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陸軍航空の情報センター

オーストラリア沖でのMV-22Bオスプレイ墜落事故(2017年)

(2022年7月22日)


2017年8月5日、MV-22Bオスプレイがオーストラリアのクイーンズランド州ロックハンプトン沖で訓練中に墜落した。この事故により、3名が死亡、23名が負傷し、機体が全損した。

当該機は、大使館増援任務などを想定した大規模な訓練を実施中であった。まず、強襲揚陸艦USSボノム・リシャールから発艦し、ラズベリー・クリークまで大使館増援要員を空輸した。次に、ボノム・リシャールに戻って燃料を補給し、人員および物資をUSSアッシュランドまで空輸した。ボノム・リシャールに戻ると、多数傷病者訓練に参加し、ラズベリー・クリークとボノム・リシャールの間をさらに2往復した。ラズベリー・クリークへの最後の飛行は、非戦闘員退避作戦を想定したものであり、大使館から人員 (海岸降着地3/5の海兵隊員および海軍兵士) を回収し、沖合で待機するUSSグリーン・ベイまで空輸するものであった。

事故調査報告書は、この任務を「複雑かつ困難なものであった」と表現している。

MV-22Bオスプレイ(アメリカ海軍提供 )

V-22オスプレイは、ベル・ヘリコプター社とボーイング社が共同開発した、VTOLおよびSTOL機能を備えたティルトローター軍用機である。オスプレイの開発・生産コストは、数々の論争を巻き起こしてきた。V-22は、従来のヘリコプターよりも整備所要が大きく、可動率が低いものの、事故発生率は低く保たれてきていた。事故機(機体番号:16834)は、最新の機体であり、関連するすべての技術指令に基づく処置を完了していたが、飛行時間はわずか203時間であり、主要な定期点検の実施時間には到達していなかった。

事故機に搭乗していた海兵隊員は、十分な訓練を受け、必要な資格を取得し、身体検査に合格し、任務開始前に8時間以上の休息をとっていたことが確認されている。

USS グリーン・ベイは、サン・アントニオ級ドック型輸送揚陸艦である。グリーン・ベイ・パッカーズが所有するフットボール・スタジアムにちなんでランボー・フィールドと呼ばれる飛行甲板には、6つ航空機用離着艦スポットがある。事故発生時、飛行甲板には、5機の航空機が駐機していた。

事故機がグリーン・ベイの飛行甲板に進入した際、機体が突然沈下し、毎分200~300フィートの速度で降下した。

USS グリーンベイ(2011年8月撮影、出典不明)

操縦していたパイロットは、墜落により腰と脚を骨折したものの脱出に成功し、最右舷後方の離着艦スポットであるスポット5に進入した際の状況について、次のように証言している。

落下するような、沈みこむような感じがしました。視界が少し良くなったように感じたので、機首が少し下がったのだと思いました。ほんの少しだけ機首が下がり始めたのかもしれません。
…[パイロット名(削除)] が「パワー。パワー」と言ったと思います。[別のパイロット名(削除)] も「パワー」と言ったと思います。私も、「パワー」と言ったと思います。

…私たちは(スラスト・レバーを)前に押しましたが、反応がありませんでした。つまり、すでにこの時点で、沈下が始まっていました…。急激な感じはしませんでした。どうしようもないような感じでした。

…出力が足りないように感じました。計器を見た記憶はありません。とても恐ろしかったことだけを覚えています。

…突然のことに、私は凍りついたようになっていた気がします。そして、衝突しました。艦船の側面にぶつかっていました。

…私は、一種のフラッシュバックのように(輸送揚陸艦)ニューオーリンズでの(事故の)ことを思い出していました。(あの事故では、)機体の十分な部分が艦船上に残り、そこから落下することなく、搭乗者全員が無事に機体から降りることができました。そんなことが頭に浮かびましたが、私たちの場合は、それにはほど遠いようでした。機体は、甲板上にほとんどなく、右に動くばかりでした。機体は、右へ、右へと動きました。

このパイロットが言及しているのは、別の類似した事故のことである。2015年12月、MV-22BオスプレイがUSSニューオーリンズの飛行甲板に進入中、同じように沈下し、降下速度を下げることができなかった。当該機は、艦船の末端にかろうじて引っかかり、搭乗者および搭乗員が避難できた。

しかし、今回は、墜落を避けることができなかった。操縦していたパイロットは、急激な降下に気づき、出力を増加させたが、「TCL OVERTRAVEL」(推力制御レバー操作過剰) 警告灯が点灯した。これは、利用可能なすべての出力が発生され、推力制御レバーが作動範囲を超えて押し込まれたことを示している。

ホバリング状態を維持するのに必要な推力がなかったのである。どちらの事故についても、原因は、ダウンウォッシュが船体に反射して再循環したことにあると結論付けられた。

左外側のエンジン・ケーシングが飛行甲板に衝突した。パイロットが述べたとおり機体は右に移動し、その後、鋼鉄製の階段に激突し、コックピットを押しつぶし、パイロットに重傷を負わせた。同時に、左側のプロップローター・ブレードが飛行甲板および別のヘリコプターに衝突した。事故機は、海に落下した。コックピットに空いた穴から水が流入し、機体は急速に沈没した。

この動画は、今月初めにYouTubeの「What You Haven’t See」というチャンネルに公開されたものである。海兵隊当局は、MV-22オスプレイの墜落を甲板上から2台の携帯電話で撮影したこの動画を確認することに消極的であったが、この動画は「海兵隊の調査と一致している」ことを認めている。

この動画には、進入してくるオスプレイが突然沈下し、甲板に衝突して海に墜落する様子が写っている。墜落シーンを繰り返した後、別のアングルからの映像と残骸回収の映像を続けて映し出している。最後は、MV-22オスプレイの他の事故の写真で締めくくられている。

YouTubeの「What You Haven’t See」に公開された動画

事故調査報告書は、この事故による人員の死亡および負傷は、「職務上の不注意によるものではない」ことを明らかにして搭乗員および整備関係者の責任を免除するとともに、墜落の原因は、ダウンウォッシュおよび出力不十分にあるとしている。

ただし、事故調査を通じ、他にも多くの問題が明らかになった。これらは墜落の原因ではないものの、その結果に影響を及ぼした可能性がある。21名の搭乗者のうち8名がシートベルトを着用していなかった。事故機が海に墜落した際、これらの人員および固定されていなかった搭載品が前方に飛散し、キャビン前方の搭乗者を負傷させた。

事故調査報告書は、事故機が過積載状態だった可能性も指摘している。個人携行火器、ライオット・シールドペリカン・ケース、1日分の糧食などを携行した搭乗者の重量は、各人300ポンド(136キログラム)に達していたと推定され、燃料補給の終わっていた機体は、事故発生時、約8,200ポンド(約3,720キログラム)の燃料を搭載していた。問題は、飛行前の重量計算が信頼できないことであった。搭乗者だけではなく搭乗員の人数にさえも混乱が生じていた。

さらに、飛行部隊の責任者である強襲部隊長は、搭乗者に対する「緊急脱出」手順の説明を行っていなかった。つまり、搭乗者は、緊急時の避難方法を知らされていなかったのである。さらに悪いことに、当該部隊長は、航空機の脱出要領の説明に関する訓練を受けていなかった。

そのブリーフィングは、緊急脱出訓練の際に実施されるべきものであった。21名の搭乗者のうち7名は、緊急脱出訓練を受けていなかった。その訓練に参加した人員のうち2名は、脱出訓練に失敗していた。

死亡した3名のうち2名は、機体が沈没した後、キャビン内で溺死した。いずれも、空気ボンベを作動させていなかった。

完全な事故調査報告書 (一部、削除された部分がある) をスキャンしたPDFが公開されている。勧告に関する部分は削除されているが、海軍の技術者たちは、ダウンウォッシュが最終進入時のオスプレイに及ぼす影響、特にダウンウォッシュ効果を相殺するために必要な出力について検討を行っている。また、安全に着艦するために必要な出力を確保するため、海上で艦船に進入する際の最大重量が修正された。

                               

出典:Fear of Landing 2022年07月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

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