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簡単な一言

上級准尉4 ダン・ポップルトン
第2飛行隊、第17騎兵隊、第101空挺師団
フォートキャンベル、ケンタッキー州

クルー・コーディネーションとは何なのでしょうか? それは、いつ始まり、いつ終わるのでしょうか?

私たちは、NVG(暗視眼鏡)を使用した4時間の飛行場監視任務のため離陸しました。機長である私は、2機のOH-58Dの編隊指揮官でもありました。2週間後に帰国を控えていた私たちは、事故の発生リスクを減らすため、中隊安全将校による数回のクルー・コーディネーションに関する教育を行っていたところでした。

飛行場監視は私たちが何百回も繰り返してきた任務でしたが、今回はその始まりから問題が発生しました。離陸するとすぐに、無線機のスケルチが故障し、雑音が止まらなくなりました。隣の副操縦士や僚機からの通話が聞き取れなくなったのです。1分ほどで、任務実施速度および高度に達しました。その数秒後、暗視眼鏡にハレーションが発生する明るい地域に差し掛かりました。この時点で、経験上、典型的な事故が発生しやすい状況に陥っていると感じた私は、雑音だらけの通話状態の中、副操縦士に「お前は無線機を何とかしろ、任務中止だ。俺は操縦に集中する」と言いました。彼からの返答は聞こえませんでしたが、彼が親指を立てて合図しているのが分かりました。

操縦のみに集中していた私でしたが、雑音と暗視眼鏡のハレーションのため、操舵に遅れが生じ始めているのが分かりました。そんな混乱の中、ある一言が聞こえたのです。「ワイヤー!」 僚機が送信したその明瞭な一言は、理由は分かりませんが、雑音の中を通じて私の耳に届いたのです。私にはワイヤーが見えませんでしたが、それに関わらず、直ちに毎分500フィートで上昇を開始しました。しばらくすると、無線機の雑音が止まり、送電線の50フィート上を通り過ぎました。

その後の飛行は、順調に進みました。数時間後、食堂で食事をしていた私は、貴重な教訓を得たことを認識させられました。この危機一髪の状況の中、2機の機体を操縦していた9,000飛行時間以上の経験を有する操縦士たちの中で、完全に状況を把握できていたのは、僚機のパイロットだけだったのです。事故は、関連する状況の連鎖によって起こるということを認識していた彼は、あの一言でその連鎖を断ち切ってくれました。そのことは、2名の死者と航空機の損壊をもたらしたかも知れない事故を防いでくれました。

クルー・コーディネーションは、ある時突然、陸軍航空運用の授業よりも重要なものとなるのです。クルー・コーディネーションとは何なのでしょうか? それは、自分の航空機のためだけのものではなく、飛行中の他機、地上部隊、航空管制官などにも影響を及ぼすものなのです。それは、いつ始まり、いつ終わるのでしょうか? それは、飛行前ブリーフィングから始まり、食堂で終わるのです。これら2つの質問に対する答えを与えてくれたのは、あのイラクでの危機一髪の状況だったのです。

出典:KNOWLEDGE, May 2017, U.S. Army Combat Readiness/Safety Center
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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1件のコメント

  1. 管理人 より:

    アナログの無線機でなければ起きないことですね。




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