オスプレイの安全性
陸自オスプレイの配備に反対する方々には、オスプレイが危険な航空機であると考えている方が多いようです。果たして本当にそうなのか、オスプレイに関する文献や資料に基づき、Aviation Assetsとしての見解をまとめてみました。
90年代にアメリカで事故が頻発した
オスプレイは「安全面で欠点が多く、90年代に事故が頻発し、開発が1年半にわたり止まった」と指摘する方がいます。 開発段階で4件の事故が発生し、30名もの死者を出したと聞けば、その安全性に疑問を持つのは無理もないことかもしれません。
ただし、だからといって、今もオスプレイが危険であるということにはなりません。 事態を重く見たアメリカ政府は「V–22計画検討委員会」と呼ばれるブルーリボン委員会を立ち上げ、オスプレイの開発を継続するかどうかを検討しました。 その結果、「オスプレイに根本的な欠陥があるという証拠はない」としたうえで、71項目に及ぶ改善を勧告しました。 この勧告に従い、設計のやり直しと徹底した試験が行われたオスプレイは、全く新しい航空機に生まれ変わったのです。
オスプレイは、これまでに400機以上が製造され、60万時間以上の飛行時間を達成しています。この間、数々の実戦に参加して多様な任務をやり遂げ、その有用性の高さを実証してきました。
2020年には、それまでのアメリカ海兵隊およびアメリカ空軍に加え、アメリカ海軍への配備も開始されています。
オートローテーションで着陸するのは危険である
オスプレイには「オートローテーション(自動回転)」の機能がついていない」と指摘する方もいます。 ヘリコプターが安全なのは「オートローテーションができるから」と教えられてきたのに、それができないと言われてしまうと心配になるのは無理もないことかもしれません。
この問題は、前述の「V–22計画検討委員会」においても取り上げられ、オスプレイはオートローテーションのまま着陸することが危険であることが確認されています(オートローテーションが全くできないわけではありません)。
ただし、だからといって、安全性に問題があるわけではありません。V–22計画検討委員会も、オートローテーションで着陸できないことは決定的な欠点ではないと結論付けています。
実は、回転翼機におけるオートローテーションの意義は、その導入時期と比べて大きく変化しているのです。 複数のエンジンが搭載されることにより信頼性が高まったことなどから、近年のヘリコプターではオートローテーションの能力は以前ほど重視されていません。 自衛隊機においても、現在使われている複数のエンジンを搭載するヘリコプターでは、オートローテーションで実際に着陸する訓練は行っていないのが実情です。
主翼で滑空して着陸することのできるオスプレイにとって、オートローテーションは必ずしも必要な能力ではないのです。
それでも安全性は確保できている
防衛省は、航空機の安全性を確保するために必要な技術的基準を定めた「航空機の安全性の確保に関する訓令」という規則を定めています。 この規則の考え方は、航空機の安全を確保するため、「安全性を確保できるように設計し、それが確保できていることを試験によって確認し、それができていない場合は直ちに飛行停止などの措置を行う」というものです。
2015年にエンジンに不具合が発生し、飛行停止の措置がとられた陸上自衛隊の観測ヘリコプターOH-1は、エンジンの改修、試験などの対策を確実に実施し、飛行再開が認められたのは、約4年も経った2019年のことでした(「観測ヘリコプター(OH-1)の飛行再開について」2019.2.28 陸幕広報室)。 このように、この規則に基づいた措置は極めて厳格に実施されています。
2022年8月には、アメリカ空軍のCV-22Bオスプレイが、クラッチの不具合による緊急着陸が相次いだことを受け、約3週間にわたって飛行を停止しました。陸自機と同一機種であるMV-22Bオスプレイを運用しているアメリカ海兵隊は、「既知の問題」として飛行停止の処置は行いませんでしたが、陸上自衛隊は、一旦、飛行を停止する処置を行いました。その後、操縦士への教育やクラッチの機能確認などを行い、アメリカ空軍が飛行を再開した後に飛行を再開したのです。このことは、陸上自衛隊の飛行安全に対する意識の高さを表しています。
陸自オスプレイの安全性はしっかりと確保されていると考えて間違いありません。
参考
発行:Aviation Assets
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