanced Lethality Course, 無人高度致死性課程) のような専門要員の継続的な育成・供給体系を開設しました。また、SAG-U (Special Assistance Group- Ukraine, ウクライナ特別支援グループ) との連携を通じて、作戦レベルでの戦術的知見の蓄積に直接的に寄与しています。こうした一連の取り組みは、事態への組織的な狼狽(ろうばい)などではなく、将来の武力紛争を見据えた周到な作戦準備の表れです。
9.11テロ以降の非対称戦の歴史は、米国陸軍が新たな脅威にいかに効果的に適応してきたかを示す、極めて説得力のある実例です。イラクやアフガニスタンにおいて、陸軍は対反乱(COIN)作戦における航空支援強化の必要性をいち早く認識しました。この認識は、MQ-1プレデターやMQ-9リーパーといった最新鋭ドローンを、立体的な航空支援ネットワークへと統合する動きに直結しました。これらのシステムは、極めて重要なISR (Intelligence, Surveillance, and Reconnaissance, 情報・監視・偵察) 能力を提供するとともに、高価値目標(HVT)に対する精密打撃を可能にし、戦闘の力学を根底から覆しました。UASの能力を駆使してCOIN作戦の戦場を支配したこの歴史は、イノベーションと作戦上の卓越性の追求に対する米国陸軍の揺るぎない意志を示すものであり、この精神は現在の小型ドローン戦へのアプローチにも色濃く受け継がれています。
ウクライナの戦場は非常に価値のある戦訓をもたらしてくれますが、陸軍はそれを単に模倣するのではなく、自らの教義に適応させています。競技会において、USADTはウクライナ軍と同じ戦術で戦ったわけではありません。その代わり、部隊のメンバーは、ウクライナから得られた戦訓を、「諸兵科連合」「指揮統制」そして「各級指揮官による規律ある主動の発揮」という、極めて米国陸軍らしい運用枠組みの中に落とし込んで適用したのです。この独自のアプローチこそが重要なのです。
次なる目標:ハンツビル
USADTの次なる主眼は、アラバマ州ハンツビルで開催される「陸軍最優秀ドローン戦闘員競技会」に向けられます。卓越した練度、強靭な状況判断能力、そして高度な操作スキルを兼ね備えた隊員を発掘し表彰するための実技評価種目である「最優秀ドローン・オペレーター・レーン」を実施する一方で、私たちは次の国際的な大舞台である、オーストラリア・シドニーでのMIDRT (Military International Drone Racing Tournament, 国際軍事ドローン・レーシング・トーナメント) に向けた準備も並行して進めます。昨年、私たちは英国、ベルギー、ドイツ、オーストラリア、ニュージーランド、およびフィリピンを含む同盟国・友好国の陸・海・空軍および海兵隊の精鋭たちと激しい戦いを繰り広げました。私たちの目標は明確です。オーストラリアが過去10年間にわたり防衛し続けてきたMIDRTの王座を奪還し、小型ドローン戦におけるアメリカの圧倒的なリーダーシップを国際社会に誇示することです。
勝利に勝るものはありません。しかし、勝利とは単に表彰台の頂点に立つことだけを意味しません。それは、同盟国からの信頼であり、多国間での相互運用性の証明であり、そして次世代を担う戦闘員たちが確固たる自信を深めることなのです。USADTの存在は、陸軍が後手から必死に遅れを取り戻そうとしている証拠などではありません。それは、陸軍が常に最も得意としてきたこと、すなわち「最前線で果敢に競い合い、敵対勢力を凌駕する速度で戦訓を吸収し、技術革新を戦場での圧倒的支配力へと変換していく」という姿勢を体現している確固たる証なのです。

終わりに
将来を見据えた時、USADTは、PEO (Program Executive Office, 計画管理室) にとって、部隊に最新鋭の小型ドローン技術を先行配備し、実証するための絶好のプラットフォームとなります。ドローン・レースという極限環境と、戦術的運用の双方でこれらの新技術をテストすることにより、USADTはPEOに対して部隊からの貴重なフィードバックを提供し、新型システムが実戦環境へと効果的に戦力化されることを保証します。この緊密な連携は、競技会における私たちの競争力を飛躍的に高めるだけでなく、ドローン技術の戦術的運用をより洗練させ、最終的には「無人システム領域において技術的優位を維持する」という陸軍のより次元の高い任務遂行に貢献することになるでしょう。
ジェイコブ・E・ビッカス大尉は、アラバマ州フォート・ラッカーのAVCOE第1航空旅団・米国陸軍ドローン・チーム担当将校です。マシュー・R・ストックトン中佐は、同基地のAVCOE第1航空旅団隷下、第1-145航空連隊の大隊長を務めています。
出典:ARMY AVIATION, Army Aviation Association of America 2026年02月
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。
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