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陸軍航空の情報センター

風が着陸に及ぼす影響

CW3 スティーブン・ホーリー
アメリカ陸軍戦闘即応センター事故調査および対策部局航空部無人航空機システム安全班
アラバマ州フォート・ラッカー

2019年、あるRQ-7Bv2シャドーが、7時間の飛行を終え、着陸のために帰投していた。当該機は、戦術自動着陸システム(tactical automatic landing system, TALS)を利用しながら、降下を開始した。着陸進入間、シグナル・デグラデーション(信号障害)はなく、TALSが設定したグライド・スロープに沿って降下した。ところが、着陸の直前になって背風が強まり、予定接地点を12フィート(約4メートル)超えてハード・ランディングしてしまった。複数回バウンドしてアレスティング・ギア(制動装置)およびバリア・ネットを飛び越えた機体は、重大な損傷を負った。

2020年、あるMQ-1Cグレイ・イーグルが、4回の着陸を試みたが、いずれも強風のため進入を中断していた。5回目に進入した際、滑走路面を左側に逸脱して接地してしまった。降着装置が滑走路灯に衝突し、前脚が破断し、ペイロードが地面に接触した。当該機は、強風状態の中、クロストラック・エラー・アボート機能(航跡が滑走路中央から外れた場合に着陸を中断する装置)を無効にした状態で着陸しようとしていた。このため、滑走路を外れて接地したものである。事故調査の結果、事故発生当時の風速は、運用限界を約15ノット(秒速約7メートル)上回っていたことが明らかになった。

これら2つの事故は 、1回限りの特別なものではない。RQ-7とMQ-1という機種の違いはあるが、事故の原因は、着陸段階における風とそれが機体に及ぼす影響についての無理解であった。背風が問題となるのは、機首の180度反対側から吹いている場合だけではない。斜め後ろ方向からの場合であっても、単にクラブ状態で接地する以上の影響を及ぼすのである。

背風着陸の安全性を調査したオランダ航空宇宙研究所(Netherlands Aerospace Center)は、次のような事項を考慮すべきであるとしている。背風で進入する場合、地表面に対するグライド・スロープを維持するためには、降下率を増加させる必要がある。このことは、(UASのような)揚抗比の高い航空機が強い背風条件下で進入する際に問題を生じさせる可能性がある。揚抗比が高いため、エンジンの推力レベルを下げなけらばならないからである。進入速度を一定に保ちつつ、グライド・スロープを維持するためには、背風が増加すればするほどエンジン推力を減少させなければならない。背風が強い場合には、エンジン推力がフライト・アイドルと同程度になる。フライト・アイドルでの進入は、スロットル入力に対するエンジン・レスポンスを遅延させ、望ましくない結果をもたらす。特にゴーアラウンドを行う際には、素早いエンジン・レスポンスが不可欠である。

2018年以降、風が原因となった事故は、28件発生している。これらのうち60%以上の根本原因は、航空機の運用限界を超えて運用したヒューマン・エラーであり、空気力学における風の影響についての無理解であった。今一度、基本に立ち返り、風が空気力学に及ぼす影響を完全に理解し、パイロットとして適切な意思決定を行うことが、事故を防ぐための鍵なのである。

参考文献:Es, G.W.H. & Karawl, A.K. (2001). 背風状況下での運用の安全. NLR(オランダ航空宇宙研究所)

                               

出典:FLIGHTFAX, U.S. Army Combat Readiness Center 2023年02月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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