冬季の気象特性
冬が近づいてきた。気温が低下すると、降水の形態にいくつかの種類が生じる。環境に応じて、雨(Rain)、着氷性の雨(Freezing Rain)、みぞれ(Sleet)または雪(Snow)が降ることになる。これらの降水の種類の違いに応じて、着氷の形態も異なったものとなる。図1は、それぞれの種類の降水が生じるために必要な環境条件を示している。
降 水
すべての降水は、雲中の氷の結晶として生まれる。氷の結晶は、大気中の層を通過すると、その層の温度に応じて、雨(Rain)、雪(Snow)、着氷性の雨(Freezing Rain)、またはみぞれ(Sleet)のいずれかに変化する。冬季における雨は、他の季節における雨と比べて、特に異なるところはない。氷の結晶が大気中の温かい層の中を落下すると、地表面に到達するまでに溶けて雨になる。氷の結晶が大気中の冷たい層の中を落下し、地表面に到達するまで氷点下の温度を維持する場合には、雪になる。氷の結晶が暖かい層の中を落下して、地表面に到達するまでに雨になるものの、地表面の温度が氷点下に達しており、その表面に付着する際に凍結してしまう場合には、着氷性の雨となる。最後に、氷の結晶が暖かい層の中を落下するものの、その層が薄く、地表面に到達するまでに再び凍結して氷の粒になる場合には、みぞれになる。着氷性の雨とみぞれとの大きな違いは、着氷性の雨は地表面に接する際に凍結するのに対し、みぞれは地表面に接する前にすでに凍結するということである。図2は、着氷性の雨とみぞれの例である。
着 氷
着氷は、その種類および程度に応じ、航空機の揚力、抗力、重量および推力に悪影響を及ぼす可能性がある。着氷の種類には、ライム・アイシング(Rime Icing)、クリア・アイシング(Clear Icing)およびミックス・アイシング(Mixed Icing)の3つがある。着氷が生じるのは、通常、気温が0℃からマイナス20℃の場合である。ライム・アイシングは、機体と接触した際に凍結する過冷却の小粒子であり、中に空気が閉じ込められているため、乳白色または不透明な色をしている。クリア・アイシングは、透明で表面が滑らかなシロップ状の外観をしている。この着氷は、最も危険な種類であると考えられている。比較的大きな、過冷却の飛沫が機体に衝突し、徐々に凍結した場合に形成される。ミックス・アイシングは、ライム・アイシングとクリア・アイシングの双方の特性を有している。色が白くて、表面が荒く、不規則な形状をしている。図3は、3種類の着氷の例を示している。
着氷の程度は、トレース(極軽度)、ライト(軽度)、モデレート(中度)およびシビア(重度)の4つの段階に区分される。トレース・アイシングは、氷の蓄積がわずかであり、通常、危険をもたらすことがない。ライト・アイシングとは、機体がその環境に長時間、通常1時間以上さらされた場合に生じる顕著な氷の蓄積をいう。これは、除氷装置を用いることにより、蓄積を防止できる。モデレート・アイシングは、短時間の飛行で顕著な蓄積が生じ、除氷装置を用いなければ危険な状態となるものをいう。シビア・アイシングは、機体への蓄積が急激に生じるものをいい、除氷装置を使用しても蓄積を減じることが困難である。
冬季においては、降水および着氷が機体に悪影響を及ぼす可能性がある。発生が予想される事態をあらかじめ把握しておくことにより、冬季の飛行における危険性を局限し、気象予報に基づいた適切な危険見積を飛行前に行うことが可能になる。
出典:FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness Center 2019年08月
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。
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