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陸軍航空の情報センター

V-22の可動率は半分程度、改善には時間が必要

ダン・パーソンズ

USSナッソーの飛行甲板から離陸するMV-22オスプレイ(写真:アメリカ海軍国立博物館)

オスプレイ・プログラム・マネージャーのマシュー・ケリー大佐は、米軍のV-22オスプレイの可動率は50%をわずかに超える程度であり、目標とする可動率に到達するにはかなりの時間を要する、と語った。

伝えられるところによれば、海兵隊のMV-22および空軍特殊作戦コマンドのCV-22の双方を含むオスプレイ全体の可動率は、52パーセント程度で推移している模様である。5月6日、ケリー大佐は、保全上の理由から具体的な数値は発表しなかったものの、軍が要求するレベルの可動率を維持できていないことを明らかにした。元国防長官のジム・マティスにより設定された80パーセントという可動率を達成することは、不可能ではないものの、時間がかかりそうである。

海軍協会が毎年開催しているSea-Air-Space会議に参加中のケリー大佐は、「当面の間は、難しいでしょう。今現在、目標達成に必要な可動率向上計画を作成し、その実現を図っているところです。努めて速やかに、目標を達成したいと考えています」と語った。一方、海兵隊航空副司令官中将スティーブン・ラダーは、同じ日の同じ会議において、昨年以降、MV-22の任務可能可動率は、70パーセントを維持できている、と比較的楽観的な見方を示している。

オスプレイ・プログラム・オフィスは、今年に入って、V-22の製造元であるベル・ボーイングと5か年間の成果保証契約(Performance-based logistics, PBL)を締結した。ケリー大佐は、それは「過去に例を見ない兵站契約であり、この機種の要求事項である目標可動率を企業のインセンティブに合致させるものなのです。機体に必要なものを与え、企業が利益を得る契約なのです」と語った。両社は、この契約に基づき、オスプレイの即応体制を維持することに関してインセンティブを与えられ、それに応じた支払いを受けることができるのである。

既に、2019年に入って以降、長期非可動機が40パーセント減少している。また、2017年度から2018年度にかけて、可動率が7パーセント向上しており、さらに、2018年から2019年の初めにかけては、5パーセントの上昇が達成されている。「既に成果は表れ始めているのです。この成果が継続することを期待しています。まだ目標には達していませんが、具体的な数値目標を確実に達成することを重視し、インセンティブを伴う契約を適切に適用してゆきます」とケリー大佐は語った。

海兵隊のオスプレイ・プログラムは、計画されている360機のMV-22のうち326機がすでに納入されている。このため、プログラムの焦点は、既に配備された機体の可動率に向けられようとしている。「可動率は、オスプレイ・プログラムにおける最優先事項なのです。V-22がどんなに遠くから、どんなに速く、いかに素晴らしい任務を遂行しようとも、それが必要なときに準備ができていなければ何もならないのです」とケリー大佐は語った。

オスプレイの可動率を向上するために、いくつかの事業が進められている。その代表的なものは、形態共通化による即応性向上および近代化(common-configuration readiness and modernization, CCRAM)およびナセル改善プログラムである。

このうち、CCRAMに関しては、5年から15年前に製造された129機のMV-22ブロックBのうち4機を対象機に指定し、フィラデルフィア郊外のボーイング社の製造工場でシステムの換装およびオーバーホールを行って、2019年の形態への改修を実施している。この作業には、約60件の技術変更が含まれており、併せて信頼性および性能の向上が図られることになっている。「この作業は、機体を全面的に改修するものではありませんが、この機体の問題点を解決するためのシステムの大幅なアップグレードを行うものです」とケリー大佐は語った。今年の夏に最初の機体が改修を完了したならば、5番目の機体のCCRAMが開始される予定である。

一方、ナセル改善プログラムについては、整備工数の削減を目標とするものである。ナセルとは、翼端に取り付けられた、エンジン、ギアボックスおよびローター・システムを格納する回転する容器のことをいう。ナセルは、「機体の他の部分と比較して、不釣り合いなほどの整備工数を必要としている。このプログラムは、ナセルの緊要な部分である配線および一部構造部材を強化し、将来における信頼性や整備性の向上を図るものである」とケリー大佐は語った。海兵隊の場合、この改修は機体がCCRAMを実施している間に行われ、旧型のナセルを取り外して、一部のコンポーネントを交換した後に、新たに設計されたナセルが再取付されることになっている。空軍の場合、フロリダ州のハルバート・フィールドにおいて、独自にナセルの改修作業を実施する。なお、空軍、海軍および日本向けV-22の生産ラインにおいても同様の作業が行われる。このプログラムは、「単なる配線などの改修にとどまるものではなく、整備性の大幅な向上をもたらすものになると考えています」とケリー大佐は語った。

                               

出典:Rotor & Wing International 2019年05月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

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1件のコメント

  1. 管理人 より:

    日本企業や陸上自衛隊によるV-22の補給整備の実施が、その可動率の向上に良い影響を与えてくれることを期待しています。