CH-47FブロックⅡがもたらす機動上の優位性
1944年9月下旬、連合軍は、ドイツに進撃するため、空挺部隊により複数の橋梁を奪取してライン川を超えることを目的としたマーケット・ガーデン作戦を開始した。その作戦の成否は、歴史家の間で議論のあるところであるが、障害となる河川を渡るための橋を支配することが、機動戦において重要であることを否定する者はいない。いつの時代においても、陸軍は、河川を防御における自然障害に利用したり、補給線を断つための緊要地形として攻撃したりしてきた。そのどちらの場合においても、河川は対抗部隊の機動の自由を制限する効果を有していた。施設科部隊による応急橋梁の架設は、その機動上の制約を解消するための作戦である。その作戦の初期において重要なのは、脆弱な橋頭保を確保するための戦闘力の集中であることが歴史上明らかである。それを怠り、作戦の初期の段階における脆弱性を放置した場合、敵に対応のいとまを与え、作戦上のリスクを増大させることとなる。
マーケット・ガーデン作戦から80年後の2024年、東ヨーロッパまたは北朝鮮において、ある川を渡るために同じような作戦が行われている。砲迫の射程を遥かに超えた地点において、12機のCH-47FブロックⅡを保有する2個飛行中隊は、ある応急架橋作戦を支援している。夜が訪れると、次世代チヌークの1個飛行小隊は、4つの部分に分けられた18,000ポンド(8,165キログラム)の完全に組み立てられた中型ガーダー橋を65マイル(120キロメートル)遠方の軽防御された渡河地点まで空輸する。搭乗員たちは、コックピット内の先進的な計器および通信機器を活用して状況を把握するとともに、改良された新型デジタル操縦系統(Digital Advanced Flight Control System)で自律飛行を行いながら、所望の地点から1フィート(30センチメートル)以内の場所に搭載物を卸下する。同時に、残余のCH-47FブロックⅡチヌークは、橋頭保を確保するため、戦闘装備を整えたJLTV(Joint Light Tactical Vehicles, 統合軽戦術車両)1個中隊およびM-777牽引砲とその牽引車および弾薬を装備した1個中隊を展開させる。その機体が持つ自己防護能力、サイバー耐性および対抗手段により、2つの飛行中隊は、共に無傷でその任務を完遂する。
チヌークが離脱してから1時間後には、その河川による機動障害の無効化が完了する。橋梁を空中配置することによる速度の獲得および位置の秘匿により、地上部隊は、従来の脆弱な戦闘施設架橋部隊と比較して、格段に大きな機動力を得ることとなるのである。この想定において必要となる中型ガーダー橋、JLTVおよびM-777を、自己防護能力および任務器材を犠牲にすることなく必要なペイロードを確保して空輸できる航空機は、CH-47FブロックⅡチヌーク以外にないのである。
ブロックⅡの能力
将来の紛争がいかなるものになるのかを予測することは困難であり、前に述べた事例はひとつの想定に過ぎないが、CH-47FブロックⅡチヌークは、任務の如何に関わらず、より高い能力を地上部隊指揮官に付与できるように設計されている。胴体の強化や動力伝達系統の改良などの各系統の性能向上により、CH-47FブロックⅡは、現装備のCH-47FブロックⅠと比較して、そのペイロードが著しく増大し、即応性が劇的に向上している。
CH-47FブロックⅡの最大の特徴は、主要構造部材の強化にある。これにより、54,000ポンド(24,500キログラム)の最大総離陸重量での継続的な運用が可能となっている。また、その総離陸重量の増加を実現するため、動力伝達系統が現行のCH-47Fよりも10%多い出力に耐えられるものへと改修される予定である。これまでトランスミッションを保護するために出力が制限されていた運用領域での性能を向上させるためには、許容されるトルクを増大することが不可欠なのである。
新型のACRB(Advanced Chinook Rotor Blade, 改良型チヌーク用ローター・ブレード)は、ホバリング状態における揚力の増加および燃料消費の減少により、ホバリング出力を減少させ、ペイロード性能を効率的に増加させることに寄与する。ACRBの効果は、エンジン出力が機体の性能を制約する高高度高温環境において特に顕著となる。CH-47FブロックⅡの軽量化された燃料系統によりもたらされる500ポンド(290リットル)の燃料増加と相まって、次世代のチヌークは、戦闘装備が施されたJLTVを機外搭載した状態でも110マイル(180キロメートル)の行動半径を確保することが可能となる。
また、その他の改修により、将来の搭載機器および対抗手段を搭載できる余地や、将来型エンジンの搭載に必要な基本構造がもたらされる。CH-47FブロックⅡのペイロード、航続距離および出力効率の融合は、その任務遂行に最大限に寄与することであろう。
機動力を増大し、作戦範囲を拡張し、あるいは地上部隊指揮官が必要とする戦闘力を供給することにより、CH-47FブロックⅡによる将来の戦闘作戦に向けた投資は、大きな見返りをもたらすに違いない。試作初号機の初飛行は、2019年の夏に予定されており、2024年には最初の部隊に納入される予定である。ただし、輸送ヘリコプター・プログラム管理事務局は、安全および品質上のリスクを回避しつつ、その納入を早める方策を積極的に模索している。
将来のいかなる作戦や戦役においても、地上戦闘には厳しい試練が待ち受けている。そこでは、作戦の緊要な時期において、柔軟性を維持しつつ戦闘力を集中できることが、常に要求される。CH-47FブロックⅡは、多正面対処が必要な将来の戦場に柔軟な重量物輸送能力をもたらすための、かけがえのない手段となるであろう。
グレッグ・フォティア大佐は、CH-47輸送ヘリコプター・プロジェクト・オフィスのプロジェクト・マネージャーである。ジョン・シュミット中佐は、輸送ヘリコプター・プロジェクト・オフィスのCH-47F近代化プロダクト・オフィスのプロダクト・マネージャー、ショーン・ナイグル少佐は、同アシスタント・プロダクト・マネージャーである。3人ともアラバマ州レッドストーン工廠で勤務している。
出典:ARMY AVIATION, Army Aviation Association of America 2018年02月
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。
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1件のコメント
教育支援飛行隊で勤務した時、CH-47は、人員や装備・物資の空輸はもちろんのこと、やろうと思えば連絡や偵察だってできる、すばらしい飛行機だと思いました。お金のない人は、スポーツカーではなくて、ワンボックスを買うべきですよね。