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陸軍航空の情報センター

陸軍航空の75年間

航空職種最先任上級曹長 最先任上級曹長 グレゴリー・M・チェンバーズ

陸軍航空の歴史は、南北戦争まで遡ることができる。南軍と北軍の双方が、気球を使用して、砲撃の着弾観測を行ったのである。しかし、陸軍航空が正式に誕生したのは、1942年、陸軍長官が砲兵部隊に航空観測部隊の設立を命じ、小規模の航空科部隊が創設された時のことであった。

OH-13
朝鮮戦争の間、MEDVAC(medical evacuation, 患者後送)および偵察任務に用いられたOH-13スーは、その後、陸軍航空学校で計器飛行訓練として用いられた。写真:米陸軍

75年後の今日、陸軍航空は、近代陸軍における独立した機動戦闘力へと成長を遂げている。地上部隊が任務を遂行するために極めて重要な能力を築き上げてきたのは、優れた装備に支えられ、先見の明を持った指導者たちである。しかし、それ以上に重要なのは、専門的技能を有する航空職種の兵士たちの貢献である。本日、我々は、この職種をここまで育て上げてくれた、すべての航空職種戦士たちと指導者たちに対し、感謝の念を捧げた。

血 統

現在所属する航空科部隊の血統について、学んだことがない者には、それについて少し勉強する時間を取ることを強く勧める。航空職種再編成施策の時代にいる我々は、部隊の編成を見直し、新たな部隊の設立に懸命に取り組んでいる。自分の部隊が有している歴史を知ることは、少なからず驚きを伴うものとなるであろう。ベトナム戦争中には、何百という航空科部隊が設立された。今日の航空科部隊のほとんどは、ベトナム戦争に起源を有している。

既に承知のことかも知れないが、航空科部隊は、かつて輸送職種の一部であった。しかし、1983年4月12日、公式に航空職種が設立されると、1984年にアラバマ州フォート・ラッカーに航空将校基本課程および上級課程が設立されたのを皮切りに、重要な施策が実行に移されるようになった。1986年には、すべての航空管制機能およびその訓練が航空職種で行われるようになり、1987年には、最初の下士官大学がフォート・ラッカーに設立された。加えて、1988年には、USAALS(米陸軍航空兵站学校)が正式に航空職種の配下となり、今日では、それに代わって、第128航空旅団が航空整備のすべてのMOS(特技)の教育を担っている。我々の若き航空整備兵士たちを教育しているのは、旅団の隷下部隊である第1-210および第2-210航空大隊である。これらの部隊の血統を辿ると、どちらの部隊もベトナム戦争において、顕著な功績を上げていることが分かる。

AH-64E
AH-64E ガーディアン

能力の向上

過去75年間を振り返ると、回転翼機の能力向上には、目を見張るものがある。1940年代の朝鮮戦争では、H-13スーのようなヘリコプターが負傷者を戦場から後送するために用いられていた。今日では、高度に洗練されたMEDVAC専用機であるHH-60ブラック・ホークが、戦場からの患者後送に用いられている。第2次世界大戦中には、L-5センチネルが砲撃の修正、上方の収集等の任務に使用されていた。今日、航空職種は、高度に先進的なAH-64Eアパッチを有している。この武装ヘリコプターは、偵察能力を有するのみではなく、その偵察結果から情報を収集することも可能である。将来に向けたテクノロジーの成熟に伴い、航空職種は、FVL(将来型回転翼機)のようなヘリコプターなど、将来の戦場において勝利を得るために必要な能力に焦点を当ててきている。南北戦争からベトナム戦争までの進展や、1942年の陸軍航空誕生時点の状況を考えると、ひとつの疑問が沸く。25年後の2042年には、どんなことになるのであろう。

今後の発展

航空職種の創設時およびその後の航空職種指導者たちが職種に残してくれたものを継続するための最善の方法は、彼らの功績を維持・構築することである。フォート・ラッカーの閲兵場は、ハミルトン・ハウズ大将の名前にちなんで名付けられている。ハウズ大将の功績は、1960年に陸軍航空要求事項検討委員会の議長となり、その委員会の結論を米国大統領に直接勧告したことである。このことが、空中機動、患者後送、航空攻撃という陸軍における航空職種の役割を確立させた。その結果、第1騎兵師団(空中機動)が設立され、ベトナムに派遣されることとなったのである。今日の戦闘航空旅団の航空戦力としての戦い方は、第1騎兵師団から得られた教訓に、その起源を遡ることができる。我々が伝統を守り、今日の航空兵士を訓練し、将来の戦闘に備えるに当たって、ハウズ大将のような偉大な指導者たちのことを忘れてはならない。

最後に、我々の職種が重要な歴史を持っていることを再確認したいと思う。航空職種は、陸軍の他の職種に比べると歴史の浅い職種であるが、その歴史には、英雄、献身、プロ意識および革新が溢れている。さらに重要なのは、75年間にわたり、地上部隊の指揮官の目標達成に寄与する専門的戦力であり続けたということである。

陸軍航空誕生、おめでとう!もう75年間、成功を継続しよう!

Above the Best!(最善以上を目指せ!) This We’ll Defend!(これを我らは守る!)

CSM Chambers:gregory.m.chambers.mil@mail.mil

 上級曹長 グレゴリー・M・チェンバーズは、航空職種最先任上級曹長兼アラバマ州フォートラッカー米陸軍航空センター最先任上級曹長である。

           

出典:ARMY AVIATION, Army Aviation Association of America 2017年04月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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1件のコメント

  1. 管理人 より:

    私が現役の時にお世話になったUSAALS(米陸軍航空兵站学校)は、2012年に第128航空旅団へと変わっていました。(知らなかった!)ちなみに、米陸軍航空センターもthe U.S. Army Aviation Center of Excellence(米陸軍航空教育研究センター)へと変わっています。どちらも場所は、変わっていないようです。