AVIATION ASSETS

陸上航空(陸上自衛隊航空科職種)の教育訓練、運用、装備、安全等に関連する米軍情報の発信源

使い果たした燃料

上級准尉2 キース・ドリバー
第158航空連隊第5大隊A中隊
ドイツ国アンスバッハ陸軍ヘリポート

パイロットならば誰でも一度は、「燃料が間に合うだろうか?」という状況を経験するものです。運良くそのような経験がない人でも、他の人がおそらく苦笑を浮かべながら話すのを聞いたことはあるはずです。ほとんどの場合、その経験は最初の、そしてうまくいけば最後の貴重な経験となるはずです。これから、私の経験した事例を紹介したいと思います。
 それは、私が作戦地域に到着してから約一週間後のことでした。その日の飛行ルートは、毎日のように、時には1日に何回も飛行しているルートであり、地形にも習熟できていました。我々の任務は、本拠地である飛行場から離陸し、40分程飛行して中継基地に到着後、治療を要する患者を搭載して、2、3マイル沖合の海上に停泊している海軍病院船まで空輸するという人道救援ミッションでした。我々が使用するUH-60Lブラックホークには、中継基地と飛行場の間の距離及び再給油の効率性を考慮し、2本の耐衝撃性外部燃料タンクシステム(Crashworthy External Fuel System, CEFS)タンクが装備されていました。私は、CEFSタンクについての教育を修了し、その運用に習熟しており、満タン状態であれば、約4時間半の連続巡航飛行が可能であると認識していました。なお、中継基地から病院船までを往復する、飛行時間7-10分の各飛行レグには、患者の搭載・卸下のための地上運転が含まれていたので、実際は4時間半を超えた運用が可能な状況でした。
 この人道救援ミッションは、5時間毎に燃料補給と乗組員の交代を実施しながら、継続的に実施されていました。それまで飛行場に帰投した際(5時間毎の交代時)には、1時間以上の残燃料があり、何も問題はありませんでした。しかしながら、この日は、これまでとは違って、時間ではなく燃料に制約を受けることになってしまいました。
 飛行場からの離陸は、いつもと変わりませんでした。中継基地に到着後、患者の輸送を開始した時点で、燃料チェックを実施・記録し、その後も継続的に燃料を監視していました。
 順調に飛行レグを繰り返していると、5時間毎の交代時間が近づいてきましたが、燃料計の指示を確認すると、まだ約1時間20分飛行できる燃料が残っていました。そこで、「中継基地と病院船の間をもう1往復できるのではないか?」と考えました。燃料チェックの結果によれば、病院船にもう1回患者を空輸し、患者を卸下した後でも、約1時間分の燃料が残っている計算でしたので、飛行場に帰投するのに十分な飛行時間が確保できると判断し、自信を持って、実施を決心しました。
 病院船で最後の患者を卸下した後、飛行場への帰投を開始しました。離陸から15分後に燃料チェックを実施したところ、燃料消費率がやや大きいことに気づきましたが、たいしたことはないと思い、監視を継続していれば大丈夫だと考えました。それから10分後、更に予想以上の燃料を消費し、予備の燃料を大幅に減少させていることに気づきました。飛行場までまだ10分の飛行が必要でしたが、残燃料は400ポンドになっていました。重量や空気抵抗が大きいCEFSタンクを装備して飛行したことがあるパイロットであれば、十分に緊張するレベルであることを理解してもらえるでしょう。我々の機体は、飛行場のある市街地に進入しました。飛行場まで5分以内の距離に到達しましたが、燃料は300ポンドを切っており、市街地の反対側に位置する飛行場まで、その上空を飛行しなければなりませんでした。これらの状況を踏まえ、不時着適地を考慮しつつ市街地外周を迂回し、海岸線を経由して飛行場に向かうことを決心しました。万が一、不時着が必要な場合は、海岸の砂浜に着陸しようと考えていました。
 残燃料が150-200ポンドとなり、左右タンクの低燃料注意灯が両方とも点滅し始めた時、飛行場への進入を開始することができました。滑走路に向かって真っ直ぐに着陸し、エプロンに移動してエンジンを停止した時の残燃料は、90-120ポンドでした。着陸した途端、複雑な表情を浮かべる者もいましたが、少なくとも全員が無事でした。
 我々は、搭乗員全員によるAARを実施し、何が問題だったのかを話し合いました。最終的に病院船を離陸する時には、予備を含めた燃料が十分に残っていると考えていました。また、それまでに継続的に行っていた燃料チェックにより、予想燃料消費量も把握できていると思っていました。それにも関わらず、飛行場までの帰投の間に、燃料消費量が予想よりも大きくなり、燃料が足りなくなったのはなぜなのでしょうか?

 その答えは、次のようなものでした。任務開始当初の燃料チェックは、病院船と中継基地の間の飛行、もしくは病院船のデッキが空くまで空中待機している間に、最大巡航速度で飛行している状態で実施していため、燃料消費量を実際よりも小さく認識してしまっていたのです。また、最初に中継基地に到着して以降は、海上飛行中に不時着水した場合の緊急脱出を容易にするため、機体両側のカーゴ・ドアを開放し、コックピットのドアを取り外していました。それが余分な抵抗を生み出し、燃料消費量を増加させてしまったのです。
予備燃料を計画するとき、飛行諸元や飛行形態の変化を考慮していますか?我々は、それを怠ったため、破局的な状況に陥ってしまったのです。燃料は使い果たすかもしれませんが、重力がなくなることは決してないことを忘れてはなりません。

出典:KNOWLEDGE, March 2013, U.S. Army Combat Readiness/Safety Center
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

コメント投稿フォーム

1件のコメント

  1. 管理人 より:

    私も一度だけ経験したことがあります。




関連記事






コラム