AVIATION ASSETS

陸軍航空の情報センター

沈黙の危険

上級准尉3 クリス・リーダー
第1-14航空連隊
アラバマ州フォート・ラッカー

実戦派遣の経験を持つ熟練した機長(Pilot in Command, PC)として、私はあらゆる状況を経験してきたと思っていました。派遣中には多くの高ストレス任務をこなし、ニューヨーク州フォート・ドラムの過密した空域を飛行し、鳥や樹木、予測できない気象によるヒヤリ・ハットも数多く経験してきました。他の航空機との危険な接近も経験しましたが、フロリダ州マリアナで計器飛行訓練中に小型機と遭遇した異常接近は、それまでのいかなる経験とも比べものになりませんでした。

私はアラバマ州フォート・ラッカーで、AH-64Eアパッチの教官操縦士(Instructor Pilot, IP)課程に参加していました。スケジュールがやや遅れていたため、遅れを取り戻すべく土曜日の朝に飛行することになりました。気象状態は有視界飛行方式(Visual Flight Rules, VFR)の条件を満たしており、高度約3,500フィート(約1,070メートル)付近に積雲が点在していました。まさかこの後、固定翼機の降着装置のラグ・ナット(lug nut)が数えられるほどの距離まで接近することになるとは、この時はまったく想像していませんでした。

私たちは4レグのうち最初のレグを飛行しており、マリアナへのVOR-A(超短波全方向式無線標識)による非精密進入(non-precision approach)を実施していました。フォート・ラッカーで計器飛行訓練を受けたことがある方なら、このアプローチは必ず経験しているはずです。私は操縦桿を握り、共通管制無線周波数(Common Traffic Advisory Frequency, CTAF)での標準的な位置通報を行っていました。無線は驚くほど静かで、これほど飛行に適した好天の日にしては異様なほどでした。

私の技量評価操縦士(Standardization Pilot, SP)が安全監視操縦士として周囲の航空機を目視確認する役割を担い、私はコックピット内の計器に集中していました。進入は順調に進んでおり、風は比較的穏やかで、空域も混雑していませんでした。ミスド・アプローチ・ポイント(missed approach point)において、私は南西方向に旋回してミスド・アプローチ高度まで上昇する意図を通報しました。ブリーフィングどおり、技量評価操縦士は無線や経路情報の設定に集中すべくコックピット内に目を向け、私は無線で何も聞こえていなかったものの、機外を見渡して周囲の航空機を確認していました。私は公示されたホールディング手順(published hold)の計器・航法設定を行うため、技量評価操縦士に操縦を交代しようとしていました。彼がコックピット内の作業に集中していたため交代を待たざるを得なかったことが、結果的に幸いしました。

共通管制無線周波数(CTAF)での最後の通報を終え、周波数を切り替えようとした瞬間、右側に目を向けると、それが見えました。無線で一切通報をしていないパイロットが操縦する飛行機が、こちらに向かっており、私たちはまさにその進路に向けて上昇していたのです。私は直ちに機体を左にロールさせて降下し、衝突を回避しながら、無線でそのパイロットとの通信を試みました。応答はなく、進入通報も、位置通報も、あれほど接近したことへの謝罪の無線もありませんでした。そのパイロットが誤った周波数に合わせていたのか、無線機が故障していたのかもしれません。理由がなんであれ、あのタイミングで私が相手の機体を視認できたことは、双方にとって大変幸運でした。事態があまりに急速に展開したため、技量評価操縦士は相手の機体をまったく確認できませんでした。

教訓

手順には必ず理由があります。特に管制塔のない飛行場(non-towered airfield)ではなおさらです。共通管制無線周波数(CTAF)を使って自機の位置を通報し、他機の通報に耳を傾けることで、関係するすべての者にとって安全な運航環境が生まれます。あの相手機のパイロットは、送信していないか、受信していないか、あるいはその両方だったのです。

私の経験上、無線が静かなことは安全な空域を示すサインではなく、何かがおかしいという警告です。無線が静かなときほど、警戒を怠らないでください。正しい周波数に合わせているか確認し、確実に通報を行ってください。その一言の通報が、通常の飛行と惨事とを分ける唯一のものになるかもしれません。

訳者コメント:陸上自衛隊の航空科部隊は、演習場など管制塔のない空域を使用する機会が多くあります。本記事の「無線の静寂は安全の証明ではない」という教訓は、民間機との混合空域で任務を遂行するすべての操縦士に直結する安全上の視点です。位置通報の徹底と周波数管理が重要であることを、実体験に基づく具体的な事例から学ぶことができます。
                               

出典:Risk Management, U.S. Army Combat Readiness Center 2026年04月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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