航空医官に聞く:色覚異常

質問:眼科医から、色覚異常があると言われました。それでも、身体基準の免除や規定の例外措置(Exception to Policy, ETP)を受けることはできるでしょうか?
航空医官:パイロットにとって色覚が重要なのは、表示装置や警告灯、潜在的な危険要因を正確に見分け、読み取るために欠かせないからです。免除の可否は、一般に、色覚異常の型と程度、航空身体検査の区分によって判断されます。色覚異常が任務遂行能力に及ぼしうる影響は、多くの場合、機内評価(In-Cockpit Evaluation, ICE)で判定します。
杆体と錐体
まず、杆体(かんたい)と錐体(すいたい)について説明しましょう。杆体と錐体は、目の奥にある網膜の2種類の受容細胞で、さまざまな色を見て区別する働きを担っています。杆体は「夜間視」の受容体、錐体は「色と細部」の受容体と考えればよいでしょう。杆体のおかげで暗い場所や薄暗い場所でも物が見えますが、その像は黒・白・灰色にしか見えません。
一方、錐体は明るい場所で最もよく働き、色や細部を見分ける役割を担っています。錐体には、L錐体、M錐体、S錐体の3種類があります。錐体は種類ごとに、それぞれ異なる色の光を検出します。L錐体は赤、M錐体は緑、S錐体は青に感度を持っています。
色覚異常の種類
色覚異常の型と程度は、どの受容細胞に異常があるかによって決まります。
- 夜盲(Nyctalopia)は、杆体の機能が失われることで起こります。機能の喪失は部分的な場合も完全な場合もあり、程度も軽度から重度までさまざまです。夜盲の主な原因には、遺伝性または後天性の目の疾患、栄養不足(ビタミンA)、まれに薬剤があります。
- 異常3色覚(trichromatic)は、3種類の錐体(L、M、S)はすべてそろっているものの、そのうち1種類以上が正常に機能していない場合に起こります。L錐体の機能異常(1型3色覚、protanomaly)では、赤色の識別が難しくなります。M錐体の機能異常(2型3色覚、deuteranomaly)では、赤と緑の区別が難しくなります。S錐体の機能低下(3型3色覚、tritanomaly)では、青と黄色を混同するようになります。
- 2色覚(dichromatic)は、1種類の錐体の機能が完全に失われた場合に起こります。そのため、色覚への支障は上に挙げたものより大きくなります。
- 1色覚(monochromatic)は、機能する錐体が1種類しかないか、まったくない場合に起こります。視覚は大きく損なわれ、この色覚異常のある人が軍の入隊基準や継続勤務の基準を満たすのは難しいでしょう。
検査
色覚の検査方法にはさまざまなものがあります。最も一般的なのは、仮性同色表(Pseudoisochromatic Plate, PIP)による検査です。仮性同色表検査では、色の付いた点の集まりの中に数字や図形を埋め込んだ表を用います。色覚が正常な人はその図形を見分けられますが、色覚異常のある人は見分けられません。仮性同色表検査はスクリーニング(ふるい分け)に用いられ、その結果はコンピューター式色覚検査(Computerized Color Vision Testing, CCVT)で確認されます。コンピューター式色覚検査では、較正した画面に、色の差を段階的に設定した画像を表示することで、色覚異常の型と程度を判定できます。さらに陸軍では、機内評価による検査も行っています。これは、受検者が航空業務に必要な課目を実施できるかどうかを、航空機内で判定する実技検査です。
免除の要件
新たに航空要員を志願する人は、仮性同色表検査で色覚のスクリーニングを受けます。合格点に達すれば、免除は必要ありません。合格点に達しなかった場合は、コンピューター式色覚検査で評価を受けます。コンピューター式色覚検査で合格点に達すれば、免除が推薦されることが多いのですが、境界域の点数の場合は、機内評価で改めて確かめます。機内評価は、課目を完遂できるかどうかに基づき、「GO(合格)」「NO-GO(不合格)」の2段階で判定されます。免除を受けている人は、変化がないかを確認するため、毎年、航空医官と眼科医の診察およびコンピューター式色覚検査を受けることが求められます。
飛行安全!
航空医官への質問はありませんか?
取り上げてほしい質問がある方は、AskFS@quad-a.org まで電子メールでお寄せください。今後の記事で取り上げるよう努めます。個人の健康上の問題については、所属部隊の航空医官にご相談ください。本稿の見解および意見は筆者のものであり、別段の記載がない限り、陸軍省の公式見解と解釈されるべきものではありません。
ジェシー・ブリット大尉(オステオパシー医学博士)は、フォート・ラッカー(アラバマ州)の第1航空旅団の航空医官です。
出典:Color Vision Deficits, ARMY AVIATION, Army Aviation Association of America 2026年9月
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。
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