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陸軍航空の情報センター

多機能APX-128トランスポンダ――陸軍回転翼機搭乗員の安全への投資

中佐 ポール・R・フラニゲン
ブランドン・M・ダグラス

トランスポンダの評価に使用された、米陸軍のソフトウェア統合ラボであるエンタープライズ・プラットフォーム・イノベーションおよび適合センター(Enterprise Platform Innovation and Conformance Center, EPICC)のCH-47評価装置

陸軍は、空域アクセス保証システム(Assured Airspace Access Systems: A3S)プロダクト・オフィスに対し、妥協を許さない根本的な任務を課しています。それは、すべての陸軍航空搭乗員が、いかなる空域においても、いかなる状況下においても、安全かつ効果的に作戦行動を遂行できるようにすることです。A3Sにとって、APX-128トランスポンダの導入は単なる規則への適合にとどまらず、戦闘員に対する安全性と戦術的能力を飛躍的に向上させる計画です。

任務と近代化のギャップ

プロダクト・マネジメントの観点から見ると、陸軍の現在の監視技術の状況は、将来にわたって維持できるものではありません。陸軍のほとんどの航空機はすでに放送型自動従属監視(Automatic Dependent Surveillance-Broadcast: ADS-B)のOUT(送信)機能を備えていますが、ADS-B IN(受信)機能が統合されていないために他機の位置情報を得られず、搭乗員に深刻な状況把握のギャップが生じています。

暫定措置として、陸軍航空は交通量の多い(輻輳した)空域を飛行する航空機に対し、ADS-B INのデータを表示するためのポータブル・タブレットを1,300台以上提供しました。この迅速な対応により搭乗員へのリスクはただちに軽減されましたが、完全に統合されたコックピット計器への組み込み(ビハインド・ザ・グラス)や、将来の航空機衝突回避システム(Aircraft Collision Avoidance System: ACAS)Xソフトウェアへの発展経路を実現する解決策には及んでいません。

さらにリスクを増大させているのが、従来のAPX-123Aトランスポンダが直面している維持整備の困難化です。A3Sは、まさに需要が急増しようとしているこの時期に、深刻な不足が生じると見込んでいます。既存・新規の任務要求の増大、自己資金による近代化という環境、そして老朽化するハードウェアの在庫という要因が重なり、包括的かつ長期的な解決策への移行が避けられない状況となっています。

解決策:戦略的礎石としてのAPX-128

APX-128は、陸軍近代化戦略の礎石です。陸軍と民間企業との慎重かつ協力的なパートナーシップを通じてA3Sが開発し、陸軍のソフトウェア統合ラボ環境で評価を受け、現在は証明要件を満たす軌道に乗っています。単純な1対1の機器交換をはるかに超え、3つの深刻な課題を同時に解決するために設計された多機能システムです。

第一に、状況把握の向上。 APX-128は、国内空域での安全な作戦行動に必要な完全なADS-B INおよびOUT機能を提供します。従来のトランスポンダに対する下位互換性のある形状適合の代替品として設計されており、陸軍の多様で老朽化した機種全体における整備・補給の統合を大幅に簡素化します。特に重要なのは、ADS-B OUT機能を通じてブロードキャストされる高精度なGPS(全地球測位システム)データが、陸軍の固定基地航空管制(Air Traffic Control: ATC)システムに対して信頼性の高い監視情報を提供するという点です。これにより、国家空域システムが進化する中でも、陸軍機と航空管制官が同じデジタル基盤の上で対話し、空域内での安全性と効率性を維持できます。

第二に、戦術的安全性と相互運用性の強化。 APX-128はモード5レベル2ブロードキャスト(Mode 5 Level 2 Broadcast: M5L2-B)を搭載し、戦術的な安全性と相互運用性を大幅に向上させます。この暗号化されたNATO安全通信プロトコルは、地上レーダーのインフラに依存することなく、味方の航空機同士が互いの正確な位置と速度を直接送信し合うことを可能にします。交戦状況下や通信が劣化した環境においては、これにより状況把握のための安全なデジタル「バブル」が形成され、空中衝突や同志討ちのリスクを劇的に低減します。これは単なる規則適合を超え、純粋に戦闘能力を高めるための軍事的要件です。

第三に、将来への基盤整備。 最も戦略的な点として、APX-128はACAS Xソフトウェアの搭載先として陸軍の将来の基盤となるよう設計されています。この次世代システムは、受動的な状況把握から能動的・自動化された衝突防止へという、航空安全のパラダイム転換をもたらします。ADS-BおよびM5L2-Bからのデータを処理することで、ACAS Xは自動的な回避指示(resolution advisories)を生成し、「上昇」または「旋回」といった明確なコマンドをパイロットに提示して飛行経路の衝突を防ぎます。APX-128を今すぐ配備することで、A3Sオフィスは今日の問題を解決するとともに、明日のより安全で能力の高い部隊のための不可欠な基盤を構築しています。

装備化戦略:慎重で段階的なアプローチ

全機種にわたる改修は複雑な事業です。そのため、A3Sチームはこの能力を段階的に提供するための多段階装備化戦略を策定しました。

計画は2027会計年度(FY27)に始まります。新しいAPX-128トランスポンダを取り付け、既存のコックピット・タブレットに接続することで、即座に状況把握能力を付与します。続くFY29からFY31にかけては、完全な「ビハインド・ザ・グラス」統合への転換を図り、UH-60、AH-64、CH-47各機種のネイティブなコックピット・ディスプレイにデータを直接組み込みます。並行して、ACAS Xソフトウェアの装備化により、本システムは受動的な情報表示から、有人・無人プラットフォームの双方を守る能動的なシステムへと進化します。

結論:陸軍航空の未来のための厳しい選択

APX-128近代化計画は、包括的かつ決定的な解決策です。差し迫った維持整備の危機を回避するとともに、最も重要なこととして、ますます輻輳する空域を安全に運用するために不可欠な状況把握能力をパイロットに提供します。これは単なる機器のアップグレードではなく、搭乗員の安全と陸軍航空の未来そのものへの根本的な投資です。その未来を確保すべき時は、今なのです。


ポール・R・フラニゲン中佐は、空域アクセス保証システム(A3S)のプロダクト・マネージャーです。ブランドン・M・ダグラス氏は、A3Sの副プロダクト・マネージャーです。A3Sプロダクト・オフィスは、アラバマ州レッドストーン工廠の能力プログラム・エクゼクティブ航空オフィス内、航空任務システム及びアーキテクチャ(Aviation Mission Systems and Architecture: AMSA)プロジェクト・オフィスに属しています。

                               

出典:ARMY AVIATION, Army Aviation Association of America 2026年03月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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