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陸軍航空の情報センター

市街地戦における信頼の構築-現代の戦闘ヘリ操縦士を育てるために

大尉 アンソニー・J・ディナロ

上級准尉5等マイケル・A・コルサロ(航空科職種の主任上級准尉)が最終飛行に臨んだAH-64アパッチ。米陸軍撮影(ブリタニー・トランブル)

序文

大規模戦闘作戦(Large-Scale Combat Operations, LSCO)へと移行するなか、人口密集地帯における複雑な現代戦において作戦を遂行する航空搭乗員の訓練・評価方法に変革が求められている。市街地戦闘はAH-64アパッチの搭乗員にとって最も過酷な作戦環境(Operational Environment, OE)の一つだが、現行の訓練体系では、それに固有の困難に対応できる操縦士の育成が不十分である。この環境下で戦闘を行う搭乗員には、任務を完遂するための迅速かつ的確な状況判断、精密兵器の運用、そして地上部隊との連携が求められる。こうした技量への需要は、対反乱作戦(counterinsurgency)に従事した少数の経験豊富な操縦士によって辛うじて満たされているのが現状であり、これが訓練要求として明示されない限り、近い将来にそれを満たすことができなくなるであろう。

AH-64アパッチの搭乗員が現代および将来の戦闘の複雑性に完全に備えるためには、市街地作戦(Urban Operations, UO)を陸軍航空の中核的な訓練要求として制度化することが不可欠である。市街地作戦を搭乗員訓練マニュアル(Aircrew Training Manual, ATM)のタスクに指定することで、現在軽視されがちな人口密集地における任務成功と地上兵士の保護に不可欠な三つの要素――搭乗員連携に基づく射撃準備、精密兵器の運用、地上部隊との効果的な統合――を正式な訓練要求として制度化できる。

現行訓練の限界

アパッチ操縦士の練度は、市街地戦闘を遂行する地上部隊からの信頼を得られる水準に達していない。この技量の空白が存在する原因は、操縦士が基礎的な射撃技術のみで評価されていることにある。射撃訓練の最低要件は、各兵器システムの様々な距離・飛行形態からの運用だけで構成されている。基礎的な射撃技術の評価も不可欠ではあるが、上級射撃訓練でも搭乗員の潜在能力を限界まで発揮させるに至っていないのは問題である。

例えば、プロ・テニス選手のことを考えてみよう。トップクラスの競技者は、ボールが来るたびにスイングのフォームを意識しているわけではない。高い能力を有する相手との戦いだけに集中しているのである。スイングは筋肉記憶を通じて自然に行われるので、ポジショニングやボールの配球といった試合の繊細な要素に意識を向けることができる。

プロの戦闘ヘリコプター操縦士も、プロの競技者と同様の境地で実戦に臨むべきである。明日の戦争においては、コックピットで正しいボタンを正しい順番に押すことだけで基準を満たした攻撃操縦士では勝ち残れない。射撃訓練は、最も困難な作戦環境でほぼ対等な脅威に対峙する際の複雑性に対処できるよう、搭乗員を準備させるものでなければならない。現行の射撃訓練はこの要求に応えるだけの深みを欠いているが、市街地作戦をATMタスクとして追加することで、大規模戦闘作戦においてもAH-64Eの能力を最大限に発揮する自信を搭乗員に付与できる。

適切な段階での訓練実施

提案する市街地作戦ATMタスクは、人口密集地帯での兵器運用に必要な教育・訓練を直接的な対象とするものである。市街地作戦に関連する複雑性に対して不足している訓練を考慮すると、部隊・大隊単位ではなく搭乗員レベルを対象とするATMに重点を置くべきである。市街地作戦は必須課目である2000シリーズ・タスクに分類され、陸軍航空任務遂行のための基盤的な要素とされている(Department of the Army, 2022, p. 2-1)。このタスクの目的は、人口密集地帯での巻き添え被害または友軍誤射のリスクを最小化するため、レディネス・レベル1(Readiness Level 1)の操縦士に求められる最低習熟度を引き上げることである。このタスクは、兵器運用・交戦技術・任務計画に関する高度な知識を要求する。操縦士はシミュレーターと実機での訓練を通じて、この知識を反射的に発揮できる能力として身に付けていく。

LSCOの訓練モデルに適応しながら市街地作戦の習熟度を高めるには、このタスクをチーム・レベル以下のATM習熟訓練において重視する必要がある。大規模・長距離機動はLSCOに備えるうえで有益だが、特に密集した市街地が目標の周囲に広がる場合、目標上での行動に向けて戦闘ヘリ搭乗員を十分に訓練することはできない。したがって、アパッチ部隊はチーム・レベル以下のATM習熟訓練において市街地作戦の習熟度を重点的に育成しなければならない。この基盤は、アパッチの搭乗員がLSCO戦闘における自らの役割を習得し、最終的には上位部隊規模のより複雑な訓練演習での成功に向けた条件を整えるために必要である。

兵器運用と交戦技術

条件基準手順評価方法
昼夜を問わない市街地環境。搭乗員は任務目標のブリーフィングを受け、完全な兵装を搭載している。目標は、垂直方向の障害物・民間照明・潜在的な巻き添え被害が懸念される複雑な市街地地形内に位置している。交戦は、監視・統制機またはシミュレーターによってシナリオ化または動的に生成される。1. 目標・環境・所望効果に応じて、適切な弾薬を選択して運用する。適切な兵器システムの選択座学/シミュレーター
適切な弾薬種別の選択座学/シミュレーター
ミサイル弾道の選択座学/シミュレーター
ミサイル遅延信管の設定座学/シミュレーター
2. 迅速に目標を識別し、交戦する。射撃要領(ホバー射撃・ランニング射撃・ダイビング射撃)の実施シミュレーター/実機
巻き添え被害を最小化し、目標の終末弾道効果を達成するための機体操縦シミュレーター/実機
友軍・敵軍・民間非戦闘員に対する状況認識の維持シミュレーター/実機
敵および民間人の至近で友軍地上部隊が機動している市街地環境。搭乗員は任務目標と統制手段(統制線・目標基準点〔Target Reference Point, TRP〕・グリッド基準図〔Gridded Reference Guide, GRG〕等)のブリーフィングを受けている。統合末端攻撃統制官(Joint Terminal Attack Controller, JTAC)または地上管制員との通信が確立されている。搭乗員は完全な兵装を搭載し、動的な目標引き継ぎを通じた地上機動支援を任務とする。3. 機動する地上部隊に対する状況認識を維持する。被支援部隊との事前任務計画座学
TRP・統制線・GRGを用いた戦場追跡実機
5ライン航空機射撃要求(5-line attack aviation Call for Fire)による目標引き継ぎの実施実機
4. 地上の状況の変化および不完全・時間的緊迫性を伴う情報に基づき、火力を修正する。レーザー照準上の制約(ポジウム効果・エントラップメント等)の識別と対処シミュレーター/実機
弾薬オフセットのためのシフト・コールド(shift cold)の実施シミュレーター/実機
許可を得たうえでの安全離隔距離(danger close)内射撃の実施シミュレーター/実機

2000シリーズATMタスク案:市街地作戦の実施(著者提供)

垂直方向の障害物、民間照明による暗視装置の制限、そして巻き添え被害が懸念される場所への敵の機動により、搭乗員が目標識別から兵器運用まで使える時間は限られている(Army et al., 2022, p. 47)。こうした複雑性の増大により、単に交戦距離を暗記するだけでなく、機体の能力をより深く理解することが求められる。搭乗員は目標に対して特定の所望効果を得るため、弾薬種別を適切に計画し、迅速に運用しなければならない。市街地での兵器運用は、まず座学で習得し、シミュレーターで反復したうえで、実機において評価されるべきである。2025年のCENTCOM担当地域への派遣に先立ち、第2-17空中騎兵飛行隊アルファ飛行隊はこの形式による市街地訓練計画を効果的に実施した。座学では教官が市街地作戦の計画立案プロセスを教授し、任務に適した兵装搭載構成を選択することの重要性を強調した。シミュレーターでは、ミサイルの弾道・遅延設定・弾頭種別の選択が問われる複雑な交戦場面に搭乗員が対処した。訓練の総仕上げとして、近隣の小さな市街地上空でドライ射撃訓練(実弾を使用せず、目標識別から射撃手順までを実際と同様に実施する模擬訓練)が実施された。監視・統制機が、2機編成の戦闘ヘリチーム(Attack Weapons Team, AWT)に10種のシナリオ交戦を付与した。このシナリオでは、飛行要領・目標の種類・目標位置・要求弾薬をあらかじめ指定する通常の付与とは異なり、これらを指定しない交戦設定が採用された。AWTは目標を迅速に識別し、最適な兵器と射撃要領を決定し、巻き添え被害を考慮しながら火力を発揮すべく効果的に機体を操縦するという課題に取り組んだ(Troop Alpha, 2-17 Air Cavalry Squadron, 2024)。

任務計画・実行における地上部隊との統合

市街地環境では友軍・敵軍・民間人が混在するため、地上部隊と航空火力との間により高度で詳細な統合が求められる(Army et al., 2022, p. 39)。友軍誤射を防ぐためには、地上部隊との合同訓練が不可欠である。搭乗員は、近接戦闘中の地上部隊から不完全または不正確な情報が中継される状況での迅速な目標引き継ぎに備えていなければならない。戦闘ヘリ搭乗員は、安全かつ効果的に火力を発揮するため、地上の状況を正確に把握しなければならない。急速に展開する市街地戦闘での情報収集は、戦闘ヘリ搭乗員が地上部隊を確実に支援するために習得すべき技術である。

人口密集地帯での状況認識を最大化するため、操縦士と地上部隊は共通の統制手段を用いた合同訓練を行う必要がある。統制線・目標基準点(TRP)・グリッド基準図(GRG)は、作戦が市街地を展開していく際に最も効果的な統制手段である(Army et al., 2022, p. 40)。これらの統制手段の活用は容易ではなく、市街地での状況認識を習得するには詳細な計画と反復実施が不可欠である。航空部隊は、これらの技量を継続的に磨くため、市街地作戦ATMタスクの一環として地上部隊と共同で任務を計画する必要がある。さらに、操縦士は訓練・作戦任務の前に被支援部隊と直接調整して作戦規程を確立する経験を積まなければならない。

第5特殊部隊グループ(空挺)を支援するCENTCOM任務に備えるため、第2-17空中騎兵飛行隊アルファ飛行隊は入念な地上部隊統合訓練プロセスを実施した。まず飛行隊は、統合末端攻撃統制官(JTAC)から座学を受け、錯雑地域での交戦プロセスと空域上の考慮事項を理解した。次いで搭乗員は、精密な言語を用いた目標誘導によりGRG(グリッド基準図)の活用方法を習得した。続いて、JTACがケンタッキー州フォート・ノックスのヤノ・デジタル空地統合射場で飛行隊に合流し、射撃訓練を実施中の航空機への目標誘導を若手管制員が反復した。訓練の総仕上げとして、地上部隊が市街地を想定した2つの模擬村落に展開しつつ実弾射撃訓練が実施された。作戦全体を通じて随伴JTACがAWTを管制し、搭乗員は実弾射撃中も機動する友軍地上部隊への状況認識を維持することが求められた。この種の訓練は、複雑な作戦環境で地上部隊を支援する戦闘ヘリ搭乗員の自信と確信を醸成するうえで不可欠である。

結論

市街地作戦は陸軍航空にとって最も複雑で過酷な環境の一つであり、アパッチ搭乗員訓練の基盤的要素とならなければならない。市街地作戦をATMタスクとして制度化することで、攻撃操縦士が搭乗員連携・兵器運用・地上部隊統合に必要な習熟度を確実に身に付けることができる。過去の市街地紛争で戦った上級操縦士の経験は、教義として正式に体系化され、次世代の操縦士へと受け継がれなければならない。新たな市街地作戦ATMタスクの具体的な内容は、訓練ドクトリン総局の飛行訓練部門が策定すべきである。これにより市街地作戦訓練の標準的なアプローチが確立されるのみならず、射撃場インフラへの現実的な投資が促進され、地上部隊との日常的な統合が強化される。現在進行中の陸軍航空の変革と戦闘ヘリ大隊の再編は、これらの変化を部隊に組み込む絶好の機会であり、航空科がいかなる作戦環境においても地上戦闘を支援できる適応力と信頼性を備えた職種として存続することを保証する。

著者プロフィール
大尉アンソニー・ディナロは現在、アラバマ州フォート・ラッカーの航空大尉上級課程(Aviation Captain’s Career Course)の学生である。前職はケンタッキー州フォート・キャンベルの第2-17空中騎兵飛行隊のAH-64E操縦士である。ディナロ大尉はアメリカ合衆国陸軍士官学校を宇宙科学の学位を得て卒業し、任官した。

参考文献
Army, Marine Corps, Navy, & Air Force. (2022, February). Multi-Service tactics, techniques, and procedures for urban operations (Army Techniques Publication 3-06.1). https://armypubs.army.mil/epubs/DR_pubs/DR_a/ARN34839-ATP_3-06.1-000-WEB-1.pdf

Department of the Army. (2022, April 14). Commander’s aviation training and standardization program (Training Circular 3-04.11). https://armypubs.army.mil/epubs/DR_pubs/DR_a/ARN35119-TC_3-04.11-000-WEB-1.pdf

Troop Alpha, 2-17 Air Cavalry Squadron. (April 2024). Urban engagement training.


訳者注
レディネス・レベル(Readiness Level):米陸軍におけるパイロットの訓練練度の段階。3段階に区分されており、レディネス・レベル3は操縦技術は修得しているが戦術的訓練は実施していないレベル、その上のレディネス・レベル2は特定の機種について操縦技術および戦術を修得しているレベル、最上位のレディネス・レベル1は派遣を予定している地域の環境に適合した訓練を終了しているレベルである。

統制線(Phase Line):地図上に設定される直線状の統制線。部隊の前進・移動を調整し、航空機と地上部隊が互いの位置関係を共通認識するために使用する。「統制線ブルーを通過した友軍を支援せよ」といった形で運用される。

目標基準点(Target Reference Point, TRP):目標の位置を迅速に伝達するために事前に設定された基準点。「TRP3から北へ100メートル」のように起点として目標位置を伝えることで、複雑な座標の読み上げを省略できる。市街地では建物・交差点・橋等がTRPとして設定される。

グリッド基準図(Gridded Reference Guide, GRG):市街地の航空写真や地図にグリッド(格子)を重ねた図。各グリッドに番号・記号を付与することで、「グリッドB3の建物」といった簡潔な表現で目標位置を特定・伝達できる。航空機と地上部隊が同一のGRGを使用することで共通の状況認識を維持する。

ポジウム効果(podium effect):目標が台座・土手・建物の縁など、周囲より高くなった地形や構造物の上に位置している場合、レーザー・スポットが目標の手前の垂直面に当たり、ミサイルが目標に到達する前に地面や壁面に当たってしまう現象。市街地の建物屋上や土塁上の目標に対して生じやすい。

エントラップメント(entrapment):レーザー・スポットが谷地形・建物間の狭隘な空間・窪地などに「捕捉」され、ミサイルが谷底や壁面に引き込まれてしまう現象。市街地のビル間の隙間や路地に面した目標に対して生じやすい。

シフト・コールド(shift cold):レーザー誘導ミサイル(AGM-114ヘルファイア等)の運用技術の一つ。通常、レーザー誘導ミサイルはレーザー・スポットが照射されている点に向かって飛翔するが、シフト・コールドとは発射後にレーザー・スポットを意図的に目標からずらし、着弾点をオフセット(偏位)させる操作をいう。巻き添え被害の回避、建物の特定部位への選択的攻撃、ポジウム効果等による直接照準困難時の補正など、市街地作戦において特に重要な技術である。「コールド」とはレーザーを当てていない場所を意味し、スポットを目標から離す方向に操作することを指す。

安全離隔距離(danger close):友軍部隊の至近に対して火力支援を実施することをいう。米軍の基準では、友軍部隊と目標との距離がロケット弾・爆弾等で600メートル以内に収まる場合を安全離隔距離内と判定する。精密誘導兵器はより近距離まで対応可能だが、機種・弾薬・条件による。友軍への誤射リスクが極めて高いため、通常の手順に加えて指揮官の明示的な承認が必要となる。市街地では友軍・民間人・敵が混在するため安全離隔距離内での射撃が発生する蓋然性が高く、その訓練は市街地作戦において特に重要である。

訳者コメント:本記事は、AH-64アパッチ搭乗員を対象とした市街地作戦訓練の制度化を訴える提言です。陸上自衛隊もAH-64Dを運用しており、市街地における攻撃ヘリの火力支援という課題は共通しています。訳語については、「クルー」を「搭乗員」に、「ATM continuation training」を「ATM習熟訓練」と訳しました。また、ポジウム効果・エントラップメント・シフト・コールド・安全離隔距離(danger close)・統制線(phase line)・目標基準点(TRP)・グリッド基準図(GRG)など市街地作戦特有の用語については、巻末の訳者注に解説を付しています。
                               

出典:TRAINING THE MODERN ATTACK AVIATOR, AVIATION DIGEST, Army Aviation Center of Excellence 2026年03月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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