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米陸軍初のPBAS(特定目的損耗許容システム)アカデミー

上級准尉2 ペイジ・フレイジャー

第101空挺師団は、フォート・キャンベルにおいて、現代戦の様相を一変させつつある低コストのドローンの操縦から組み立て、さらには実戦運用に至るまでの訓練を実施しています。

2025年の夏の終わりには、ウクライナ紛争から得られた教訓が米軍にとって対岸の火事ではなくなっていました。市販の部品を組み合わせて作られた安価なFPV(first-person-view, 一人称視点)ドローンが、歩兵の突撃を誘導し、装甲車両を破壊し、さらには小部隊に前例のないレベルの状況把握能力をもたらすなど、戦局を左右する決定的な兵器として猛威を振るっていたのです。ウクライナ軍の一部の部隊は毎月数千機のドローンを消耗していましたが、それでも指揮官たちはドローンへの依存をやめませんでした。状況が分からないまま盲目状態で戦うよりはマシだと、損傷した機体を命懸けで回収しようとすることさえありました。

ケンタッキー州フォート・キャンベルの第101空挺師団(空中機動)の指揮官たちは、こうした戦況を注視し、すでに行動を起こしていました。米陸軍における将来戦への備えを根本から変える可能性を秘めた試験的プログラムを、密かに開始していたのです。「PBAS(Purpose Built Attritable System, 特定目的損耗許容システム)アカデミー」と呼ばれるこの8日間の課程では、FPVドローンの操縦だけではなく、組み立てやプログラミング、そして戦術的な運用手法が訓練されました。

この初の試みとなる課程は、師団のG-32隷下組織であるRAID(Robotics and Autonomous Integration Directorate, ロボット工学・自律統合局)が計画・実施したものです。RAIDは、有名な「ラッカサンズ」こと第3機動旅団戦闘団、そしてKMTC(Kinnard Mission Training Center, キナード任務訓練センター)と協同し、「現在の現代戦を支配しているようなドローン戦術を、米陸軍として制度化できるのか?」という根本的な問いへの答えを探求しました。そして、その初期段階での答えは「イエス」であったと言えそうです。

歩兵ドローン操作員の訓練

試験的に実施されたPBASアカデミーの初回課程では、主にsUAS(small unmanned aircraft system, 小型無人航空機システム)のマスター・トレーナー資格をすでに保有している歩兵など10名の兵士に対し、40時間以上の指導が行われました。このグループには2名の戦術UAS准尉と1名のUAS操作員も加わり、機動部隊と航空部隊の専門知識が融合されました。

従来の陸軍航空科の課程とは対照的に、PBASアカデミーは徹底して実践的であり、極めて速いテンポで進行するように意図されていました。訓練はまず、市販および軍用のソフトウェアを用いて現実のFPVの飛行特性を再現したシミュレーターからスタートしました。そして数日のうちには、フォート・キャンベルの第17射場における実機での飛行訓練や、模擬的なキネティック(動的)攻撃訓練へと移行したのです。

この課程の事情に詳しいある教官は、「彼らは単にドローンの操縦法を学んでいたわけではありません」と語っています。「彼らが学んでいたのは、これらのシステムを使った『戦い方』です。小部隊の戦術にいかに組み込むか、電磁波スペクトルをいかに管理するか、そして現実の戦闘特有の強いストレス下でいかに運用するかを習得したのです」学生たちは、基本・高度な飛行機動をはじめ、市街地での航法、スウォーム(群れ)戦術、待ち伏せや掩護の技術、さらには敵のドローンから身を隠す偽装技術の訓練を受けました。さらに、ハードウェアの不具合対処(故障探求)、電波干渉を回避するための周波数管理、訓練用弾薬の安全な取り扱い方法についても学びました。

課程の最終盤には、全参加者がRAID製のFPVドローンを用いた模擬キネティック攻撃を実施し、リアルタイムの映像フィードバックを受けながらチームメイトと連携して任務を遂行しました。これは軽歩兵部隊にとって画期的なマイルストーンとなりました。

ケンタッキーで適用されたウクライナの教訓

PBASアカデミーの構想は、FPVドローンが近接戦闘の様相を一変させたウクライナ紛争から直接的な着想を得ています。フォーブス(Forbes)誌が報じた2025年の王立防衛安全保障研究所の評価によれば、現在、ロシア軍の装備品の損失の大部分はドローンによるものとされています。一方でウクライナ軍も絶え間ないドローン不足に悩まされており、月に1万機以上を喪失することもあります。この過酷な戦場環境において、ドローンは使い捨ての「消耗品」とみなされていますが、同時に決して欠かすことのできない「必需品」でもあります。

紛争の推移を追跡している国防アナリストは、「ドローンを失うということは、戦局を左右する決定的な瞬間に『目』を失うことを意味する」と指摘しています。指揮官たちは、塹壕への突撃や市街戦において一瞬の判断を下すため、ドローンからのリアルタイム映像への依存をますます高めているのです。RAIDの幹部たちは、こうした戦場の変化を強烈な「警告」として受け止めると同時に、米陸軍にとっての「好機」であるとも捉えました。

PBASドローンは、米国の歩兵部隊に精密な交戦能力、強化された偵察能力、そして心理的な優位性をもたらします。とりわけ、従来の通信ネットワークやセンサーが機能不全に陥るようなD3SOE(denied, degraded, and disrupted space operational environments, 拒否、機能低下、および途絶された宇宙作戦環境)において、その真価を発揮します。だからこそ第101空挺師団は、陸軍の正式な装備化プログラム(プログラム・オブ・レコード)を気長に待つのではなく、自らの手で独自の解決策を練り上げたのです。

ドローンの自隊製造

本アカデミーの最も際立った特徴の一つは、「第101 PBAS生産施設」の協力を得て、兵士自身がドローンの製造方法を学ぶという点です。RAIDの要員は、3軸CNCルーターを駆使して、5インチ(約13センチメートル)および7インチ(約18センチメートル)の2種類のFPVプラットフォーム用カーボンファイバー(炭素繊維)製フレームを自ら削り出しています。内部の構成部品はすべて米国の国内メーカーから調達されており、国防イノベーション部門の「ブルーUAS構成品リスト」による厳格な審査も通過しています。ドローン1機あたりの製造コストはわずか約700ドル(約11万円)です。これは同等の性能を持つ市販システムの3分の1以下の価格であり、しかも市販品にありがちな独自のソフトウェアによる運用制限もありません。

生産施設では今後、樹脂製3Dプリントによるプロペラ、鍛造カーボンファイバー部品、さらにはモジュール式のアタッチメントの製造も視野に入れています。オープンソース・ソフトウェアの扱いを学んだ兵士たちは、飛行プロファイルや任務パラメータを自分たちで迅速に書き換えることができ、部隊は戦況の変化にリアルタイムで適応できるようになります。

あるRAIDの計画担当者は、「これは単なるコスト削減の話ではありません」と語っています。「これは『レジリエンス(回復力)』の問題なのです。外部のサプライチェーンの滞りに影響されず、また、自分たちのシステムがどのように運用されるかについての完全なコントロールを維持し続けることが目的なのです」試験課程を通じ、教官たちは7インチ(約18センチメートル)の機体が、それより小型のプラットフォームに比べて優れた安定性、視認性、耐久性を発揮することを発見しました。このことは、硬直化した従来の調達ルートに縛られない、現場レベルでの実証実験がいかに価値あるものかを裏付けています。

何が機能し、次に何が来るか

アカデミー終了後の事後検討会(AAR)では、いくつかの明確な成功事項が確認されました。質の高い指導、シミュレーションの極めて現実的な再現性、そして兵士たちが操縦への自信と規律を身につけるのに十分な長期間の実機飛行訓練を確保できたことなどです。同時に、今後の改善点も洗い出されました。次回以降の課程では、より早い段階からFPVゴーグルの使用を開始するほか、学習の妨げとなっていたシミュレーターの反転設定(ビデオゲームのようにスティックを上に倒すと上を向く設定)を廃止し、さらにチームリーダーが訓練中にライブ映像をモニターできるようHDMI出力を導入する予定です。一方で、飛行前点検(プリフライト・チェック)、バッテリー切断の確実な手順、スロットルを完全にゼロにする技術などの安全管理手順は極めて効果的であることが実証されており、今後は標準的な手続きとして定着することが期待されています。

しかし、おそらく最も重要な成果は、この課程が将来的に陸軍全体へ「拡張可能なモデル」として十分に妥当であると実証されたことでしょう。ラッカサンズの指揮官、KMTCの評価官、そしてマスター・トレーナーたちは異口同音に、このアカデミーが実運用に直結する内容であり、かつ「極めて緊急に必要とされている」と高く評価しました。PBASの運用は、もはや一部の専門家だけが持つニッチな特殊技能ではなく、歩兵全体が備えるべき「中核的な必須技能」として認識されつつあるのです。

教義の種

RAIDの指揮官たちは、PBASアカデミーを単なる一過性の訓練行事ではなく、陸軍の新たな「教義の種(ドクトリナル・シード)」であると表現しています。PBASプラットフォームを手にすることで、下級指揮官は上級部隊からの支援を待つことなく、自分たちの力で戦場を直接支配し、形成することが可能になります。この「必要な時に即座に使える」という即応性は、複雑な市街地や地下空間、あるいは激しい電子戦環境下において、部隊の生死を分ける決定的な要素となり得ます。

また、このアカデミーは、将来的なロボティクス技術、AI(人工知能)による目標捕捉、そして統合火力ネットワークとの連携に向けた土台を築くものでもあります。これらはすべて、米陸軍が推進する「マルチドメイン(多次元)作戦」の中核となる要素です。

第101空挺師団は、今後もこのプログラムを洗練し続け、そこで得られた教訓をフォート・ラッカーにおける陸軍航空課程や致死性(レサリティ)課程をはじめとする陸軍全体のあらゆるパートナー部隊と共有していく計画です。世界中の敵対勢力が低コストでありながら甚大な被害をもたらすテクノロジーを積極的に悪用し続ける中、PBASアカデミーは、米陸軍がそうした脅威にどう立ち向かうべきかという質問に対するひとつの答えを示しています。それは、机上の「完璧さ」を追求するのではなく、現場の「適応力」と「スピード」、そして何より兵士たち自身が主導する「イノベーション(革新)」を受け入れることによって成し遂げられるのです。

フォート・キャンベルの空には、未来の戦争の姿がすでに飛び交っています。

上級准尉2 ペイジ・フレイジャーは、ケンタッキー州フォート・キャンベルに所在する第101空挺師団(空中機動)G-32、RAIDチームのメンバーです。

                               

出典:ARMY AVIATION, Army Aviation Association of America 2026年02月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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