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アメリカ陸軍がFVL候補機に4機種を選定

アメリカ陸軍は、国防関連企業から提出された数多くのFVL候補機の設計案の中から、2つのプログラムを対象とした合計4つの設計案を選定した。今後は、これらの候補機種の製造および試験が開始されることになる。

FARA(Future Attack Reconnaissance Aircraft, 将来型攻撃偵察機)に関しては、提案された5つの機種の中から、ロッキード・マーチン社傘下のシコルスキー社が製造したレイダーXとベル社が設計した360インビクタスの2機種が選定された。

別のFVLプログラムであるFLRAA(Future Vertical Lift, 将来型長距離強襲機)に関しても、これら2つの企業の設計案が選定された。ベル社がFLRAAとして提案しているのはV-280バローであり、シコルスキー社が提案しているのはSB-1デファイアントである。

FLRAAは、既に第2段階に入っており、試作機の設計、製造および試験が始まろうとしている。これらの試作機の試験は、2022年末まで続けられ、2023年末までに機種選定がおこなわれ、順調にいけば、2030年までに装備化が開始されると見込まれている。

これらのプログラムは、AH-64アパッチUH-60ブラックホークOH-58カイオワ・ウォーリアおよびMH-6リトルバードの退役後を担う新しい機体を生み出すことになる。

ロッキードマーチン・シコルスキーのレイダーX
ベル社の360インビクタス

FARA(Future Attack Reconnaissance Aircraft, 将来型攻撃偵察機)

「我々の目標は、十分な速度で移動できる能力を獲得することです」水曜日の報道発表において、陸軍将来コマンド司令官であるジョン・M・マレー将軍は語った。「将来の戦場における勝利を約束する能力を設計、試験および製造するチャンスが与えられたのです」

陸軍の調達、兵站および技術担当陸軍次官補であるブルース・ジェットは、その声明の中で、FARAは、「陸軍の航空近代化における第一優先事項であり、敵の統合防空システムに侵入し、それを崩壊させるために不可欠な装備品です。その優れた速度、航続距離、耐久性、生存性および殺戮性により、戦闘部隊指揮官の戦術、運用および戦略能力の向上に寄与することになるでしょう」と述べた。

2つのFARA候補機は、まったく異なった機体と言ってよい。これらの機体には、機敏かつ殺傷力に優れていることだけではなく、少量の貨物を空輸できることも求められている。

シコルスキー社のレイダーXは、2組の垂直ローターを装備する同軸反転ローターを採用することにより強力な揚力を発生するとともに、機体後部に装備したプロペラにより、時速287マイル(時速462キロメートル)で飛行することができる。ロッキード社のS-97レイダー実証機に基づいて設計されたこの機体は、ロッキード社のステルス機であるF-22およびF-35ジェット戦闘機と同じようにレーダー吸収コーティングで塗装されている。

ベル社のインビクタス360は、レイダーXに比べて伝統的な設計を採用しているが、狭い場所にも入り込める短いブレードと追加出力を供給できる補助動力装置を備えている。ベル社は、この機体が遠隔操縦も可能であることをアピール・ポイントとしており、時速207マイル(時速333キロメートル)の最高速度を発揮して、陸軍の要求を満たすことができると主張している。

ベル社のV-280バロー
シコルスキー・ボーイングのSB-1デファイアント

FLRAA(Future Long Range Assault Aircraft, 将来型長距離強襲機)

陸軍は、先月、FLRAA計画に関し、2つの機種の開発を続けるという決定を下した。ベル社とシコルスキー社は、JMR-TD(Joint Multi-Role Technology Demonstration, 統合多機能技術実証)用の実証機を既に製造および試験しており、陸軍は、その両方の機体について、性能を比較するための飛行試験を継続することにしたのである。

「JMR-TDで培われ、実証された技術が、陸軍の他の取り組みと相まって、FLRAAの要求事項を策定するために必要な基礎資料をもたらしたのです」航空プログラム・エクゼクティブ事務局FLRAAプロジェクト・マネージャーのデービッド・フィリップス大佐は、先月、ナショナル・ディフェンス・マガジンに語った。

ベル社のV-280バローは、ベル社がボーイング社と共に開発し、米軍が使用しているV-22オスプレイと同じティルトローター機である。V-280についても、ベルはボーイング社と提携していた時期があった。この機体は、ヘリコプターと同じように離着陸できるが、一旦離陸すると、プロペラを前方に回転させ、固定翼機のように飛行することができる。2017年に初飛行し、時速345マイル(時速約555キロメートル)の飛行速度を達成している。10,000ポンド(約4.5トン)の搭載能力を有し、最大14名の兵員を輸送できる。

シコルスキー社のSB-1デファイアントは、FARA候補機のレイダーXと同じ同軸反転式ヘリコプターである。今年の3月に初飛行したばかりであり、一旦は問題が発生して飛行停止となったものの、その後は時速230マイル(時速約370キロメートル)の速度を達成しており、将来的には時速290マイル(時速約467キロメートル)で飛行できると見込まれている。この機体のキャビンは、ブラックホークの2倍の容積を有している。

FARA機に関しては、まだ機体が製造されていないが、FLRAAよりも多額の契約が締結されており、ベル社とは7臆ドル、シコルスキー社とは9億4,000万ドルの契約が締結されている。FLRAA機に関しては、すでに機体が製造されているものの、さらなる試験や改良が必要であり、シコルスキー・ボーイングとは9,700万ドル、ベル社とは8,400万ドルの契約が締結されている。

                               

出典:MILITARY & INTELLIGENCE - Sputnik 2020年03月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

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1件のコメント

  1. 管理人 より:

    Wikipedia上での議論を踏まえ、FLRAAの訳語を「将来型長距離攻撃航空機」→「将来型長距離強襲機」へと修正しました。
    https://ja.wikipedia.org/wiki/ノート:将来型長距離強襲機