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陸軍航空の情報センター

ベル360インビクタス用ポップアウト・シートが特許を取得

緊急時にウェポン・ベイから展張することで、小型輸送ヘリコプターとしての利用が可能に

ジョセフ・トレビシック

ベル社は、2019年以来、新型武装偵察ヘリコプターに360インビクタスを提案してきた。今月初め、ベル社の親会社であるテキストロン社の別部門が、この機体のウェポン・ベイに収納でき、少数の負傷者などを輸送できるモジュール式システムについて、特許を取得した。

360インビクタスの試作機。ウェポン・ベイから展張した武装ラックには、ミサイルのモックアップが取り付けられている。写真:ベル

9月12日、「モジュラー式機外展張兵員搭載システム(航空機用)」(modular deployable external passenger system for aircraft)と題される特許権がテキストロン・イノベーション社に付与された。この特許は、2020年にベル・テキストロン社から申請されたものである。ベル社は、一般的にはベル・ヘリコプターまたは単にベル社と呼ばれることが多いが、1960年以来テキストロン社の傘下に入っている。

この特許に関連する文書に、アメリカ陸軍が導入を進めているFARA(Future Attack Reconnaissance Aircraft, 将来型攻撃偵察機)の候補機の一つである360インビクタス用であると書かれてはいない。ただし、添付されている図には、明らかにこの機体を対象としているものが複数存在する。また、説明の内容も、360インビクタスの胴体中央にあるウェポン・ベイに関する過去の説明と完全に一致している。

360インビクタスのウェポン・ベイに取り付けされた特許取得済みのモジュール式座席システム。4名の兵員が搭乗できる。図:米国特許商標局

この特許の取得は、ユーザー名@lfx160219によるXへの投稿により知られるところとなった。その投稿には、このシステムが搭載された360インビクタスのコンピューター生成画像も添付されている。この情報に基づき、ウォー・ゾーン誌は、ベル社にその詳細を確認した。

本特許に関連する文書によれば、このシステムは、「BRU(bomb release unit, 爆弾投下装置)およびALE(and air launched effect, 空中発射型UAV)発射装置を利用した、MDEPS(modular deployable external passenger system, モジュール式機外展張兵員搭載システム)」である。このシステムにより、「ALE格納庫内にALEを格納しない場合に、機内収納が可能な装置を用いて、最大8名の兵員(または4名の兵員と2個の担架)を機外搭載し、空輸することが可能になる」

ポップアウト・シートを展張した状態。図:米国特許商標局
ポップアウト・シートの展張過程(前方から見たところ)図:米国特許商標局
ジャンプ・シートの詳細:米国特許商標局

ALEとは、アメリカ陸軍が計画中のネットワーク化された群れとして運用可能な空中発射型ドローンおよび徘徊弾薬(loitering munition)を指す一般的な用語である。その詳細については、こちらの記事を参照してもらいたい。また、本特許に関する文書のように、空中発射型兵器全体を指し示すものとして用いる場合もある。BRUとは、固定翼機やヘリコプターに搭載される、弾薬などを保持するためのラックを意味するアメリカ軍の用語である。

当該文書によれば、「AGM-114用多連装発射装置などの兵器に代えて、トリプル・ジョイントの関節式アームと開閉・スライド可能なアウター・フレームを組み合わせた装置を標準のBRUから吊り下げられるようになっている」また、「この装置の展張および収納は、スプリングの力を利用して手動で行うことも、動力により自動的に行うことも可能である」

モジュール式兵員搭載システム(担架に載せられた患者を空輸するためのバスケットが装着されている場合)が360インビクタスのウェポン・ベイに格納される過程。バスケットを装着した場合でも、前後にジャンプ・シートを追加することが可能となっている。図:米国特許商標局

この兵員搭載システムを装着する場合には、360インビクタスの両側面にあるスタブ・ウイングの取り外しが必要となる。スタブ・ウイングは、武装などの搭載に加えて、揚力の発生により機体性能を向上させているが、必要に応じ取り外しが可能なように設計されている。ウイングを取り外すことにより、兵員の搭載による重量および抵抗の増加に加えて、機体の速度と航続距離にある程度の影響が生じることになる。

それでもなお、必要に応じて簡単に取り付けおよび取り外しができる兵員搭載システムには、潜在的なニーズがあるのが明らかである。360インビクタスは、このシステムを搭載した場合でも、機首に装備した20mm機関砲、各種センサー、自己防護システなどの重要な機能を維持しつつ、小型強襲輸送ヘリコプターとしての役割を果たすことができる。また、負傷者や墜落したパイロットなどの要救助者を救出するための患者後送ヘリコプターまたは兵員回収ヘリコプターとしての役割も担うことができる。

360インビクタスのこのような任務の遂行能力は、専用の輸送ヘリコプターや患者後送ヘリコプターに比べれば限定的ではあるが、必要なときに追加の能力を発揮できることの価値はけっして小さくはない。ベル社の特許関連文書によれば、「従来、小型偵察ヘリコプターや攻撃ヘリコプターには、通常、兵員搭載能力を追加するための装置が搭載されていなかった」

ただし、ウォー・ゾーン誌が過去に何度も情報を提供してきたとおり、専用の兵員搭載能力を持たない攻撃ヘリコプターが緊急時の輸送手段として使われることは、何十年も前からあった。武装ヘリコプターは、他のヘリコプターよりも高速性かつ機動性に優れ、防護力が高く、小型であるため、危険度の高い戦場への進入・離脱に適した機体だからである。

アフガニスタンで緊急時には人員輸送手段として利用されることもあった海兵隊のAH-1Wスーパーコブラ攻撃ヘリコプター。開放された弾薬ベイのドアに腰掛ける兵員が写っている。写真:パブリック・ドメイン
AH-64アパッチ攻撃ヘリコプターのサイド・スポンソンに搭乗して飛行するイギリス軍兵士。写真:パブリック・ドメイン/イギリス国防省

AVPROというイギリスの企業は、AH-64アパッチのような攻撃ヘリコプターや、ハリアー・ジャンプ・ジェットやF-35ジョイント・ストライク・ファイター用として、兵装と同じようにして搭載できるEXINT(侵入/回収)ポッドを開発したことがある。各EXINTユニットには、1名の兵員が搭載可能であった。

アパッチ攻撃ヘリコプターに搭載されたEXINTポッド。写真:ThinkDefence

さらに、軽攻撃ヘリコプターおよび小型攻撃/武装偵察ヘリコプターのベースとなっている機体は、軍や警察の特殊作戦や患者後送任務などに従来から使用されてきた。その多くは、兵員の侵入および回収を迅速に行うため、機体外部に座席を追加していた。そのような機体のひとつに、現在は退役したアメリカ陸軍のOH-58Dカイオワ・ウォリアー武装偵察ヘリコプターなどのベース機である、ベルのモデル206ジェットレンジャーがある。FARA(Future Attack Reconnaissance Aircraft, 将来型攻撃偵察機)の機種選定で選ばれた機体は、最終的には、このOH-58Dの後継機として運用されることになっている。

FBI人質救出チームのベル407(ベル206の派生モデルであり、OH-58Dの対抗馬)。胴体の両側に隊員搭載用の厚板が追加されている。写真:Government Accountability Office, 政府説明責任局

もう一つの例は、アメリカ陸軍のエリート部隊である第160特殊作戦航空連隊に所属するリトルバードで利用されている、小型強襲輸送ヘリコプターMH-6および軽攻撃ヘリコプターAH-6である。MH-6には、隊員が搭乗するための厚板が機外両側に装備されている。第160特殊作戦航空連隊は、2030年代初頭以降、MH-6およびAH-6の約半数を機種選定されたFARAで更新する予定である。

第160特殊作戦航空連隊のMH-6。この機体は、右側面の兵員搭載用厚板に機関銃を搭載している。写真:アメリカ空軍

これらの状況を踏まえると、360インビクタスのモジュール式機外輸送キットは、FARAの機種選定において、この機体のアメリカ陸軍にとっての魅力をさらに高めることになるだろう。ただし、兵員輸送機能は、現在、シコルスキーが対抗馬として開発中のレイダーXでも、機内搭載で実現されている。下の動画で分かるとおり、レイダーXの機内には兵員を搭載できるスペースが存在する(搭乗可能人員数は6名にとどまる)。

ポップアウト兵員搭載キットにより、陸軍以外の軍種、特に特殊作戦部隊に対する360インビクタスまたはその派生機のアピール度が高まるであろう。

もちろん、特許の取得が、必ずしもその採用に直結しないことに留意しなければならない。ただし、この機能は、長年に渡って関心が寄せられてきた、極めて実戦的な構想に基づくものである。また、360インビクタスの中央ウェポン・ベイに、センサー、電子戦機器、通信機器などのさまざまなシステムを追加できる将来性があることを示すものでもある。

一方、ウクライナ紛争は、MANPADS(携行型地対空ミサイル)とも呼ばれる肩討ち式地対空ミサイルなどの現代の対空火器に対する、360インビクタスのような伝統的なヘリコプターの脆弱性を浮き彫りにした。アメリカ軍も、特に中国などの対等の敵を相手とするハイエンド紛争の蓋然性が高まる中、将来における従来型ヘリコプターの使用に限界があることを公に認めている。

このため、360インビクタスの将来がどうなるかは、極めて不透明な状態にある。そんな中、今回の機外兵員搭載システムの特許取得は、この機体の用途を武装偵察以外に広げるものとして注目すべき動きであろう。

著者連絡先:joe@thedrive.com

                               

出典:The War Zone 2023年09月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

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1件のコメント

  1. 管理人 より:

    ある部外者にこのシステムの説明をしたら、「そんなもので『特許』がとれるんですか?」との言葉が返ってきました。

    いや、これはスゴイと私は思います。
    機内に搭乗した隊員は、被弾しないことを祈りながらパイロットに命を預けるしかありません。
    機外に搭乗できれば、自ら戦いながら目標に侵入・離脱できるのです。
    側方だけではなく、前後に向かって搭乗できるのもポイントだと思います。
    空中機動をやったことのある人でないと分からないと思いますが、兵員搭乗/卸下の間の脆弱性を大幅に解消できそうです。

    FLRAAがV-280に決まっているので、FARAはシコルスキーだろうと思っていましたが、分からなくなってきました。