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V-22オスプレイの改良ギアボックス、換装の日程

Aviation Assets 管理人

強襲揚陸艦「マキン・アイランド」での着艦資格訓練で、着艦の態勢に入る米海兵隊のMV-22B(2026年10月1日) 写真:米海兵隊(DVIDS)

防衛ニュースサイト「Defence Blog」は2026年10月9日、記事「U.S. plans to keep V-22 Osprey flying past 2055」で、V-22オスプレイを2055年以降も運用するための米軍の取り組みを報じ、改良ギアボックスの納入状況や米軍における換装予定を伝えました。

本稿では、この報道をきっかけに、2026年10月時点で公表されている資料から換装の日程を整理します。

ギアボックスに何が起きたのか

V-22の推進・駆動系統の構成(PRGBとインプット・クイル/クラッチの位置) 出典:米海兵隊の事故調査報告書

問題となっているのは、プロップローター・ギアボックス(PRGB)という、左右のナセル(エンジンとローターを収める部分)に1台ずつ搭載され、エンジンの回転をローターに伝える装置です。

2023年11月に鹿児島県屋久島沖で発生した米空軍CV-22の墜落事故(8名死亡)は、PRGB内部のギアの破断が原因でした。米海軍が2025年12月に公表した「V-22包括的レビュー」によれば、2006年以降、鋼材中の微小な不純物(非金属介在物)によるギアの亀裂が22件発生し、そのうちの3件は壊滅的な故障に至っています。

対策の柱は、ギアの素材であるX-53鋼の製法を二重溶解から三重溶解(真空中で3回溶解)に改め、不純物を減らすことです。これに関する技術的な内容は、本サイトのV-22駆動系統改修の現状と技術的展望(2025年7月23日)で紹介しています。

換装の現状

改良型のPRGBは型番で区別されています(表1)。2026年版海兵隊航空計画によれば、重要なギア4点を三重溶解の鋼に改めた-119が2025年6月に、その範囲を広げた-123が2026年1月に導入されています。

表1:PRGBの型番

型番導入内容
-115従来型従来のPRGB
-1192025年6月重要なギア4点に三重溶解の鋼を使用
-1232026年1月三重溶解の鋼の使用範囲を拡大。飛行時間による制限を受けない

※出典:米海兵隊「2026年版海兵隊航空計画」をもとに筆者が作成

海軍航空システム・コマンド(NAVAIR)は米下院軍事委員会で、改良型PRGBの配備を2026年1月に開始したと証言しました。米国の報道によれば、同じ公聴会でNAVAIRの担当者は、月12基のペースで海兵隊・海軍・空軍に配分していると説明しています。

ただし、換装の速さは軍種によって異なります。包括的レビューによれば、1か月に換装する割合は保有機数の海軍4%、空軍3%、海兵隊1%で、各軍種の優先度とリスク許容度の違いによるものとされています。

換装はいつ終わるのか

換装の完了などの見込みは、表2のとおりです。

表2:換装の完了と制限の解除の見込み(2026年10月時点で公表されている情報)

項目見込み出典
制限のない運用部隊になる時期(海兵隊)2027年12月米海兵隊「2026年版海兵隊航空計画」(2026年2月)
換装の完了(空軍・海軍)2029年NAVAIRの声明(2026年2月。米国の報道による)
換装の完了(海兵隊。これでV-22全体の換装が完了)2033年(航空計画では2033年1月)同上、米海兵隊「2026年版海兵隊航空計画」、米海軍「V-22包括的レビュー」(2025年12月)

※出典:各資料をもとに筆者が作成

「制限のない運用部隊」とは、飛行時間による制限の対象から外れた機体がそろうことを意味します。海兵隊の航空計画によれば、-115や-119を搭載した機体は、飛行時間が基準を上回るか-123に交換されるまで、暫定飛行許可(IFC)の制限に従って飛行します。

暫定飛行許可の内容は公表されていませんが、米国の報道によれば、2024年3月の飛行再開以降、すべての機体が、適切な代替飛行場から30分以内の範囲で飛行するよう制限されており、この制限は2025年12月の時点でも続いています。さらに2024年12月、NAVAIRは、飛行時間が基準に満たないPRGBを搭載した機体に追加の制限を課しました。分析の結果、鋼材の欠陥による故障は、使い始めて間もないPRGBで起きやすいとされたためです。その前月に米ニューメキシコ州で予防着陸した米空軍CV-22でも、不純物から生じた亀裂によって破損したギアは、新品に交換されてから93.8飛行時間しか使われていませんでした(米空軍の事故調査報告書)。2025年2月の米国の報道によれば、基準はおおむね400飛行時間とされています。米海軍の飛行隊の幹部は、基準に満たない機体は艦艇への飛行や人員の輸送ができず、事実上、訓練用の機体になっていると説明しています。

クラッチ部品の対策

PRGBには、ギアの破断とは別に、クラッチの問題もあります。2022年6月に米カリフォルニア州で発生した米海兵隊MV-22Bの墜落事故(5名死亡)の原因は、クラッチが一時的に滑った後に急激に再結合するハード・クラッチ・エンゲージメント(HCE)でした。対策として、クラッチを内蔵するPRGBの構成品であるインプット・クイル・アセンブリ(IQA)の再設計が進められていますが、ギアの対策よりも遅れています。再設計品の配備開始は、包括的レビューでは2027年、海兵隊の航空計画では2028年とされ、全機の換装の完了は2034年12月の見込みです(包括的レビュー)。

日程から見ると、2026年1月以降に導入された-123にも、再設計品が配備されるまでは現行のIQAが組み合わされ、IQAの使用時間の制限を受けるものと考えられます。-123が「制限のない」PRGBとされるのはギアに関する飛行の制限を受けないという意味で、制限のない運用部隊になっても、クラッチ部品の対策は完了していないことになります。

再設計品が配備されるまでの暫定措置は、飛行の制限ではなく、IQAの使用時間の制限です。HCEは800飛行時間を超えて使用したIQAで発生していたため、米軍は2023年2月、800飛行時間を超えたIQAをすべて交換するよう指示しました。

陸自機はどうなるのか

表2の見込みは、いずれも米海兵隊・海軍・空軍のものです。筆者が確認した米側の資料(航空計画、包括的レビュー、NAVAIRの議会証言、日程を伝えた米国の報道)には、陸上自衛隊(陸自)が運用する17機のV-22の換装に触れた記述は見当たりませんでした。

陸自機も米軍機と同じ制限の下にあり、防衛省は2024年12月、追加の措置が必要な機体には措置を講じたうえで飛行を再開すると発表しました(該当する機数は公表されていません)。防衛省は同じ月、関係自治体への説明資料で、米側の検討が終了した際には「アップグレードされたPRGBに交換されていくこととなると認識」と説明していますが、筆者が確認した範囲では、その後、陸自機の換装の時期を示した発表は見当たりません。

ただし、公表されていないことを、ただちに不透明と受け止める必要はないでしょう。NAVAIRも、基準となる飛行時間や制限を受ける機体の数を、作戦上の保全を理由に公表していません。どの機体がいつまで制限を受けるのかは、部隊がいま何機を使えるのかに直結する情報です。換装の時期を明らかにしないことは、その情報を外部に与えないための判断と考えられます。新しいギアボックスが届くその日まで、定められた制限と点検を守りながら飛行を続ける部隊に、エールを送りたいと思います。

本記事の略語

略語英語意味
HCEHard Clutch Engagementハード・クラッチ・エンゲージメント(クラッチが一時的に滑った後、急激に再結合する現象)
IFCInterim Flight Clearance暫定飛行許可
IQAInput Quill Assemblyインプット・クイル・アセンブリ(クラッチを内蔵する、PRGBへの動力の入力部)
NAVAIRNaval Air Systems Command海軍航空システム・コマンド
PRGBProprotor Gearboxプロップローター・ギアボックス

※この記事は、2026年10月10日時点で公表されていた資料に基づいて執筆したものです。

関連リンク
Defence Blog|U.S. plans to keep V-22 Osprey flying past 2055(2026年10月9日)
Aviation Assets|Marine Aviation Plan(米海兵隊の航空計画、2026年版)
米海軍|V-22 Comprehensive Review(2025年12月)
米下院軍事委員会|NAVAIRの証言 V-22 Program Update(2026年2月10日)
NAVAIR|NAVAIR Issues V-22 Bulletin and Interim Flight Clearance(2024年12月19日)
防衛省|オスプレイに対する追加的な措置について(2024年12月21日)
Aviation Assets|V-22駆動系統改修の現状と技術的展望(2025年7月23日)

           

出典:Aviation Assets 2026年10月10日

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