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陸上航空(陸上自衛隊航空科職種)の教育訓練、運用、装備、安全等に関連する米軍情報の発信源

航空開発本部:科学技術の現状

レイン・メリット

本稿「科学技術(Science a Technology, S&T) の現状」は、科学技術とは何なのか、それが陸軍航空にもたらすものは何なのか、我々の組織がいかにしてこの任務を達成しているのか、を説明するとともに、現在行われている主要なプログラムについて情報を提供するものです。

図1

最初に、基本的な用語の定義について少し説明してみたいと思います。「科学(Science)」とは、我々の世界を支配している法則の集まりです。それは発明するというよりも、発見し、利用するものです。「技術(Technology)」とは、我々の用法では、科学的知識を実用的な軍事目的に適用することを指します。「能力(capability)」とは、技術を軍事任務を達成するために用いる力です。通常、「技術を用いる力」は、戦術、技量および手順を伴った装備をもって具現されます。

科学技術組織は、軍事作戦に利用できる科学原理や科学技術を発見又は識別し、それらの技術を熟成・実証し、陸軍が軍事適用力を開発・装備化するために必要な情報を詳細に提供します。陸軍は、要求される適用力を文書化し、装備品を開発し、人員を訓練して、装備化を行うことによって、その能力を獲得するのです。陸軍航空の場合、これらの任務を行うのは、米国陸軍航空教育研究本部(United States Army Aviation Center of Excellence)と航空プログラム・エクゼクティブ事務局(Program Executive Office for Aviation, PEO AVN)です。何が要求され、何が得られるのかを把握している科学技術組織の働きは、要求事項文書化プロセスと調達プログラムに伴うリスクを著しく低減させることに役立っています。

科学技術活動の3つの類型

「基礎研究」とは、政府と産業研究所内および学界内の科学者によって行われる科学的な発見です。陸軍航空における基礎研究の焦点は、その大部分が基礎的な空気力学であり、揚力を増加し、かつ抗力を減少させる方法を見出そうとしています。また、陸軍航空に関連するその他の研究としては、より一般的な、材料、人間能力、およびセンサーに関する研究があります。

陸軍航空における「応用研究」とは、特定の軍事装備に関し、新技術の研究開発や装備品への適用を支援することです。航空エンジンを例にとれば、エンジンの個々のセクションやコンポーネント、つまり、エンジン・インレット・フィルター、コンプレッサー、パワー・タービン、ベアリングおよび潤滑系統などに適用する技術を選定することがこれにあたります。

「先進技術開発」とは、諸々の技術をサブシステム全体や機体レベルに適用することです。エンジンの場合には、エンジン全体の計測および制御できる エンジン・テスト・セルで試運転を行い、関連する性能項目のすべてを把握することが該当します。その他の操縦系統や任務装備などに関する技術の場合には、通常、航空機に搭載して実飛行で確認することになります。先進技術開発が成功裏に終わったならば、その技術は、技術準備レベル(Technology Readiness Level, TRL)6に指定され、一部の例外を除き、航空プログラム・エクゼクティブ事務局(program executive office aviation, PEO AVN)に申し送られ、装備品開発に移行する準備ができたことになります。エンジンを例とするならば、完全なエンジン実証試験を含む先進低価格技術エンジン(Advanced Affordable Technology Engine, AATE)プログラムや、その技術の改善型タービン・エンジン・プログラム(Improved Turbine Engine program, ITEP)および小型ジーゼル・エンジン(Small Heavy Fuel Engine, SHFE)への適用がこれにあたります。

図2 航空機エンジンの技術適用フローの一例

陸軍においては、5つのコマンドが科学技術活動を行っていますが、これらの活動の大部分(71%)は、研究、開発および技術コマンド(Research, Development and Engineering Command, RDECOM)で行われています。REDCOMは、陸軍研究書(Army Research Laboratory, ARL)と6つの研究、開発および工学センター(research, development and engineering centers, RDEC)で構成されています。科学技術の任務は、そのほとんどがRDECのR(研究)に属する事項です。「D(開発)」および「E(工学)」には、システムの開発及びライフサイクル管理が該当sます。陸軍航空に関連する科学技術は、主としてARL、通信・電子RDEC( Communications & Electronics RDEC, CERDEC)および航空・ミサイル RDEC(Aviation & Missile RDEC, AMRDEC)が担当しています。

航空開発本部(Aviation Development Directorate, ADD)は、AMRDEC(Aviation & Missile Research, Development & Engineering Center, 航空・ミサイル研究開発技術センタ)の内部機関であり、国防省の回転翼機科学技術の計画・実行について、その大部分を担当しています。その際、連携・協力する機関には、ARLの車両技術本部(Vehicle Technology Directorate), CERDECのナイト・ビジョン・電子センサー本部(Night Vision and Electronic Sensors Directorate)および情報および情報要素戦闘本部(Intelligence and Information Warfare Directorate)があります。また、少ない資源を活用して共通の目的を達成するため、他の軍種、複数の国際パートナー、そしてもちろん回転翼機の諸企業とも連携しています。

ADDは、戦闘航空旅団の中核を担う技術を中心に据えて編成されています。このため、15の特有の技術領域(technology areas, TAs)を選定し、それを図3に示す6つの焦点領域と2つの主要統合技術プログラムにグループ化しています。科学技術の資産(ポートフォリオ)をこのように編成することにより、技術専門家たちがそれぞれの専門領域に集中し、十分な深さまで探求できる環境を整えるとともに、これらの個々の技術をシステムレベルやさらに複雑な能力へと統合することが可能となりました。

それぞれの技術領域には、2つの主要な取り組みがあると考えられます。1つは、「最先端の前進」と呼ばれるものであり、どちらかと言えば持久的な活動です。たとえば、トランスミッションやギヤボックスに対し、強力かつ小型・軽量であるだけではなく、耐腐食性に優れ、無潤滑で長時間運用できる能力を常に求めるようなことがこれにあたります。2つ目の取り組みは、新たな技術的進展若しくは突破を達成しようとするものであって、例えば、多段または可変速度ローターシステムのようなものがこれにあたります。ちなみに、このシステムは、回転翼機による高速飛行において必要となるもので、新たな能力を有するエンジンやトランスミッションによって実現されるものです。

図3 戦闘航空旅団を支援する各種技術を中心に据えた科学技術ポートフォリオの編成は、陸軍の焦点を明確にした技術と能力の統合を可能にする。

各種プログラム

統合多機能技術実証(Joint Multi-Role Technology Demonstration, JMR-TD)と悪視程環境軽減(Degraded Visual Environment Mitigation, DVE-M)の2つが現在実施中の主要なプログラムであり、いずれも陸軍航空における過去の問題において、その必要性が認められてきたものです。

JMR-TDプログラムは、計画に従い、着実に実行されてきました。ベルV-280バローとシコルスキー・ボーイングSB>1ディファイアントの2機の飛行技術実証機が現在組み立て中であり、2017年に飛行を予定しています。2014年後半の初度書面設計から2年にも満たない期間で航空機の組み立てに必要な膨大な作業を完了できたことは、このプログラムが非常に効率的かつ迅速に行われたことの表れです。AVX(二重反転式ローターと双子式のダクテッドファンの組み合わせ)とカレム(Karem, 速度適合最適化とローター傾斜器の組み合わせ)による2つの追加技術実証試験も計画どおりに進行しており、将来型回転翼機の能力に柔軟性を与えようとしています。最近になって、全ての主要回転翼機基本設計概念関連会社(ボーイング、ハネウェル、GEアビエーション、ロッキード・マーチン、ノースロップ・グラマン、ロックウェル・コリンズ)と次世代複合任務システム基本設計概念実証機に関する6件の技術投資協定(Technology Investment Agreements)が結ばれました。これは、昨年、成功を収めた設計概念実証に続く第2の実証であり、企業と政府が共同で、完全にオープンな基本設計概念を的確に定義し、実行し、修得することを可能とすることでしょう。この実証により、最初の正式な将来型回転翼機プログラムの準備として2018年から2020年にかけで行われる最終的な頂点実証(Capstone Demo)実施の環境が整えられることになります。

他方、RDECOM・DVE-Mプログラムについては、9月にアリゾナ州のユマ性能試験場で行われたNATO・DVE実験が成功を収めました。この実験の焦点は、埃、煙およびブラウンアウト運用環境下で、状況の感知およびパイロットへの指示を行って、その操縦を補完できることを実証することでした。この実験では、航空機から100フィート(30メートル)以内に障害物がある状況で、完全なブラウンアウト状態での150回以上の着陸進入またはホバリングを含んだ、40時間近くの飛行が行われました。NATO・DVE実験の後半は、2017年2月にドイツおよびスイスで雨、霧、雪、雲およびホワイトアウトの中での運用を焦点として行われる予定です。

将来の科学技術のための主要なプログラムとしては、将来戦術無人航空機システム技術実証(Future Tactical UAS Technology Demonstrator, FTUAS TD)と関連する小型エンジンのプログラムおよび全体状況判断(Holistic Situational Awareness and Decision Making, HSA-DM)プログラムの2つがあります。

FTUAS・TDプログラムは、シャドウ(AAI社製の無人航空機)およびグレイ・イーグル(ジェネラル・アトミックス・エアロノーティカル・システムズ社の無人航空機)の更新候補機を実証するものです。この機体は、滑走路が不要、柔軟なペイロード、生存性の向上および有人機との相互運用性などの特徴を有するものとなる予定です。

HSA-DMプログラムは、エレクトロニクスとヒューマン・システムのインタフェースを統合する任務システム・プログラムです。このシステムは、誘導、回避行動、航法、戦闘識別および兵器操作などの操作手順を適切に統合するものとなる予定です。

このように、科学技術は、各分野の専門家や研究プログラムを通じて、航空運用に必要な知識と技術を供給しているのです。

レイン・メリット氏は、アリゾナ州レッドストーン工廠兵廠にある航空およびミサイル研究、開発および工学センター(research, development and engineering centers, RDEC)の航空開発本部(Aviation Development Directorate)の主任技術員であり、航空科学技術の管理を担当しています。
出典:ARMY AVIATION, December 2016, Army Aviation Association of America
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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1件のコメント

  1. 管理人 より:

    本文の「図3に示す6つの焦点領域と2つの主要統合技術プログラムにグループ化」という記述(原文もそのようになっています)は、図3の内容と合致しません。「6つの」は「5つの」の誤りだと思われます。




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