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陸軍航空の情報センター

アメリカ空軍航空機事故調査委員会報告書(CV-22B, 機番:10-0054)事実の概要

訳者注:「(翻訳省略)」と記した項目は、訳者が文章の翻訳を省略した部分です。太字の装飾は、訳者によるものです。

1. 権限および目的

a. 権限

2023年11月30日、空軍特殊作戦コマンド司令官のトニー・D・バウエンファインド中将は、2023年11月29日に日本・屋久島付近で発生した事故機、ガンダム22、CV-22B航空機、機体番号10-0054(タブY-3からY-4、およびEE-81)の事故に関する事故調査委員会の委員長にマイケル・E・コンリー准将を任命した。事故機は第21特殊作戦飛行隊、第353特殊作戦航空団(タブEE-17およびEE-104)に配属されていた。本調査は、日本の岩国海兵隊航空基地、日本の横田航空基地およびフロリダ州ハールバート飛行場(タブDD-41)で実施された。バウエンファインド中将は、本調査を支援するために以下の委員を任命した: 医療委員 (中佐)、医療委員2名、人的能力委員 (中佐)、パイロット委員 (少佐)、法律顧問 (少佐)、特別任務航空士委員 (上級曹長)、整備委員1名 (上級曹長)、整備委員2名(曹長)、記録係 (技術曹) (タブ Y-3 から Y-9、および Y-11)。

b. 目的

本航空事故調査委員会は、2019年3月18日付のAFI 51-307、航空宇宙および地上事故調査に従い、この空軍航空宇宙事故を取り巻くすべての事実と状況を調査し、公表可能な報告書を作成し、訴訟、請求、懲戒処分、不利な行政措置に使用するために入手可能なすべての証拠を入手して保存するための法的調査を実施した。

2. 事故の概要

2023年11月29日、現地時間14時40分頃、相互運用統合訓練に参加していたCV-22B航空機(機番:10-0054)(事故機)が、日本の屋久島沖約0.5マイルの海上に墜落した(タブ EE-9)。当該機は、日本の横田基地の第353特殊作戦航空団第21特殊作戦飛行隊 (タブ EE-17 および EE-104) によって運用されていた。事故機の搭乗員8名は、機長、副操縦士、追加操縦士、機上整備員、後方操作員で構成される第21特殊作戦群のCV-22B搭乗員5名と、嘉手納基地第353特殊作戦群第1特殊作戦飛行隊の医療要員2名、および横田基地第43情報飛行隊第1分遣隊の直接支援要員1名で構成されていた(タブEE-85~EE-95)。墜落によって事故機は破壊され、搭乗員8名全員が致命傷を負った (タブ P-3 および X-3 から X-9)。その後の捜索および回収により、搭乗員7名の遺体が回収された(タブEE-81)。搭乗員1名は、43日間にわたる多国籍の大規模な捜索活動にもかかわらず、発見されなかった(タブ EE-81)。墜落後、航空機の残骸のほとんどは水深約100フィートの海底に沈没した (タブ EE-37)。大規模な引き揚げ作業により、事故機の多くの主要構成品を回収できたが、衝撃による甚大な損傷、水中に長時間さらされたことおよび強い海流のため、事故機のすべての構成品を回収することは不可能であった (タブ V-28.7)。

3. 背景

a. 空軍特殊作戦司令部(翻訳省略)
b. 第353特殊作戦航空団(翻訳省略)
c. 第21特殊作戦飛行隊(翻訳省略)
d. 第753特殊作戦航空機整備飛行隊(翻訳省略)
e. 第1特殊作戦飛行隊(翻訳省略)
f. 第43情報飛行隊第1分遣隊(翻訳省略)
g. 企業・団体(翻訳省略)
h. CV-22B オスプレイ(翻訳省略)

i. 関連する航空機部品

(1) プロップローター・ギアボックス(PRGB)および動力伝達系統の概要

CV-22B には2つのプロップローター・ギアボックス (PRGB) があり、各ナセルに1つずつ取り付けられている (タブ DD-7) 。PRGB はエンジンからプロップローターに動力を伝達し、回転速度を減少させる (タブ DD-7)。

すべてのエンジンが作動している間、各PRGB にはそれぞれの側のエンジンからトルクが直接供給される (タブ DD-7)。左側PRGBと右側PRGB は、基本的に互いに左右対称の構造になっているが、左側PRGBには左側プロップローターを反時計回りに回転させるための追加のアイドル・ギアがある。右側 PRGBは時計回りに回転する (タブ DD-7)。PRGBは2つの独立した個別の潤滑系統を有している (タブ DD-7)。一次潤滑システムはPRGBに不可欠であり、二次緊急潤滑システムは、一次油圧が30ポンド/平方インチを下回った場合に30分間の作動を保証する (タブ DD-7)。各PRGB は、金属片の検出に使用されるチップ・デテクターを有している (タブ DD-7)。
PRGBは、クラッチ・アセンブリが格納されているインプット・クイルを介して、同じ側のエンジンから動力を受け取るように設計されている (タブ J-355) 。クラッチ・アセンブリは、インプット・ヘリカル・ギア (左側PRGBに4個、右側 PRGB に3個)を介して、ブル・ギアのヘリカル・ギア・セットへと、動力をPRGBに伝達する (タブ J-355) 。ブル・ギアのヘリカル・ギア・セットは、インターコネクト・ヘリカル・アイドラー・ギアにも噛み合っている。インターコネクト・ヘリカル・アイドラー・ギアは、インターコネクト ・ヘリカル・ギアと噛み合って、パイロン・ドライブシャフト (インターコネクティング・ドライブ・システムの一部) に動力を供給する (タブ J-355)。この設計により、同じ側のエンジンが故障した場合、反対側のエンジンがPRGBに動力を供給できる。その際、インターコネクティング・ドライブ・システムおよびパイロン・ドライブシャフトを介してインターコネクト・ギアに動力を伝達し、次にブル・ギアのヘリカル・ギア・セットに動力を伝達する (タブ J-355) 。両方のエンジンが作動している場合、ブル・ギアは、インプット・ヘリカル・アイドラー・ギア (同じ側のエンジンから) とインターコネクト・ヘリカル・アイドラー・ギア (反対側のエンジンから) の両方によって同時に駆動され、反対側のエンジンから追加の動力を受け取ることができる (タブ J-355)。
ブル・ギアには、ギアの後部にスパー・ギア・ティースの第2ギア・セットがあり、ハイスピード・プラネタリー・ギアのサン・ギアとして機能する (タブ J-355)。ブル・ギアは前方のヘリカル・ギア・セットにより駆動され、後方のスパー・ギア・セットはハイスピード・プラネット・ピニオンを駆動する (タブ J-355)。ハイスピード・ピニオンはハイスピード・リング・ギア(PRGB ハウジングに固定)とも噛み合い、ハイスピード・キャリア・アセンブリを駆動する(タブ J-355)。
動力は、その後、ロースピード・サン・ギアの前方スプラインと噛み合うハイスピード・キャリアのスプライン・セットを介して伝達される (タブ J-355)。ロースピード・サンギアの後部ギア・セットは、ロースピード・プラネット・ピニオンを駆動する (タブ J-355) 。ロースピード・プラネット・ピニオンは、ロースピード・リング・ギア(PRGBハウジングに固定)とも噛み合い、ロースピード・キャリア・アセンブリ(タブ J-355)を駆動する。ロースピード・キャリアには、PRGBマスト (タブ J-355) のスプラインと噛み合うスプラインがある。マストはブル・ギア、ハイスピード・キャリア・アセンブリ、およびロースピード・キャリア・アセンブリの中心を通って配置されるが、ロースピード・キャリア・アセンブリによってのみ駆動されることに注意すること (タブ J-355)。ロースピード・キャリアがマストを駆動すると、マストがそれぞれのプロップローターを駆動する (タブ J-355)。このPRGBギア・トレインにより、エンジンからマストまでのトルクの増加と速度の減少を実現される (速度比:37.798:1) (タブ J-355)。


PRGBチップ・ディテクション・システムは、ギア・オイル内に磁性体の破片が検出された場合、搭乗員に視覚的表示を提供する (タブ J-228)。各PRGBは3つのチップ・デテクターを有している (タブ J-228) 。PRGBチップ・デテクターは、整備作業中に取り外して破片がないか検査することができる (タブ J-228)。PRGBチップ・デテクターはドライブ・システム・インターフェイス・ユニット (DSIU) によって監視され、DSIUは導電性の破片がデテクターの電極に捕捉されると通知する (タブ DD-7 および J-224)。このシステムには、電極に電流を流すことで破片を「バーン・オフ(焼き切る)」機能がある (タブ DD-7 および J-224)。導電性の破片が磁気センサー・ピックアップに接触すると、チップ・バーン回路が自動的に作動し、破片を焼き払おうとする (タブ DD-7)。

1) PRGBチップ・バーン

「PRGB CHIP BURN(L. R)」は視覚のみのアドバイザリ(勧告)であり、チップが検出され、デテクターによって正常に焼き切られた場合に統合制御表示器 (CDU) に表示される (タブ DD-52)。搭乗員がアクノーリジメント・ボタン (タブ DD-52 および J-339) を押すまで、アドバイザリは表示されたままになる。
取扱書には、「PRGB CHIP BURN」について、次のように説明されている。 「該当するPRGBにチップまたは破片が検出され、焼き切られたことをしめす (タブ DD-52)。1回の連続飛行中に3回連続してチップ・バーン・アドバイザリが表示された場合、『努めて速やかに着陸』の対処基準が適用される (タブ DD-52)。」

2) PRGBチップ

「PRGB CHIPS (L、R)」は、音声および視覚による警告であり、自動チップ・バーンが3回連続して試されてもチップを焼ききれなかった場合にCDUに表示される (タブ DD-52 および J-339)。
取扱書には、「PRGB CHIPS」について次のように説明されている。「『 PRGB chip detector 1、2、または3』は、チップが焼ききれなかったことを示す (タブ DD-52)。『PRGB CHIPS』が表示された後、2次的な不具合の兆候がない場合、搭乗員は『速やかに着陸』する必要がある (タブ DD-52)。2次的な不具合の兆候があった場合は、搭乗員は『直ちに着陸』する必要がある(タブ DD-52)。」

j. 緊急着陸手順の基準

取扱書が規定する緊急操作の多くは、コックピットに表示されるワーニング(警報)、コーション(注意)、またはアドバイザリ(勧告)のメッセージに関連付けられている (タブ DD-53)。ワーニング(警報)は、マスター警報灯、マルチファンクション・ディスプレイ (MFD) 上の赤色文字、および音声警告アナウンスによって通知される (タブ DD-53) 。コーション(注意)は、マスター警告灯、CDU 上の黄色文字、および可聴音によって通知される (タブ DD-53)。アドバイザリ(勧告)は、音なしでCDUに白色文字で表示される(DD-53)。取扱書には、機体のコントロール維持に始まり、状況の分析から適切な措置の実施までの搭乗員が行うべき是正手順が示されている (タブ DD-53)。状況の分析には、関連するシステムの状況表示画面、可聴音による指示または故障による飛行音の変化、目視による機体の状態の変化の把握など、緊急措置を行う前に緊急事態の性質を適切に識別するためのすべての合理的な手段の観察や評価が含まれている。 (タブ DD-53)。利用可能な時間および故障の性質によって、どれだけ迅速に緊急措置を講じるべきかが決定される (タブ DD-53)。「直ちに」、「速やかに」、「努めて速やかに」という言葉は、着陸をしなければならない緊急性を降順で定義している (タブ DD-53)。

(1) 努めて速やかに着陸

「努めて速やかに着陸」とは、長時間の飛行が推奨されないことを意味する (タブ DD-53)。着陸地点や飛行時間は機長の裁量に委ねられる (タブ DD-53)。取扱書に示された対処基準に従えない場合、搭乗員は、任務を続行するかどうかを決定する前に、敵の脅威、現在の位置、現地での修理能力、整備・回収チーム派遣の可能性、残存している機体システムの冗長性、相互支援、その他の関連する要因などを考慮する必要がある (タブ B-36)。

(2) 速やかに着陸

「速やかに着陸」とは、安全に着陸できる最も近い利用可能な地域に着陸することと定義されている (タブ DD-53)。海上飛行中に緊急事態が発生した場合、速やかに着陸するかどうかの判断はパイロットの裁量に委ねられる (タブ DD-53)。海況、気象、通信、救命装備、他の航空機、船舶、陸地の位置などは、パイロットが速やかに着陸するか、救命および救助が容易になる地点まで飛行を継続するかを決定するための要素となる (タブ DD-53)。いずれの場合も、パイロットは必要に応じて直ちに着陸できるように飛行すべきである(タブDD-53)

(3) 直ちに着陸

「直ちに着陸」とは、遅延なく着陸を実行することと定義される (タブ DD-53)。この状態での航空機の継続的な運航は、極めて危険である (タブ DD-53)。海上を飛行中の場合は、遅滞なく制御された不時着水を実施する(タブ DD-53)。制御された不時着水の手順を実行することにより、緊急事態により飛行の継続が不可能になった場合に航空機を着水させる準備が可能になる (タブ DD-53)。着水後は、緊急シャットダウンの実施を検討する (タブ DD-53)。最も重要な考慮事項は、搭乗者の生存を保証することである (タブ DD-53)。

k. Kシリーズ音声、可聴音およびデータ・レコーダー

Kシリーズの音声、可聴音およびデータ・レコーダー (KVADR) は、不揮発性メモリ に飛行データを半永久的に記録する (タブ DD-6)。KVADR は、衝撃、火災、塩水、消火剤など、航空機の墜落に関連する環境に耐えられるように設計されている (タブ DD-6)。KVADRは、主翼中央部に配置され、上面には水中音響ビーコンを装備している (タブ DD-6)。コックピット・エリアのマイクは、KVADRに記録されるコックピット・エリアの可聴音を連続して収集する (タブ DD-6) 。

l. 振動構造寿命およびエンジン診断

振動構造寿命およびエンジン診断 (VSLED) は、航空機の構造、ギアボックス、およびエンジン・コンポーネントの振動、温度、および応力監視を記録する状態監視システムである (タブ DD-7)。VSLEDセンサーは、エンジン、インターコネクテッド・ドライブ・シャフト、PRGB、および各ナセル内の複数領域に取り付けられている (タブ DD-7)。飛行中は、搭乗員にVSLEDセンサーの状態は表示されるが、そのデータを提供することはできない。 (タブ DD-7)。機体のVSLEDデータは、飛行終了時にダウンロードされ、整備用地上ステーション(Comprehensive Automated Maintenance Environment Optimized Ground Station)を使用して処理が行われる (タブ DD-6) 。

4. 発生の経過

a. 統合相互運用性訓練の計画(翻訳省略)
b. 事故機の形態

事故機は、搭乗員数、飛行予定時間、および海上飛行に適した標準的な形態であった (タブ B-35)。コックピットでは、機長が左操縦席に、副操縦士が右操縦席に、機上整備員が機上整備員席に搭乗していた (タブ V-28.7 から V-28.8)。コックピット内の3名の搭乗員は全員、5点式ハーネスでそれぞれの座席に固定されていた (タブ DD-45 および V-28.7 から V-28.8) 。キャビンには、前方貨物室に前方任務補助タンク (FWD MAT) が設置され、追加の430ガロンの燃料を供給していた (タブ DD-45、K-15、および U-106 から U-129) 。事故機のランプの左側には、ランプ・マウント・ウエポン・システム (RMWS)の銃架が設置された。.50口径の機関銃は取り外され、FWD MATの後方に固定されていた (タブ Z-7 および DD-45)。直接支援要員の装備品は、事故機の左側、FWD MAT の後方の別の位置に設置されていた (タブ V-1.3 ~ V-1.4、V-18.5、および V-21.5)。後方操作員は、RMWSの銃架の近くのランプ上に位置し、搭乗員用ハーネス(Advanced Crew Tether System)を戦闘員システム(Eagle Combat Integrated Armor Carrier System)によって機体に固定されていた。20名が搭乗可能な救命浮舟は、ランプの右側に搭載され、SKカーゴ・ストラップで固定されていた。これは、海上飛行時の標準的な搭載要領である (タブ V-12.7、V-17.6、V-18.5 から V-18.6、および V-21.3)。一般的な運行手順では、特殊作戦直接支援要員および医療要員の1名は、航空機の左側、MATの後ろの座席に配置されることになっていた (タブ DD-45)。追加操縦士ともう1名の医療要員は、航空機の右側のMAT後方に配置されることになっていた (タブ DD-45)。

c. CV-22Bの任務(翻訳省略)

d. CV-22Bの飛行計画(翻訳省略)
e. 飛行準備(翻訳省略)
f. 事故の概要

(1) 第1段階:横田基地から岩国海兵隊航空基地へ

事故機は、横田基地を10時43分に離陸し、西から60~70ノットの向かい風を受けながら巡航高度10,000フィートの平均海面高度で384マイルを飛行し、予定されていた岩国海兵隊航空基地に着陸した(タブDD-47)。搭乗員は、ランウェイ20への直接目視進入を行い、1231に着陸した (タブ DD-47、II-9) 。ガンダム21は、事故機より約10分遅れて続いた(タブV-20.4)。

(2) 第2段階:岩国海兵隊航空基地における地上運用

岩国では、E誘導路から滑走路を出た後、事故機は、2回目のミッション・コンピュータのウォームスタートが必要となった (タブ IL-11)。事故機の搭乗員は、ウォームスタート警報を発声確認し、F2誘導路を経由して、シャットダウンせずに燃料補給を行うエリアであるホット・ピットまで移動を続けた (タブ II-11 から II-12)。航空機がホット・ピットで停止すると、後方操作員 は事故機から出て給油作業の準備をし、その間に機上整備員は給油チェックリストを実行した (タブ II-13)。機長は、空中給油のためKC-130Jと出発の順序やタイミングについて話し合いながら、燃料の流れを監視した(表II-18からI-20)。副操縦士および機上整備員は、2 回目のウォームスタートのチェックリストを実行した (タブ II-13 から II-15)。給油中に、事故機は3回目のウォーム スタートが必要になり、搭乗員が情報を受信するために必要なシステムである情報放送受信機 (IBR) の接続が切断された (タブ DD-47 および IL15)。
岩国海兵隊航空基地で地上滞在し、機長が他の演習参加者と任務実施要領を調整している間、事故機には、ブレード・フォールド・コントロール・ユニットの定期的なビルトインテストの不具合、GPS受信機の不具合、排気デフレクターの不具合、無線周波数妨害装置の不具合、および赤外線妨害装置の不具合など、主にウォームスタートに関連する複数のシステム・アドバイザリが表示された (タブ TI-14 ~ IL17) 。また、地上給・排油パネルの不具合により、搭乗員は燃料タンクを危うく過充填するところであった (タブ II-17)。これらの不具合の一部はミッション・コンピューターの不具合に関連していたが、搭乗員に注意の分散を引き起こした (タブ DD-47 および II-14 ~ IL-17)。事故機の搭乗員が機内通話システムで通話しながらこれらすべての問題に対処している間、岩国海兵隊航空交通管制センターの航空交通管制 (ATC) 周波数にも大量の無線通信があった (タブ IL13 ~ 1I-28) 。両機とも燃料補給が完了すると、編隊はF誘導路を経由して滑走路に向かって地上滑走を開始した (タブ DD-47、II-25 から 1I-29)。岩国海兵隊航空基地の地上にいる間、そして任務の残り期間中、事故機の搭乗員はICSと無線の両方で会話を続けていた(タブDD-47、11-22、1I-25、II-38、II-44、およびTL-62)。

(3) 第3段階: 岩国海兵隊航空基地から屋久島への飛行

1309、編隊はA誘導路から南行きに、ナセル角75度の短距離離陸で離陸した(タブDD-47、1I-28から11-29)。編隊が離陸した後、予備機のガンダム23とその搭乗員は、1時間遅れで追従した (タブ DD-45 および DD-47)。編隊は、巡航時の平均海面高度8,000フィートまで上昇し、後方操作員は情報放送受信機の故障探求を開始した (タブ AA-3、DD-45 および DD 47-48、および TI-41 から II-44) 。離陸から約40分後、宮崎国際空港付近で、CDUに左側「PRGB CHIP BURN」緊急アドバイザリが表示された(このアドバイザリに関連する警報音はない)(タブDD-47およびTI-46)。機上整備員は、アクナリッジ操作を適切に実施し、CDU上のアドバイザリをクリアした (タブ 1I-47)。23秒後、2回目の左側「PRGB CHIP BURN」アドバイザリが表示され、機上整備員 によって再度アクナリッジ操作が実行された (タブ DD-47 ~ DD-48、および 11-46)。
2回目のCHIP BURNアドバイザリ表示から3分間、機長は、搭乗員とアドバイザリについてではなく、新しい飛行経路について他の演習参加者と調整を続けた (タブ TL-46)。新しい飛行経路では、ティルトローター機の空有給油のタイミングを容易にするために、編隊はブリーフィングされたルートを外れて西方向に進んだ (タブ DD-47)。その後、機長は左側の「PRGB CHIP BURN」アドバイザリを口頭で確認し、整備情報のページをチェックして、2回のチップ・バーンが発生していたことを確認した(タブ II-47)。機上整備員はPRGBチップのチェックリストを確認し、チップ・バーンの進行状況について搭乗員に説明した (タブ -47 から -48)。機長は、機上整備員の情報を確認し、搭乗員に飛行中にチップ・バーンを経験したことがある者がいるかどうかを確認した。チップバーンに関するアドバイザリを実際に見た経験を有していたのは機長と後方操作員のみであった (タブ II-48)。副操縦士は現時点での対処基準の適用について質問し、機長はまだそれには至っていないと述べた (タブ II-48)。機上整備員は搭乗員に対し、チェックリストの監視および確認を継続することを通報し、PRGBチップ発生後の2次的兆候のチェックリストを読み上げながら確認した (表 11-47 から 11-49) 。その後、後方操作員と機上整備員は、情報放送受信機の故障探求について議論を続けた (タブ II-49)。

副操縦士は、最も近い迂回飛行場のLOSツール(line of sight)を使用するよう機長に提案した (タブ I – 48)。LOS ツールは、MFD上の航空機シンボルと指定された位置の間に線を描き、デュアル・デジタル・マップ・システムに距離と方位をリアルタイムで表示する (タブ DD-48) 。機長はこの提案を拒否し、最寄りの空港までの相対位置を自動的に提供する電子フライトバッグ (EFB) の ForeFlightアプリケーションを使用することを選択した (タブ BB-52 および 11-48)。最小滑走路長を有する、最も近い空港にフィルターを設定できる。第21特殊作戦飛行隊では、計画係数として 4,000 フィートを使用していた (タブ V-35.5)。搭乗員は、ForeFlightの設定をより詳細な航空チャートに変更したり、コックピットのマルチファンクション・ディスプレイでチャートのスケールを変更して他の選択肢を検索したりすることはなかった (タブ DD-48)。
2 回目のチップバーン・アドバイザリから12 分後、編隊が日本本土の南端に近づいたとき、機上整備員は3 回目の左側「PRGB CHIP BURN」アドバイザリが表示されたことを報告し、機長は口頭でこれを了解した (タブ DD-48 および IL51)。機上整備員は、取扱書の指導要領に従うと、現在「努めて速やかに着陸」の対処基準に該当しているが、2次的な不具合の兆候は確認できないと報告した (タブ II-51)。機長は、3回目のチップバーン・アドバイザリの発生時刻をマークし、搭乗員に頻度が増加していないか確認し、2次的な不具合の兆候がないか監視を継続するように指示した (表 11-52)。搭乗員たちは、最終的には最も近い飛行場は沖縄になるだろうと話し合ったが、その時点では事故機はまだ沖縄から約300マイル離れており、その経路はすべて公海上であった (タブ DD-48 および IL-48)。搭乗員たちは、現在位置から約10マイル後方の、実際には最も近い飛行場である鹿屋空軍基地について議論することはなかった (タブ Z-27 および DD-48)。機長は、編隊間周波数でガンダム21に無線通話し、「PRGB CHIP BURN」アドバイザリが3回表示されたが、任務を続行する予定であることを伝えた(タブ II-52)。その無線通信中、3回目の左側「PRGB CHIP BURN」アドバイザリから5分後に、4回目の左側「PRGB CHIP BURN」アドバイザリが表示された (タブ IL-32)。情報放送受信機は、情報を受け取っていたが、航空機のミッション・システムがまだ動作していなかったため、機上整備員は情報放送受信機の接続の故障探求を行っている後方操作員を支援するために座席を離れた (タブ DD-48 および II-54)。

4回目の左側「PRGB CHIP BURN」アドバイザリが表示された後、搭乗員たちはKC-130Jの代替電子ランデブー機器を点検し、情報放送受信機の接続を修正し、MFF(Military Free Fall)の場所から嘉手納基地までの所要時間を話し合い、チップ・バーンおよびチップの経験について話し合った(タブ II-52から1I-55)。4回目の「PRGB CHIP BURN」アドバイザリから10分後、5回目の左側「PRGB CHIP BURN」アドバイザリが表示され、その後、機上整備員はコックピットの座席に戻った (タブ IL-52 から II-55)。5回目のチップ・バーン・アドバイザリから3分後、マスター警告音とともに「L PRGB CHIPS」コーションが表示された (タブ II-55)。機長は、機上整備員とともに状況を確認し、現時点で「速やかに着陸」という対処基準に該当することを確認した後、ガンダム21に「チップが発生した」と無線で伝えた(タブ II- 55)。その後、機長は、操縦を副操縦士に引き継ぎ、最も近い計画された目的地外着陸地である屋久島に向かって 111 度の方向転換を指示した (タブ IL56)。機上整備員は、PRGB チップのチェックリストを参照して2次的な不具合の兆候の有無を確認し、屋久島空港の無線周波数への変更を要求した (タブ HL-56) 。副操縦士は、屋久島空港上空に到着するまで約11分あることを口頭で伝え、機長が無線連絡を行う間、航空機の操縦を続けると述べた (タブ II-56 から IL-57)。ガンダム21は、航空機間無線で相互支援が必要かどうか尋ねたが、機長は任務を続行するよう指示した(タブ II-56)。その後、機長は副指揮官に無線で連絡して任務指揮の責任を移譲し、続いてガンダム23に屋久島空港に整備チームを空輸して自分たちと合流させるように指示した (タブ IL-S8) 。
この時点では、黒島への垂直着陸や、図11(表Z-29)に示されている薩摩硫黄島空港への滑走着陸など、より近い目的地外着陸地の選択肢が存在していた。「PRGB CHIPS」コーションが表示されてから4分後、そういった目的地外着陸地の選択肢についてさらに議論することなく、搭乗員は屋久島空港の航空機交通パターンに進入するため、平均海面高度1,000フィートまで徐々に降下し始めた (タブ DD-49 および 1I-58)。

屋久島空港には管制塔がないため、鹿児島空港から遠隔で飛行情報サービスを受信する(タブBB-110~BB-111)。航空管制運航情報官は、運航を支援するための飛行情報を提供するのみで、パイロットに離着陸の許可は提供しない (タブ BB-111 および EE-113)。
事故機が屋久島に接近したとき、機長は屋久島無線局(118.65MHz)で着陸に向けて接近中であると送信したが、応答がなかった(表11-60)。さらに接近すると、屋久島無線局の周波数から、ランウェイ32で離陸のために地上滑走中の航空機があるという無線通信が聞こえた(タブEE-112からEE-113、およびII-61)。屋久島無線局との最初の交信時に、機長が滑走路32への着陸を要請したとき、航空管制運航情報官は「緊急事態」かどうか尋ねた(タブEE-112および[1-62])。議員は「そのとおり」と答えた(タブ IL-62)。注目すべきは、この事故の一連の出来事の中で、搭乗員たちの会話や外部との無線通話で「緊急」という言葉が使われたのはこれが初めてだったことである (タブ II-62)。航空管制運航情報官は、滑走路上に航空機があるため待機するよう指示した (タブ III-62)。事故機の搭乗員は待機を求める無線の指示を聞き取ることができなかったが、機長は副操縦士に離陸する航空機があるため、ランウェイ32の進入端付近で待機するよう指示した (タブ II-62)。その後、事故機のCDUに「CHIP DETECTOR FAIL」アドバイザリが表示され、チップ・デティクターに故障が発生したことが示された (タブ II-63)。機長は、これまでの警報はチップ・デティクターの故障によるエラーであると考えられるので、もう心配する必要はないとコメントした (タブ DD-49 および 11-63)。次に、機長 は 副操縦士 に「もう一度大きく右回りに周回して着陸態勢に入る」ように指示し、その後、機上整備員は「L PRGB CHIPS」アドバイザリがまだ表示されていることを確認して発唱し、機長もそれを了解した (タブ IL-63)。その後すぐに、民間機が離陸滑走を開始すると、副操縦士は事故機を滑走路に向けて旋回させ、平均海面高度1,000フィートの場周高度から通常進入を開始した (タブ DD-49 および IL63)。

g. 墜落

着陸前点検を実施中、副操縦士は地上への「エアランド」アプローチ (つまりヘリコプターのように垂直に着陸する) を行うと説明した(タブDD-49、11-62)。着陸2分前に、副操縦士は航空機の速度を落とし、着陸に備えてナセルを上向きに変更した (タブ DD-49)。

データの最後の6秒間に、KVADRによって連続した連鎖障害が記録された (タブ DD-49) 。コックピット・マイクからの周囲の録音では、エンジン音が急上昇し、その後にマスター・コーション音が発生した (タブ DD-49)。左側PRGBオイル圧力が急激に低下し、「L PRGB OIL PRESS LOW」のコーションが表示され、続いて「ドライブシャフト故障、ドライブシャフト」という音声警報が流れた (タブ DD-49 および 11-64)。事故機は、ランウェイ32の進入端から約0.5マイルの地点を高度785フィート、対地速度106ノットで飛行しており、ナセル角は66度、フラップ角は自動に設定され、着陸装置は格納されていた (図 15、タブ DD-49 ~ DD-50)。着陸前点検は、降着装置の伸長を除くすべての手順が完了していた (タブ II-58)。最初の左側「PRGB CHIP BURN」アドバイザリが表示されてから49分後の現地時間14:39:53、事故機は、急激に左にロールし、バンク角が90度を超過した (タブ DD-50)。

KVADR の最後の記録は、下の図16に示すように、現地時間14:39:53であった (タブ Z-9) 。スラスト・コントロール・レバーは、最大出力状態の最前方であった (タブ DD-50)。サイクリックは、中心から1.6インチ前方、右いっぱいにあり、ラダーは1.3インチ右にあった (タブ DD-50)。事故機は、逆さまになった後も左にロールし続け、左側のナセルが炎上し、何らかの物体が分離して航空機の飛行経路の右側の海面に落下した (タブ DD-50)。現地時間14:40事故機はレーダーから消失した(タブEE-9)。事故機は、機首を下げて左にロールしながら海面に墜落した (タブ DD- 50)。

h. 脱出および搭乗員の飛行装備(翻訳省略)
i. 捜索救助(翻訳省略)
j. 遺体の回収(翻訳省略)

5. 整備(翻訳省略)

6. 機体(翻訳省略)

7. 天気(翻訳省略)
8. 搭乗員の資格(翻訳省略)
9. 医学(翻訳省略)
10. 運用及び監督(翻訳省略)
11. 人的要因(翻訳省略)
12. 管理指令および出版物(翻訳省略)

2024年5月30日

マイケル・E・コンリー
アメリカ空軍准将
事故調査委員会委員長

アメリカ空軍航空機事故調査委員会報告書(CV-22B, 機番:10-0054)

                               

出典:Official United States Air Force Website 2024年08月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

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1件のコメント

  1. 管理人 より:

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