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陸軍航空の情報センター

中国のヘリコプター近代化

ベル・ヘリコプター社のV-280バロー・ティルトローターと同一の300ノットが目標

クリス・オズボーン
WARRIOR MAVEN

ベルV-280 写真:bellflight.com

中国は、アメリカのヘリコプター技術の進歩に歩調を合わせるため、高速性能、ステルス性能および革新的な次世代設計の実現を目指した野心的な長期計画に着手しているようである。

中国政府系紙の環球時報によると、中国の主力ヘリコプターZ10の設計技術者であるWu Ximing氏は、V-22オスプレイSB-1デファイアントの具体的な速度を引き合いに出したうえで、「10年以内に、ヘリコプターなどの回転翼機が高速で飛行するのは、普通のことになるだろう」と述べたという。

ベル・ヘリコプター

興味深いのは、同紙が300ノットという具体的な値を明示していることである。これは、試験運用中であるベル・ヘリコプター社のV-280バロー・ティルトローターが近年繰り返し達成してきた速度に一致する。

アメリカは、FVL(Future Vertical Lift, 将来型垂直離着陸機)プログラムにより、長年にわたって次世代の回転翼航空機の設計、兵装および推進システムを開発してきた。これに対し、中国は、高速ヘリコプター技術に関し、何年も遅れていると考えられてきた。

このプログラムにより開発されている新しい機体には、従来の設計では困難だった時速約300キロ(約162ノット)という速度の壁を突破するため、従来のヘリコプターとは全く異なる設計が採用されている。

ベル・ヘリコプター社のV-280バロー

環球時報は、Wu氏が人民解放軍は約10年後に新しい高速ヘリコプターの設計を発表できると述べたと伝えているが、アメリカはすでにFVL計画にベル社のV-280バローやロッキード・シコルスキー・ボーイングのデファイアントなど、いくつかの複合回転翼機を開発している。アメリカのFVL機種選定プログラムの候補機であるこれらの新しい機体は、いずれも、過去の概念を超える速度を達成できるように設計され、起伏のある地形において飛行、ホバリングおよび運用できる新たなレベルの機動性を有している。

例えば、V-280バローは、エアプレーン・モードにおいて、300ノットを超える速度で飛行でき、かつ、翼に取り付けられた2つのローターをヘリコプターのように使用することで、垂直離着陸および高速機動が可能となっている。

アメリカ陸軍のFVL 写真:Bell社

環球時報は、中国が複数の設計に取り組んでいると伝えているが、それらの細部進展状況や試験飛行の結果などについては明らかにしていない。

中国のヘリコプター

「中国のヘリコプター・メーカーは、少なくとも2種類の革新的な設計のヘリコプターの試験飛行を行ったと伝えられている。1つは翼胴一体型で複数のローターを有する垂直離着陸機であり、もう1つは従来機とは全く異なる革新的なデザインのヘリコプターである」と環球時報は報じている。

アメリカのFVLプログラムでは、2種類の飛行可能な実験機が製造され、陸軍の評価を受けているところである。(訳者注:2022年12月5日、アメリカ陸軍はV-280の採用を発表した。)中国が将来型ヘリコプターへの道を切り開くために、アメリカの機体に目を向けているとしても不思議ではない。

中国人民解放軍は、中国のヘリコプター近代化計画において、高速のAI対応ヘリコプターを要求しているという。この点についても、アメリカが近年行ってきた開発の成果を十分に反映しているか、あるいは「コピー」しているように思われる。ただし、環球時報の報道内容から考えると、その開発の進捗は、いくつかの重要な点で米国よりも数年は遅れているだろう。

中国でAIシステムがどの程度発達しているかは明らかではないが、AIの機能や利点についての同紙の説明は、アメリカの兵器開発者がこの問題について述べている内容と非常に良く似ている。

アメリカ側の説明によれば、ヘリコプターに搭載されるAIには、基本的な前提条件として、大量かつ高速なデータ処理を自律的に行うことによって、パイロットの「認知的負担」を軽減できることが求められる。これにより、パイロットは、複雑な任務に対応するための意思決定など、より差し迫った動的な判断に集中できるようになる。コンピュータが複雑な比較やデータ分析を実行し、意思決定に必要な情報を人間に提供する一方で、より主観的な考慮や複雑な問題解決は人間の認知に委ねられるのである。

アメリカの長年にわたる技術および兵器開発により得られたこの成果が、中国に利用されている可能性がある。同紙のAI機能に関する説明は、アメリカでの成果とほぼ一致しているからである。

Z-2 写真:CHEN XIAO(チャイナ・デイリー紙)

環球時報は、AI を使用すると…「デジタル・ヘルメットやスクリーンが操縦桿に取って代わる可能性がある」と述べている。「AIがパイロットの音声指示を理解し、飛行ルートを提案し、過酷な環境や複雑な任務においても独自の決定を下すことにより、ヘリコプターを操縦するパイロットの負担が大幅に軽減される」という。

同紙のAIがどのように「パイロットの負担を大幅に軽減」できるかという説明は、アメリカの兵器開発者のAIや自律制御性の将来の作戦における効果に関する説明と一致している。

たとえば、アメリカのFVLプログラムでは、マンーマシン・インターフェイスを使用することにより、人間の認知や主観的な意思決定と高速コンピューターとの組み合わせを最適化している。このような取り組みのひとつは、「Controlled Flight Into Terrain」と呼ばれるコンピューター支援システムであり、センサーとAI対応の地図・航法情報などを利用することにより、航空機自体が障害物を衝突しないように回避しながら自律的に飛行することを可能にしている。

クリス・オズボーン社長

クリス・オズボーンは、Warrior Mavenの社長であり、National Interestの記者である。アメリカ国防総省の調達・兵站・技術担当陸軍次官補室で専門官として勤務した経験を有する。また、全国テレビ・ネットワークのキャスターおよび軍事専門家としても出演している。ゲスト軍事専門家として出演した番組には、Fox News、MSNBC、The Military Channel、The History Channelなどがある。コロンビア大学で比較文学の修士号を取得。

                               

出典:Warrior Maven 2022年04月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

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1件のコメント

  1. 管理人 より:

    ある記事を執筆するため、資料として翻訳したものです。