航空事故発生状況:AH-64E エンジン・インレット・カバーの外し忘れ

AH-64EアパッチによるIERW(Initial Entry Rotary Wing, 回転翼初級課程)訓練飛行のためのエンジン始動中、異物によってエンジンのエア・フローが妨げられ、コールド・セクションの交換が必要となった。
発生の経緯
当該AH-64Eアパッチの任務は、IERW訓練飛行の実施であった。
No.2エンジンのエンジン・ヘルス・インジケーター・テスト中、教官操縦士は、通常より高いTGT(Turbine Gas Temperature, タービン・ガス温度)と電力のサージを認知した。搭乗員は機体をシャットダウンし、航空機整備記録に記入し、予備機に移動した。予備機で離陸するためにタキシング中、搭乗員はタワーから駐機場に戻り、部隊の航空安全担当士官に連絡するように指示された。
事故発生時の気象状況は、快晴、風速5ノット、風向200度、気温21℃、高度計設定値は29.91であった。
事故機のトラブルシューティングを準備していた整備員は、第2エンジンのインレット・カバーの一部がエンジンに吸い込まれているのを発見した。エンジン・マニュアルによれば、エンジンのエア・フローが阻害された場合には、コールド・セクション・モジュールまたはエンジンを交換する必要がある。
搭乗員の練度
前席に着座していた教官操縦士は、総飛行時間4,300時間、うちAH-64での飛行時間は1,850時間であった。
副操縦士は、回転翼機での飛行時間が100時間、うちAH-64Eでの飛行時間は27時間であった。
考察
エンジン・インレット・カバーが関与した事故の発生は、2024年度では5件であったが、今年度に入ってからはすでに4件目である。これらの事故はそれぞれ約50万ドルの費用をもたらし、他の振り向けることができたはずの整備工数を消費し、即応性に影響を与えている。航空機を操縦または整備するすべての者は、タイダウン・ロープ、カバー、接地ケーブルに触るたびに、その使用可能状態を確認する必要がある。それらの使用可能状態に疑義がある場合は、それを記録する必要がある。2020年度から現在までに、351件のクラスAからEの地上取り扱いおよび整備に関する事故が発生しており、そのうち1件を除いたすべてがヒューマン・エラーに起因するものであった。これらは、陸軍航空部隊で発生する事故のうち、最も予防可能なものである。飛行前には、両方の搭乗員が反対方向にウォーク・アラウンドを行い、カバーが取り外され、パネルが閉じられ、エンジン・カウリングが固定されていることを確認すべきである。また、訓練中のパイロットが機内チェックを開始している間に教官操縦士がウォーク・アラウンドを行うことも、この種の事故を減少させる効果が期待できる。

飛行前点検に関する記事へのリンク(訳者注:アクセスには米陸軍発行のパスワードが必要です): https://safety.army.mil/MEDIA/Video-Library/Video-Player/ctl/NoPermission/mid/509/VideoId/55?return=https://safety.army.mil/ON-DUTY/Aviation
出典:FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness Center 2025年06月
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。
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2件のコメント
表題を「AH-64E エンジン・エア・フローの阻害」から「AH-64E エンジン・インレット・カバーの外し忘れ」に変更しました。
地上試運転中に不具合が発生したら、すぐに予備機に移動して、訓練を続行しちゃうんですね。
そして、それがヒューマン・エラーだったら呼び戻される。
予備機でもやらかしているかも知れませんからね。
文化の違いを感じます。