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翻訳の手順書

 

平成29年12月15日、私が初めて翻訳した本である「The Dream Machine」の出版社への入稿が完了しました。約2年間に渡って続けてきたこの本の翻訳作業から得られた教訓を「翻訳の手順書」として残しておきたいと思います。

1 作業の段階区分と所要期間

本訳の技法やコツについて書かれている参考書は、世に多く出回っていますが、どのような手順で進めたら良いのかについて、体系的に述べられているものは少ないように感じます。そんな中で、TNT Japanさんの「翻訳作業の進め方」は、大変簡潔にまとめられた分かりやすいものとなっています。

「翻訳作業の進め方」では、翻訳の手順が次の4つの段階に分けられています。私が「The Dream Machine」(原書:約450ページ、翻訳:約750ページ)を翻訳した際に、それぞれの段階に要した期間は、次のとおりです。

各段階における具体的な作業内容については、枝廣順子さんの「あなたも翻訳家になれる!」が非常に参考になりました。枝廣さんの場合は、「最初の訳をつくるところまでにかかる時間を『1』としたら、練り上げる作業に『5~6』の時間を使って」いるとのことですが、私の場合は、下訳の段階に多くの期間が必要でした。これには、下訳の8割程度が終わるまでは、翻訳作業にあまり時間を割けなかったことや、本書の内容が非常に専門的な内容であるため「調べもの」をする時間が必要だったこともありますが、そもそも英語力が不十分なため、辞書や文法書を読みながら訳さなければならない場合が多かったことが一番大きく影響していると思います。

2 作業の要領

・第1段階

「The Dream Machine」を最初に読んだ時には、翻訳するつもりなどありませんでしたから、さらっと読んだだけでした。本書の場合、とにかく登場人物が多いので、新しい登場人物が出てくるたびに、マーカーでラインを引きながら読んだのが後で役に立ちました。同じく軍関係の機関も次から次へと出てくるのですが、こちらにもラインを引いておけばよかったと思います。

・第2段階

下訳の段階においては、表現よりも語句に注目して訳したつもりだったですが、用語の統一ができていなかったので、本訳の段階でその修正に苦労する羽目になりました。本訳の最終段階になって、はじめて索引を翻訳したのですが、その時に「下訳をする前に索引を翻訳しておけばよかった」と気づきました。そうすれば、主要な用語について、グロッサリーを完成させたうえで、ブレのない翻訳作業を行うことができたはずです。

・第3段階

本訳では、パソコン上での作業を終えた後、翻訳した文章を一旦紙に印刷して、手書きで再修正を行ってみました。パソコンの画面よりも、紙に印刷した方が誤りに気づきやすいのではないか思ったからです。しかし、実際にはあまり効果がなく、紙に書き込んだ修正をパソコンに打ち直す分だけ余計な時間がかかっただけだった気がします。

・第4段階

推敲の段階は、3か月で終わらせる予定だったのですが、1か月も予定を超過してしまいました。長文であればあるほど、本訳や推敲という「練り上げる」段階により長い時間が必要となることが分かりました。この段階で案外悩まされたのが、「読点(とうてん)の打ち方」です。フリーライターのよりどころさんの「読点の打ち方、使い方と6つの原則」は、「関係が遠い文節の、前の文節の直後に読点を打つ」という基本的な考え方を分かり易く説明していて、大変参考になりました。

推敲が完了して入稿できる段階になったならば、もう一度紙に印刷して、1週間ほど「寝かせて」から原稿を送付しました。その間に、ぺらぺらと紙をめくっていると「あっ」と別な訳語がひらめくことがありました。たった1週間ですが、貴重な期間だったと思います。

3 必要な器材

・ ハードウェア

何はなくとも、パソコンです。これがなければ、「The Dream Machine」のような長文の翻訳は不可能であったと断言できます。私が使用しているのは、A4サイズのノートパソコンなのですが、推敲の段階で原稿を縦書きで表示させると、字が小さくなってしまってかなり難儀しました。サイズや解像度の大きなディスプレイを準備しておくべきでした。

・ ソフトウェア

辞書ソフトには「Personal Dictionary」、翻訳メモリには「Wordfast」、ワードプロセッサーには「Word」、索引などのページ番号の検索には「Excel」を使用しました。

辞書ソフトと翻訳メモリについては、別のコラムで詳しく紹介していますので、そちらをご覧ください。

コラム:「パソコン(Personal DictionaryとWordfast Pro)を活用した翻訳作業」

ワードプロセッサーには、エディターを使うことも考えたのですが、縦書きで編集できること、強力な校正機能があること、何よりも使い慣れていることなどから、「Word」を使用しました。

「The Dream Machine」の原書には、かなり緻密に作成された索引が付いていました。ぜひ、これも翻訳したいと思ったのですが、問題は、膨大な量のページ番号をどうやって取得するかでした。このため、まず索引をグループ分けされた複雑なものから、用語が並んでいるだけの単純なものに変更し、次にエクセルを使って、各用語に対応するワードのページ番号を読み出させました。これを実現するためには、VBA(マクロ)をプログラミングする必要があるのですが、いつも隣にITのお仕事さんの「エクセルVBAでWord文書を開いてページ数や文字数などのいろんな情報を取得する」のおかげで、何とか作ることができました。

・ ウェブサイト

調べものをしたり、単位を換算したり、同義語を調べたりする際には、「Google」や「Wikipedia」のお世話になりました。これも、「The Dream Machine」の翻訳には欠かせないものでした。

・ 原 書

あたり前のことですが、これがないと話になりません。「The Dream Machine」の翻訳に際しては、ペーパーバックと「Kindle」の両方を準備しました。「Wordfast」に読み込むためのテキストデータは、「Kindle」から読み出しました。この方法については、内気なアフィリエイターのネットビジネス奮戦記さんの「Kindleで本をテキスト化するメリット」に詳しく述べられています。

「The Dream Machine」は、現在、出版社のご支援を受けながら、校正を進めようとしている最中です。それが終わったら、この部分についても手順書を作成したいと思っています。

発行:Aviation Assets, 16 December 2017

備考:本コラムの内容は、今後、修正される可能性がありますので、ご了承ください。

アクセス回数:676

2件のコメント

  1. 管理人 より:

    「Wikipedia」のことを追記しました。

  2. 管理人 より:

    「読点の打ち方」に関する説明を加えました。