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陸軍航空の情報センター

ファスナー1本が分けるもの

1等軍曹 スティーブン・シュワンダー 第7-17空中騎兵大隊

慌ただしいエプロンでは、いつもどおりの整備の一日と飛行中の緊急事態とを分ける境目が、ファスナー1本の確実な締結にかかっていることがあります。AH-64Eアパッチの飛行後点検において、それ以前の整備で取り外されていた機体パネルに不具合が見つかりました。そのパネルは一見したところ確実に固定されているように見えましたが、何かがおかしいという直感から、さらに詳しく確かめることにしました。機体を早く次の飛行に回し、運航を続けたいという強い圧力がある中でのことでした。

詳しく調べたところ、パネルのファスナーのうちの1本が正しく締結されていないことが判明しました。そのファスナーは脱落していたわけではありませんが、飛行中の応力がかかれば締結が解けてしまうほど緩んでいました。もし空中でパネルがちぎれ飛んでいたら、深刻な異物損傷(foreign object damage, FOD)を引き起こしたり、重要な操縦系統に干渉したり、付近を飛行する他の航空機にとって危険な落下物となったりするおそれがありました。

しかし、この事例における本当の危険要因は、緩んだファスナーそのものではなく、そうした誤りを許した慢心にありました。「パネルは大丈夫だろう」という思い込みのために、防げたはずの整備上の問題をあやうく見逃すところだったのです。この航空不安全には、整備を早く終わらせなければならないという運用上の圧力、作業への慣れによる細部への注意力の低下、点検の過程で整備実施規定(technical manual, TM)に沿って一つずつ確かめることがおろそかになっていたことなど、複数の要因が重なっていました。

この危機一髪の事例は、航空整備における重要な真実を浮き彫りにしています。作戦テンポが上がったからといって、技術上の基準が変わるわけではないということです。緩んだファスナーの発見後、整備班は直ちに不具合を是正し、機体全体の同種のパネルについても点検を行いました。部隊の各級指揮官も、次回の定例安全教育においてこの不安全事例を重要な教材として活用しました。

教訓事項

航空の世界に「軽微な整備ミス」というものはありません。あらゆる作業が、航空搭乗員の安全と任務の成否に直接影響するからです。この航空不安全は、安全管理とは書類の項目に印を付けて済ませるものではなく、エプロンでの毎日の作業の中で実践するものだということを、強く思い起こさせてくれます。数秒余分にかけて結合用部品を再確認することが、無事な着陸と、飛行中の致命的な破損とを分けるのです。

訳者コメント:
筆者は、パネルが空中で外れた場合の危険として、異物損傷、操縦系統への干渉、付近を飛行する他の航空機にとっての落下物の三つを挙げています。異物損傷(FOD)については、本サイトの「FODとは何か?」で、陸軍規則385-10による定義と防止策を紹介しています。
興味深いのは、三つとも被害が航空の内側にとどまっていることです。筆者の所属するフォート・フードは広大な演習場を抱えた駐屯地であり、「落ちたら何に当たるか」と考えたとき、真っ先に周りの僚機が思い浮かぶのは自然なことでしょう。一方、日本では駐屯地を一歩出れば、すぐに市街地や農地の上空です。陸上自衛隊の航空機から部品が落ちれば、まず問われるのは地上の人と財産への危害です。
2003年2月13日には、明野駐屯地の陸上自衛隊航空学校に所属するAH-1Sが、訓練飛行中に機体下部のアルミ製パネル(幅47センチメートル、長さ70センチメートル、重さ約1キログラム)を落とし、三重県度会町の県立高校の校庭に落下しました(All About の記事)。けが人はありませんでしたが、当時の報道によれば、落下地点から20メートルほどの体育館には生徒約70人がいました。パネルは六角ボルト19本で固定されており、ボルトごと脱落していました。部隊は、ボルトは電動工具と手作業の二段階で締め具合を確かめて固定しているとして、「落ちるはずのないもの」と説明しました。本記事が戒める「これで大丈夫だろう」という思い込みは、手順があるという安心感の中にも潜むことを示す事例です。
日本では、部品の落下・紛失は重さにかかわらず重く扱われます。2018年2月には、八尾駐屯地のUH-1Jでリベットの頭部2個(1個の重さ0.4グラム)がなくなっていたことを、防衛大臣が衆議院予算委員会で報告しました。2025年6月にも、明野駐屯地のUH-1Jでワイパーのリベット頭部1個(重さ約0.1グラム)の紛失が判明し、陸上幕僚監部が飛行経路を添えて公表し、情報の提供を呼びかけています。直接の対象以外への影響、すなわち民事上の考慮が、日本の航空整備では米軍以上に重い意味を持つと言えるでしょう。
筆者は教訓事項の一つ目で、目で見た印象に頼らず、手で触れて確かめるよう求めています。本サイトの「UH-1トランスミッション・クレビスの亀裂」も、取り付けた後は目視で確かめられないブッシングの付け忘れが、亀裂を招いた事例を紹介しています。併せてお読みください。
                               

出典:One Fastener from Failure, RISK MANAGEMENT MAGAZINE, U.S. Army Combat Readiness Center 2026年10月18日

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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