宇宙開発庁と陸軍がGPS衛星の代替システムで協力
宇宙開発庁長官デレク・ターニア氏は、同組織が来年、地域通信用のトランスポート・レイヤー衛星トランシェ1の打ち上げを開始すると述べた。この衛星は、広く利用されているリンク16データ・リンクに埋め込まれた「ナビゲーション・メッセージ」の伝送にも用いられるという。
ワシントン — 宇宙開発庁長官のデレク・ターニア氏によれば、同庁は現在、陸軍と協力し、GPSの代替となる新しいPNT(positioning, navigation and timing、時空間情報)把握手段の検討を行っている。
同氏は本日、国家安全保障宇宙協会において「宇宙開発庁は国防総省における代替PNTの先駆者である陸軍と緊密に連携している」と語った。「同じ信号を送信できるようにして、既存および計画済みの端末器材による受信を可能にすることに取り組んでいます。」
同氏によれば、陸軍はMGUE(Military GPS User Equipment, 軍用GPS端末)用のインクリメント2無線チップ・セット(Increment 2 radio chip sets )により受信できる代替PNT()システムを保有している。このシステムの主たる目的は、GPSコンステレーション(GPS衛星群)から耐妨害性に優れたMコード信号を受信できるようにすることであった。ただし、この取り組みが実現するのは「少し先のこと」なる。同氏によれば、それは宇宙開発庁がトランスポート・レイヤー衛星の第3弾(紛らわしいことにトランシェ2と呼ばれる)を低軌道に打ち上げ、地球周囲の高速データ中継を提供できるようになってからのことになるという。宇宙開発庁がこれらの衛星の打ち上げを開始するのは、2026年の予定である。
アメリカ軍は、代替PNTシステムの開発にあたって、将来の紛争においてGPSが利用できない環境または敵による妨害を受けている環境で部隊が活動しなければならない状況を想定している。
ターニア氏によれば、宇宙開発庁は、それが実現するまでの間の処置として、地域通信用のトランスポート・レイヤー衛星トランシェ1の打ち上げを来年に開始し、広く利用されているリンク16データ・リンクに埋み込み済みの「ナビゲーション・メッセージ」の伝送を開始する。
「リンク16は、GPSが戦場で利用されるようになる前の80年代から利用されてきました。リンク16は、GPSが登場するまでは、ナビゲーションおよびタイミング情報の伝達に利用される予定でした。その能力は今でも残っています。リンク16にナビゲーション信号とタイミング信号を埋め込めば、それを利用することができるのです。その性能はGPSには劣りますが、代替手段としては十分に利用することが可能です。そうすれば、衛星間でタイミング転送を行うだけで、GPSから独立した独自のPNTを計算することができるのです。」と付け加えた。
ターニア氏は、リンク16は、アメリカおよび同盟国の何千もの軍用無線機および受信機で用いられている標準的なデータ伝送リンクであり、まったく変更を加えずとも代替PNT信号を受信することができることを強調した。
最後に同氏は、宇宙開発庁は「将来的にはLバンドまたはSバンド上で代替PNT信号を送信することも検討しており、その際には新型の端末器材が必要となる」と述べた。
宇宙開発庁は2022年11月に関連企業に対し、その旨を記載した情報提供依頼書を発行している。L バンド(1~2GHz帯)はGPS以外にも、ロシアのGLONASSおよび中国の北斗(BeiDou)PNT衛星によっても使用されている。Sバンド(2~4GHz帯) は、航空管制、気象および海上艦艇用のレーダー・システムならびに一部の通信衛星でも広く使用されている。
「われわれがそれを採用したり、装備化したりすることはない」が、代わりに「これらのシステムがわれわれのシステムに適合していることを確認し、われわれがシステムを装備化する前または直後に、同様の端末を自分たちのシステムに追加できるように協力する」とターニア氏は説明した。
ただし、新たに要求される能力を実現するための後続のトランスポート・レイヤー衛星であるトランシェ3およびトランシェ4の構成については、 少なくとも2028年まで決定する予定がないと述べた。
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2件のコメント
あまり得意な分野でないので、用語や解釈に不適切な部分があるかもしれません。
お気づきの点があれば、遠慮なくご指摘ください。
この記事の重要な点は、アメリカ軍は「GPSが利用できない環境」で行動できる環境を着々と整えつつあるということだと思います。
防衛省もリンク16の導入などに取り組んでいるようですが、乗り遅れるわけにはいかない気がします。