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陸軍航空の情報センター


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LSCOにおける患者後送

その課題を解決し、前進するために

大佐スティーブン・A・バーンズ
軍属リック・ストックハウゼン

第39歩兵旅団戦闘チームの隊員と第82航空連隊第3大隊C中隊のMEDEVAC用UH-60ブラック・ホーク

アメリカ陸軍は、将来の作戦環境における軍事紛争に関し、新たな課題に直面している。対等もしくはほぼ対等な敵とのLSCO(Large-scale combat operations, 大規模戦闘作戦)においては、近年の作戦では経験しなかったような問題が生じるであろう。そして、MEDEVAC(medical evacuation, 患者後送)部隊の任務遂行は、より危険かつ困難になるだろう。ただし、決して不可能なことではない。

任務を効果的に遂行するためには、LSCOを十分に理解し、それが本質的に有するリスクをしっかりと把握して、任務の分析および実行の手法を明確にする必要がある。それに適応するために最も必要なのは、意識改革であろう。アメリカ陸軍は、作戦に危険がほとんど存在しない状態に慣れ親しんできた。そのうえ、確立された空地の後方連絡線に依存しすぎており、それなしでは作戦を遂行できないと考えてきた。また、航空部隊による患者後送に頼りすぎ、地上部隊による患者後送を忘れてしまっている者も多かった。さらに、戦術、運用および戦略レベルでの動的な環境において、計画、調整および実行を行う方法を忘れかけてしまっていた。将来の戦いにおいて勝利を収めるためには、近年の作戦がもたらしてきたこのような習慣を払拭し、LSCOの特性に応じた意識改革を図らなければならない。

LSCOの殺傷性

将来の作戦環境におけるLSCOは、更に殺傷性の高い環境をもたらすということを認めざるを得ない。他方、この殺傷性の増大により陸軍のMEDEVAC遂行が阻害されることを認めるわけにはいかない。にも関わらず、MEDEVAC専用機に対するリスクは、今日の作戦において許容できるレベルを超えており、MEDEVACの実施は見合わせるべきであると主張する者もいる。しかし、将来の戦場は、MEDEVAC部隊だけではなく、すべての部隊にとって、現在よりも危険なものとなることを理解しなければならない。MDO(Multi-Domain Operations, マルチドメイン作戦)の概念に示されているとおり、陸軍は、より殺傷性の高い戦場における作戦を遂行しようとしている。このことは、MEDEVAC部隊も同じなのである。LSCOにおいて許容されるリスクのしきい値は、今日とはまったく異なることを認識しなければならないのである。

一方、将来の作戦環境において発生しうるLSCOに焦点を絞り、敵が戦場にもたらす戦闘力しか考慮しない者もいる。そういった者たちは、敵が保有しうる強大な力を見落とし、誤った結論を導き出すことになりがちである。アメリカ軍およびその同盟国が戦場で強烈な抵抗に合うことを予期することができないのである。敵の能力が及ぼす影響を適切に評価できれば、それに対する対応はまったく異なったものとなる。問題点を認識するだけではなく、それを解決する機会を捉えることもできるようになるのである。将来の作戦環境における対等もしくはほぼ対等な敵に対するLSCOは、困難な作戦ではあるものの、不可能なことではないのである。

戦場における負傷者救護の進化

第127空挺工兵大隊と第82航空連隊第3大隊C中隊

LSCOにおける負傷者の範囲、規模および頻度は、MEDEVAC部隊に明確な課題を与える一方で、MEDEVAC作戦を必須のものにする。患者後送の失敗は、衛生任務および運用任務の遂行を極めて困難にする。患者後送の失敗は、医療施設の能力超過または医療補給品の過早消耗をもたらし、前方患者治療施設が飽和するリスクを増大させて、衛生任務の遂行を困難にする。また、増大した負傷者の保全・防護に伴う戦闘力の枯渇および増大した負傷者による移動・機動への悪影響を生じさせて、運用任務の遂行を困難にする。LSCOにおいて、患者後送を行わないというオプションは存在しないのである。

LSCOにおける負傷者の範囲、規模および頻度は、空地のMEDEVAC部隊をすべて投入せざるを得ない状況を生み出す。敵が持つ殺傷性および到達性は、MEDEVAC専用機を戦域全体にわたり幅広かつ縦深に配置する必要性を生み出す。患者後送計画においては、MEDEVAC専用機の配置を慎重に検討しなければならない。そのうえで、不測の事態に対応するため、負傷者の流れを予測し、動的な再配置を行わなければならない。MEDEVAC機がいかに高い患者後送能力を発揮したとしても、その能力を超える時が訪れる。各級指揮官は、MEDEVAC専用機をCASEVAC(casualty evacuation, 患者後送)機で補完し、主たる任務に及ぼす影響を最小限にしつつ、必要に応じ、直ちに航空輸送能力を提供できる状態に部隊を維持しなければならない。(訳者注:MEDEVACとは、専用の航空機または車両を用い、治療を行いながら後送することをいう。CASEVACとは、一般の航空機または車両を用い、治療を行いながらまたは治療は行わずに後送することをいう。)

LSCOにおいては、LOC(lines of communication, 後方連絡線)に対する敵の妨害により、MEDEVAC機の戦場への進出が困難になる場合があることを予期しておかなければならない。敵が我のLOCを妨害する能力は、すべての空間と時間に渡って均一ではない。敵のLOC妨害による影響は、敵が戦力を集中できるところにおいて、最も大きくなる。基本的には、敵の影響力は、敵からの物理的距離が大きくなるに従って減少する。LOCの妨害が最大になるのは、敵と接触している旅団戦闘チームの近傍であり、その妨害の効果およびその効果の持続時間は、師団など後方に向かうに従って減少してゆく。また、敵のLOC妨害能力は、戦役の初期またはその直後に最大となり、時間を経るに従って減少してゆく。このため、敵地に侵入し、敵の戦闘能力を崩壊させるに従って、我の移動および機動は容易になってゆくと予測される。全体を通しての鍵は、MEDEVAC専用機を後送が必要な患者にできるだけ近い場所に配置することである。まだ敵に奪われていない敵に対する優位性を、たとえ僅かであっても減少させることはできないのである。

このことは、負傷者を後送するMEDEVAC部隊にとって、作戦地域のあらゆる場所が戦場になり得ることを意味する。そして、緊急患者および緊急手術が必要な患者に対し、「1時間後送基準」を満たした後送が実施できなければならない。敵の行動範囲および殺傷能力を考慮すれば、戦域の縦深に渡って負傷者が発生することを予期しなければならないのである。MEDEVAC機でPIO(points of injury, 負傷地点)から負傷者を直接後送することが必要となる地域もある。ただし、敵部隊と現に接触している部隊において、「1時間後送基準」を実行できるかどうかは、今後の課題として残る。直ちに後送することが困難な地域においては、長期的野外治療を行って負傷者のリスクを軽減し、後送されるまでの時間の猶予を獲得しなければならない。

患者後送能力のパランスの維持

第82空挺師団第1旅団戦闘チームと第82航空連隊第3大隊C中隊

LSCOにおける負傷者の範囲、規模および頻度は、MEDEVAC専用機の効果的かつ効率的な運用が必要な状況を生み出す。高度に動的な状況下においては、努力/目的の統一を達成できる指揮指導態勢を構築することが重要となる。その構築の出発点は、戦域MEDCOMDS(medical command deployment support, 医療コマンド展開支援)の包括的MEDEVAC計画に関するトップダウンによる指揮指導であり、その到着点は、衛生旅団および衛生大隊、ならびに軍団、師団および旅団司令部を通じたボトムアップによる改善要望である。これらの部隊は、機動計画とMEDEVAC作戦との調整・統合を図り、動的な計画、調整および実行を行わなければならない。
LSCOにおいて、病に倒れたり、傷ついたりした兵士たちを後送できないという選択肢は存在しない。患者後送に失敗するということは、今日の戦闘に敗退するということを意味する。傷病者に対処できないということは、戦場における衛生任務および作戦任務の遂行能力の崩落をもたらすからである。患者後送の失敗は、兵士の士気や国家の意思に影響し、次の戦闘、次の戦役、そして次の戦争で敗北する可能性を生み出す。将来のLCSOにおけるMEDEVAC作戦の遂行は、困難ではあるが、不可能ではないのである。

必要なのは、LSCOの作戦環境に合わせた意識改革である。何が課題なのかを理解し、まだ敵に奪われていない敵に対する優位性を譲ることを拒絶する確固たる意思がなければ、作戦の成功はありえない。そのような意識改革を実行し、それを浸透させることこそが、陸軍を前進させるために最も必要な取り組みなのである。

スティーブン・A・バーンズ大佐は、陸軍将来コマンド将来構想センター衛生能力開発統合部局患者後送構想能力部(元MEDEVAC提案部)の部長である。リック・ストックハウゼン氏は、同部の元副部長である。いずれも、アラバマ州フォートラッカーで勤務している。

                               

出典:ARMY AVIATION, Army Aviation Association of America 2020年03月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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3件のコメント

  1. 管理人 より:

    非常に抽象的な内容の記事ではありますが、アメリカ陸軍がLSCO(Large-scale combat operations, 大規模戦闘作戦)(つまり、某大国との全面戦争)への対応を真剣に準備しようとしていることが分かります。非対称作戦であった「近年の作戦」は「危険がほとんど存在しない」状態でしたが、「対等もしくはほぼ対等な敵」との戦いとなる「将来の作戦」に適応するためには「意識改革」が必要だと考えられているようです。

  2. 管理人 より:

    原文の「MEDEVAC assets」は、「MEDEVAC機」と翻訳しました。機体だけではなく、人やその他の装備品も含めた概念だと思いますが、他に適当な訳語が思いつきませんでした。MEDEVACとCASEVACの違いは、今回初めて知りました。陸自においても、区分が必要かも知れませんね。

  3. 管理人 より:

    2枚目の写真で、衛生兵が身体で負傷者をダウンウォッシュから守っている姿が印象的です。