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陸軍航空の情報センター

ブルドッグ・イニシアティブ:次レベルの墜落機回収訓練

大尉 クリストファー・M・ヴィトールズ

サウスダコタ州フォート・ミードにおいて、第10特殊部隊グループ(空挺)グリーンベレーとのホイスト訓練中、UH-60ブラック・ホークから降下する米陸軍サウスダコタ州兵の航空衛生兵。米陸軍撮影:3等軍曹リアナ・バレンジャー

はじめに

地上部隊を支援する陸軍の主要な機動戦力として、陸軍航空は対等もしくはほぼ対等な敵(near-peer adversary)に対抗するため、大規模な改革と近代化を進めています。脅威が発展し、対抗戦術と収集情報が増加するなかでも、変わらぬ二つの現実があります。航空機は故障するということ、そして敵も黙ってはいないということです。厳しく危険な状況下で緊急着陸した航空機に対応する際、墜落機回収チーム(Downed Aircraft Recovery Team, DART)は機体を修理して自力回収するか、周到な機体回収を実施するか、あるいは最悪の場合には、機体を破壊して敵による利用を阻止します。

第3戦闘航空旅団(3D Combat Aviation Brigade, 3 CAB)航空支援中隊(Aviation Support Company, ASC)B中隊は、近年の教義改革の推進を積極的に受け入れ、3 CAB内においてリアルかつ革新的なDART訓練に向けた動きを先導してきました。実際の空中回収訓練、修理のための戦闘損傷の再現、乗員救出訓練、および機体破壊演習を通じて、B中隊「ブルドッグ」は、あらゆる緊急着陸事案に対応できる態勢を整えました。B中隊/第603Dは、陸軍の近代化を直接支援する、堅牢で適応性の高い訓練プログラムを開発しました。航空機整備のP4T3フレームワーク(Problem〔問題〕・Plan〔計画〕・People〔人員〕・Parts〔部品〕・Time〔時間〕・Tools〔工具〕・Training〔訓練〕)を軸に組み立てた当部隊のアプローチは、すべての航空整備部隊および航空支援中隊のモデルとなるものです。

問題:想像力によって制限される訓練

ほとんどの戦闘航空旅団において、DART訓練は整備員を交えた計画演習、P4T3様式への記入、および完全任務可動状態の機体への部隊整備航空機回収キット(Unit Maintenance Aerial Recovery Kit, UMARK)ロープの接続に限定・制約されています。先進的な整備中隊では、警戒および接敵行動の訓練目標を盛り込んだ車列訓練も実施されています。こうした基礎的な訓練は、若手整備員に回収の概念を習得させ、部隊の基準を確立するうえで重要です。しかし、完全にリアルな回収シナリオには至っていないことが多いのが実情です。

ここに根本的な問題があります。緊急着陸した機体がないなかで、どうやってその機体の回収訓練を行うのか、ということです。規則により航空機を意図的に飛行不能にすることは禁じられており、創意工夫によるシミュレーションが必要とされます。フェーズ点検中の機体に対する点検・作業(たとえばエンジンの取り外しと再装着)に合わせた主要構成品交換訓練や、廃棄金属板を使った戦闘損傷評価・修理(Battle Damage Assessment and Repair, BDAR)の実施といった対策はあります。机上演習および計画演習も、部隊指揮手順の反復演練に有効です。しかし、現代戦場の複雑性・摩擦・致死性を再現し、大規模戦闘作戦(Large-Scale Combat Operations, LSCO)に向けた訓練をさらに深化させるにはどうすればよいでしょうか。

計画:ほふく・歩行・走行・全力疾走

B/603Dの必成目標(Mission-Essential Task, MET)リストは、航空支援中隊に共通する3つの目標区分で構成されています。

  1. 航空機整備支援の実施
  2. DARTミッションの遂行
  3. 機動展開作戦の実施

2023年末、DARTミッションの遂行がB/603Dの最優先の必成目標となりました。当部隊の計画は、困難な軍事職業特技(Military Occupational Specialty, MOS)の任務、多様なDART/BDARの手法、ハイブリッド脅威による高い任務複雑性を各段階に取り入れながら、段階的な「ほふく・歩行・走行」訓練モデルを組み込むことでした。一連の演習の目標は以下のとおりです。

  1. 大隊スタッフとともにDART訓練シナリオを開発する
  2. 任務ブリーフィングを含む6時間以内の動員時間を達成する
  3. 警戒部隊を伴う戦術的車列行動を実施する
  4. 実際の被害機のスリングロードによるUMARK作戦を検証する
  5. 実際の機体および構成品修理によるBDAR技術の習熟を図る
  6. 乗員の模擬負傷者の救出・応急処置訓練を行う
  7. 共同警戒または目標指向型訓練のため地上部隊と統合する
  8. LSCO条件下で動的かつハイブリッドなDARTミッションを実施する

これらの訓練目標を達成するため、年次訓練計画に計6回の旅団レベルのDART演習(DARTEX I〜VI)を組み込みました。

人員:指導者の育成とスタッフの統合

訓練の進行はリーダーズ・タイム訓練(Leader’s Time Training, LTT)から始まりました。下士官がUMARKキット、BDARキット、救急訓練、および車列行動を紹介しました。すべての兵士がこれらのLTTを繰り返し受講しましたが、これはどの整備員も即時にDART対応に組み込めるという方針に基づくものです。その後の演習でもこのアプローチを維持し、中隊のすべての隊員が訓練を反復できるようにすることで、全員の対応力を集合的に高めました。

最初のLTT実施後、B中隊はDARTEX Iを実施しました。これは1週間にわたる計画演習であり、機種ごとに調整した三つのDART対応を含むものでした。シナリオのリアリティを確保するうえで、作戦・情報部門の関与は不可欠でした。図1は、DARTに提供された作戦・情報更新ブリーフィングを示しています。ドノビア軍と対峙しつつ、待機DARTを提供することを任務とするブルドッグは、演習期間中に実施された航空スクリーン(偵察・警戒)、空中強襲、および空輸を支援しました。この最初の演習は、部隊指揮手順の遵守と大隊スタッフとの調整に重点を置いており、その後のすべての演習および実際のDARTミッションの基調を定めるものとなりました。

部品:創意工夫による訓練補助具

DARTEX IIIおよびVでは、実際の機体にUMARKを使用し、吊り上げ/降下訓練(エレベーター・ドリル)および懸吊状態での周回飛行(トラフィック・パターン)を通じてUMARKとチームの検証を行いました。最初の機体は、後方支援部門の要員によって整備されたOH-58Dカイオワの地上展示機でした。機体整備員がブラケットとロッキング・バーを製作してすべてのパネルをリベットで固定し、動力系統整備員がローター・ヘッドの構造強度を検査してUMARKによる応力に耐えられることを確認しました。図2(左)は、ジョージア州サバンナのHAAFの訓練エリアで、CH-47FとともにOH-58DにUMARKを使用している様子を示しています。

2機目の胴体は、デラウェア州のサミット・エイビエーションが提供したCH-47Fの機体でした。機体は構成品の回収・整備のため部品を取り外され、胴体のみが残りました。CH機の胴体にはより大規模な準備が必要でしたが、検証後、UMARKのCH用作業パッケージは13,000ポンド(約5,900キログラム)の訓練荷重での運用を実証しました(冒頭写真、左)。独創性とネットワークの活用がこれらの訓練補助具を生み出しましたが、さらに重要なことは、輸送機プロジェクト・マネージャーとのインフォーマルな対話が調達プロセスを動かしたということです。

時間:発進点(SP)通過時刻とゴールデン・アワーの遵守

DARTEX II、III、IVへの戦術的車列行動の組み込みにより、DART対応における弱点が明らかになりました。M2およびMK19システムを搭載した軽・中型戦術車両および増加装甲付き高機動多用途装輪車両を使用し、タイムライン管理、射撃地帯、および車列間通信の基礎に重点を置きました(図3、右)。

DART車列の準備において、戦闘前点検・確認(Precombat Checks and Inspections, PCC/PCI)の非効率および不正確により、発進点(Start Point, SP)通過時刻に間に合わないことが判明しました。秘匿通信のための無線機設定の問題、武装装着による遅延、装備品の整備状態の問題がDARTEX IIを悩ませましたが、今後の作戦に向けた重要な教訓と改善事項が浮き彫りになりました。演習IVには夜間暗視装置と対抗部隊を使用した夜間車列行動が組み込まれ、チームはタイムラインを正確に管理し、終始にわたって秘匿通信を維持しつつ、敵との接触に適切に対応することができました。

戦術的車列行動に加え、これらの演習のホワイト・セル(演習管理・評価)には、目標地点での警戒、火制下での移動、負傷者の評価といった陸軍ウォリアー・タスクが組み込まれました。医療後送(Medical Evacuation, MEDEVAC)評価搭乗員からのフィードバックを活用し、チームは目標地点からの要員救出のために9ライン(救助要請)を送信しました(図3、左)。MEDEVACの支援が得られない場合は自隊での傷病者後送を開始し、より高次の医療機関への引き渡しに向けて救急車引き渡し点(Ambulance Exchange Point, AXP)を活用する訓練も行いました。PCC/PCIからMEDEVAC要請に至るまでの基礎を強化することは、包括的なDART訓練計画を策定する際に不可欠です。

工具:ジョーズ・オブ・ライフとBDAR修理

図4. HAAF緊急サービスの指導のもと航空搭乗員救出訓練を実施するB/603D。米陸軍撮影:大尉クリストファー・ヴィトールズ(第3 CAB)

俗に「ジョーズ・オブ・ライフ」と呼ばれるその名も的確な救助システムを、ブルドッグは保有・維持しています。航空支援中隊の正式装備品ではなく緊急用途向けに設計されたこのシステムは、残骸から要員を救出することを目的としています。革新的な訓練の推進を続けたDARTEX IVのシナリオは、敵の射撃を受けた後にピックアップ・ゾーンにハード・ランディングした3機の航空機で構成されていました。最初の1機はUH-60Mであり、スタビレーター(stabilator)の故障とテール・ローター・ドライブ・シャフトの損傷を受けており、残る2機の損傷は壊滅的で回収不能と判断されました。緊急対応部隊(Quick Response Force, QRF)が現場を確保した後、DARTは最初の機体がBDARおよび構成品交換によって回収可能と判定しました。一方、他の機体では生存しているが脱出できない航空搭乗員が確認されました。

航空機のシミュレーションには、損傷したUH-1機体の訓練補助機と、ジョージア州サバンナのスクラップ・ヤードから寄贈されたサルベージ・カーが使用されました。ハンター陸軍飛行場消防署は、脱出できない航空搭乗員を模擬するために等身大のマネキン「レスキュー・ランディ」を提供しました。車列による部隊派遣後、要員の救出は成功し、整備員は航空搭乗員に応急処置を施した後、最寄りの救急車引き渡し点へ搬送しました。図4は、DARTEX実施前に兵士に対して工具の適切かつ最も効果的な使用方法を指導するHAAF緊急サービスの様子です。

冒頭の写真(右)は、DARTの要員が救助用ソーを使用してパネルを取り外し、模擬負傷者を救出している様子を示しています。ブルドッグの兵士たちはBDARを完了し、機体を想定上の友軍地区への帰投に向けて準備しました。

訓練:現地爆破処分(BIP)の訓練

図5. 模擬航空機に対する現地爆破処分作戦(DARTEX VI)。米陸軍撮影:大尉クリストファー・ヴィトールズ(第3 CAB)

機密性の高い構成品と情報を搭載した航空機が、友軍の前線付近またはそれを越えた地点に着陸を余儀なくされ、様々な理由から回収不能となった場合、どうなるのでしょうか。敵による利用を阻止するため、間接射撃、精密誘導弾、または設置した爆薬による残骸の破壊は、妥当な戦術的判断となり得ます。最終段階において、ブルドッグはDARTの練成の集大成として、DARTEX VIとなる現地爆破処分(Blow in Place, BIP)演習を実施しました。

ジョージア州フォート・スチュワートの第541工兵中隊(サッパー)と協力し、ブルドッグはサルベージ・カーを航空機に見立てたBIP爆破射場訓練を実施しました。工兵が整備員に梱包爆薬、電磁弾頭、成形炸薬の製作方法、および安全な設置・起爆手順を指導しました。続いて、整備テスト・パイロットが工兵と整備員双方に対し、優先的に破壊すべき機体の構成品とシステムについて指導しました。図5は爆薬の破壊力と有効性を示しています。この演習によりブルドッグのDART練成が完了し、係争環境において航空機の修理、回収、および破壊を実施できる訓練済みチームが誕生しました。

結論

航空機は故障するものであり、敵はそれを黙ってみてはいません。LSCOにおいて、整備員は航空機を修理するだけでなく、戦闘し、目標を確保し、傷病者を救出し、射撃を受けながら重大な判断を下すことになります。この環境では、異なる部隊との合同作戦が必要となりますが、整備員は損害が増大するなかでも基本的な兵士の任務を遂行できる必要があります。航空機と航空搭乗員は地上部隊の支援に従事しますが、敵との交戦時には回収支援を必要とする場合があります。整備員は、その役割がフェーズ点検中にレンチを回す以上のものであることを認識しなければなりません。将来の紛争において不可欠なのは、MOS任務の熟練度と指揮官の「固定観念に縛られない」発想なのです。

これらのDARTEXから得られた教訓は、実際の事案で真価を発揮した自信と経験を育みました。訓練の進行中、空軍のHH-60Gがブレードとエンジンにダメージを受け、フロリダ州オキーチョビーで緊急着陸を実施しました。UMARKとCH-47Fの重量物吊り上げ支援を活用し、ブルドッグのチームは30マイル(約48キロメートル)離れた整備施設へ機体を無事に輸送しました(図2、右)。ブルドッグにとって近年初となるこの回収ミッションは、DARTEXシリーズの価値を実証するとともに、次の戦闘において不可欠なスキルである各軍種間の協力関係を育みました。

陸軍の近代化イニシアティブと並行してDARTプログラムを推進することは、指揮官の責務です。DARTのミッションは生来的に複雑であり、次レベルの訓練への重点化が不可欠です。創意工夫に富んだ訓練は、作戦環境における課題への革新的な対応策を生み出します。地上部隊は航空アセットに信頼を寄せています。したがって、航空搭乗員と指揮官は整備・回収支援についても、それと同等の信頼を持たなければなりません。このレベルのDART即応態勢は、あらゆるミッションにとって重要な保険となり、戦闘力の維持と「誰も置き去りにしない」という揺るぎない約束を守るための基盤となるのです。

ブルドッグ!いかなる任務も拒まず!マーン・エア!


大尉クリストファー・ヴィトールズはCH-47Fの操縦士であり、2024年から2025年にかけて第603D ASCの機体修理小隊の小隊長を務めました。過去の派遣実績には、アトランティック・リゾルブ作戦(米欧州軍)および朝鮮半島(在韓米軍)への複数のローテーション支援が含まれます。

訳者コメント:本記事は、第3戦闘航空旅団(第3 CAB)隷下の第603D航空支援大隊B中隊が、P4T3フレームワークを軸にDART訓練体系を段階的に構築した事例を紹介しています。注目されるのは、DARTEX VIで第541サッパー中隊と連携して実施した現地爆破処分(BIP)訓練です。修理・回収にとどまらず破壊処分まで訓練範囲に含めた包括的な取り組みは、大規模戦闘作戦(LSCO)に備える整備中隊の事例として参考になります。訓練中に実際に発生した空軍HH-60Gの回収事案が、DARTEXシリーズの実効性を裏付けています。
                               

出典:The Bulldog Initiative DART Training, AVIATION DIGEST, Army Aviation Center of Excellence 2026年03月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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