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陸軍航空の情報センター

2倍の距離、2倍の速度

デジタル・エンジニアリングによって推進されるFLRAAプログラムは、現代戦の要求事項を満たすべく、より高速で適応性の高い航空機によって陸軍航空に革命をもたらそうとしています。

戦場が進化するにつれ、地上の兵士を支援・保護する航空機も進化しなければなりません。陸軍の将来型長距離強襲機(Future Long Range Assault Aircraft: FLRAA)はまさにそれを目的とした機体であり、速度・航続距離・適応性において新たな時代を切り開きます。最先端のデジタル・エンジニアリングに裏打ちされたFLRAAは、単なる新型回転翼機ではなく、将来の紛争において陸軍がどのように計画を立案し、飛行し、戦闘を行うかにおける飛躍的な進歩です。

「速度と航続距離の面で革新的な能力です」と、航空プログラム・エクゼクティブ・オフィス(Program Executive Office Aviation: PEO Aviation)のFLRAAプロジェクト・マネージャーであるジェフリー・ポケット大佐は述べています。彼は2025年3月、アラバマ州ハンツビルで開催された米国陸軍協会の年次グローバル・フォース・シンポジウムにおいて、ベル・テキストロン社が設計した次世代ティルトローター強襲機を「2倍の距離、2倍の速度」と表現しました。また、デジタル・エンジニアリングの導入は「陸軍にとってのデジタル・エンジニアリングの先駆け」となり、国防総省(DOD)の調達体制全体における効率化・コスト削減・能力開発の加速に向けた模範となるとしています。課題は、これが前例のない取り組みであることですが、それによって政府が設計に対して得られる洞察の深さは前例のないものであり、「それによって得られるのは、正しいものを確実に作るということです」と大佐は述べています。

何かを作って、それを横に置いて忘れてしまうような時代は終わりました。デジタル・エンジニアリングにより、陸軍はテクノロジーの力を活用してデジタル上で設計を作成し、実際の製造(金属加工)を始める前に設計変更の影響を判断できるようになります。

「デジタル・エンジニアリングは魔法ではありません」とポケット大佐は述べています。「単に、単一の真実の情報源を持つ共通の環境で、非常に深く掘り下げて設計を見ているだけです。今日現在の設計がどうなっているかが分からないということは決してありません。今すぐスマートフォンを取り出して設計を確認し、現状を把握することができます。これほど心強いことはありません」

試作機が製作されて試験が行われると、多くの場合、修正しなければならない不具合が見つかります。修正の一部は大規模であったり費用が高額になったりする可能性があり、試験プログラムが長引くため、必然的に調達スケジュールが延長されることになります。

「デジタル・エンジニアリングの方が初期段階で迅速であるとは言いません。それは時間への投資であり、知的資本への投資です。しかし試作機を製作する際には、修正が必要なものは小規模で費用もかからず、迅速に修正して試験プログラムを継続し、できるだけ早く兵士の手に能力を届けることができるという絶対的な確信を持つことになるでしょう」とポケット大佐は述べています。「(産業界と)協力しながら、陸軍の要求性能を満たし、強襲航空プラットフォームの性質を真に変える航空機を製造していくつもりです」


FLRAAの実現

FLRAAの背後にある科学技術(S&T)への取り組みは、2013年に統合多用途ヘリコプター技術概念実証(Joint Multi-Role Tech Demonstrator: JMR-TD)プログラムとして始まりました。これは、2倍の距離を2倍の速度で飛行でき、陸軍にとって適切な大きさのプラットフォームを実証することを目的としたものです。

「各軍種にとどまらず、DOD全体のさまざまなプログラムから公表された教訓を調査した結果、前工程でのシステム・エンジニアリングの不足が多くのプログラムでコストとスケジュールの超過につながっているという共通のテーマを見出しました」と、PEO Aviation FLRAAプロジェクト管理オフィス(PMO)の技術管理部門長であるミシェル・ギルバートは説明しています。彼女とそのチームは、過去の歴史的なスケジュールを超える加速されたプログラム進行を支援しながら、前工程での厳密なシステム・エンジニアリングを確保する戦略の策定を任されました。「それが私たちのデジタル・エンジニアリング戦略の開発につながりました。前工程でデジタル・エンジニアリングに一定の投資を行うことで、この二つの目標を支援するために必要なツールが手に入ることが分かったのです」

当初、構想の検証として技術実証機が製作され、「2倍の距離、2倍の速度」の能力を実証しましたが、すべての要求事項を完全に満たしてはいませんでした。FLRAAプログラムは現在、エンジニアリング・製造開発(EMD)フェーズの一環として、FLRAAシステムがすべての要求事項(生存性・維持整備性・統合任務システム等)を確実に満たすよう詳細設計を実施しています。EMDフェーズでは、ベル・テキストロン社が6機のプロトタイプ機と2機の「限定ユーザー」試験機を製作する予定です。プロトタイプ機はシステムが性能・耐空性要求を満たしていることを確認し、作戦上の有効性・適合性・安全性・生存性を実証するために使用されます。また、パイロットと副操縦士が搭乗できる仮想プロトタイプ(航空機シミュレータに類似したもの)も存在し、システム自体の視界と挙動を模倣する周囲のスクリーンを備えています。これらの仮想プロトタイプは、設計の改善や操縦戦術・訓練・手順の発展に活用されます。


新デジタル時代の夜明け

デジタル・エンジニアリングは、より高速で・よりスマートで・より安全な作戦を可能にすることで、FLRAAの任務遂行能力を強化します。具体的には、モデルベース・システム・エンジニアリング(MBSE)ツールである「Cameo」の活用が含まれます。これはモデルや図を通じてシステムのすべての側面を定義・追跡・可視化するための共同作業環境です。また、3Dモデルは設計・製造・組立プロセスを支援し、構想から実行までの開発を合理化します。

FLRAAではMBSEを活用してシステム・アーキテクチャと要求事項のデジタル・モデルを作成し、それらをデジタル・ツインに統合しています。このデジタル・ツインはシステムを定義し、その挙動を実証し、性能を予測するものです。「これにより、システム・データとプログラム・データの関係を捉えるデジタル・スレッドが確立されます。デジタル・スレッドは、PMO・プログラム関係者・ベル・テキストロン社にシステムのより深い理解をもたらします。また、このデータへのほぼリアルタイムのアクセスを可能にする協調デジタル環境も活用しています」とギルバートは説明しています。

性能モデルはFLRAAの性能をエミュレート・シミュレートし、その挙動を把握してフライト・コントロール・ロー(パイロットの入力が機体の操縦翼面の動きに変換される方法を規定する飛行制御システムのアルゴリズムへの修正)を調整するために使用されます。

「これにより、実際にシステムを製作する前に、ユーザー・インターフェースの観点からすべてが正確かつ適切であることを確認することもできます。これらはすべてデジタルで行っています。プロトタイプを実際に製作する前のリスクを低減できる多くのデジタル・モデルが存在します」とギルバートは説明しています。

デジタル・エンジニアリング戦略は段階的に進めるものであるとギルバートは指摘しています。現在は開発中にデジタル・エンジニアリングを活用してシステムを設計・文書化することに注力しています。プログラムの進展に伴い、これらの取り組みは試験段階へと拡大し、最終的には機体からのセンサー・データを各種の装備維持管理ツールと連携させることが計画されています。現時点では、試験・評価フェーズに移行する前に、強固なデジタル基盤を構築することが優先事項です。

「デジタル環境を活用して試験データと機体のシステム設計を連携させることで、検証プロセスをより効率的なものにすることができます。以前は情報間のつながりがなかった場所で情報を相互に関連付け、すべてのサポート・プログラム・データへのアクセスを容易にすることができます」とギルバートは述べています。「システムの認定審査を行う関係者にとって、これは非常に役立ちます。さらに、デジタル・エンジニアリングの取り組みはそれ以降も拡大して装備維持管理を支援するものとなります。概念的には、実地に配備されたすべての機体がそれぞれのデジタル・プレゼンテーションを持てるようになります」

期待を超える —2024年9月9日、第25航空連隊第3大隊の格納庫で、第25戦闘航空旅団指揮官のマシュー・シャー大佐に、部下の兵士たちがFLRAAに何を期待できるかを説明しているFLRAAチーム。ティルトローター機であるFLRAAは、飛行機とヘリコプター両方のハイブリッド能力を備えることになります。(写真:第25歩兵師団、チャールズ・クラーク特技兵)

デジタル・ツールの活用から既に得られている成果の一つとして、ベル社と米国政府の双方が「システムと、搭載システムが互いにどのように影響を及ぼすかについてより深い理解を持つ」ことを余儀なくされている点をギルバートは指摘しています。

また、デジタル・ツールにより、チームはすべてのデータへの関連付けを構築できるようになりました。これ以前は「情報がサイロ化された状態で扱われており、相互に関連付けることができませんでした。これらのツールを活用することで、以前は見つけられなかったかもしれないアーキテクチャ上の懸念事項のような問題を発見しています。それは単に、現在ではすべてが接続されており、設計が私たちの目標を満たしているかどうかを把握・判定しやすくなっているからです」とギルバートは説明しています。

乗員もまた没入型の仮想訓練から恩恵を受けており、不慣れな状況や高リスクな状況への即応性が向上しています。これにより、FLRAAは将来の戦場の要求に対してより機敏で信頼性が高く、適応力のある機体となります。

「当オフィスには仮想現実(VR)機能があり、設計中のシステムを反映して定期的に更新されています。モニターとVRヘッドセットがあり、特別な設備は不要で、いつでも活用できます。これはエンジニアや装備整備担当者、そしてシステムをより深く理解する必要があるすべての関係者に情報を提供する、真に革命的な能力です」とギルバートは述べています。

現実の把握 — FLRAAの拡張現実ラボのモックアップ・デザイン。(写真:米国陸軍)

システム設計中、取得エンジニアは油圧システムがシステム全体にどのように組み込まれるかなど、設計の詳細を完全に把握できていない場合があります。「それはまだ物理的な形では存在していませんが、VRヘッドセットを装着すれば、現在の設計においてそれがどこにあるかを正確に確認することができます。エンジニアや整備員が見て、『このままでは整備できない』と判断することができます。このような問題を早期に発見し、設計変更に影響を与えることができるのです」とギルバートは述べています。


MOSAへの投資

デジタル・エンジニアリングがシステムをより迅速に設計・シミュレート・進化させるためのツールを提供する一方で、モジュラー・オープン・システム・アプローチ(Modular Open Systems Approach: MOSA)は、迅速で柔軟なアップグレードを可能にする方法でシステムが構築されることを保証します。

ギルバートによると、MOSAはオープン・スタンダードを採用するだけでなく、特定の設計プロセスに従ってアーキテクチャがそれらの目標を確実にサポートするようにするためのアプローチです。彼女とそのチームは、システムをどのように構築すべきかを示すアーキテクチャ・フレームワークを開発し、それがMOSAの目標を満たしているかを確認するための分析を行いました。例えば、プライム・コントラクターに完全依存することなくサードパーティによるアップグレードを可能にすること、あるいは最小限の遅延で能力アップデートを迅速に導入することなどが挙げられます。このフレームワークはこれらの要件を定義しており、プライム・コントラクターはこれに従うことが求められます。

適切な処置 — 2024年9月9日、第25航空連隊第3大隊の格納庫で、FLRAAの改善のため、FLRAAチームのメンバーが第25歩兵師団の兵士の身体寸法を測定しています。(写真:第25歩兵師団、チャールズ・クラーク特技兵)

「もう一つ私たちが取り組んでいることは、『デジタル・バックボーン』と呼ぶインフラを機体に搭載することを要求事項として組み込んでいることです。デジタル・バックボーンは、さまざまな構成要素間のすべてのデータ交換を担う機上ネットワークです。システムに統合されるすべての構成要素は、定められたオープン・スタンダードに従わなければなりません。これにより、ある能力をアップグレードする際に機体上の複数のシステムを更新する必要がなくなり、より容易な統合が可能になります」とギルバートは述べています。この概念はMOSAのプラグ・アンド・プレイの考え方と類似しています。

MOSAはモジュラーでスケーラブルな機体アップグレードの解決策を提供し、旧式システムに伴う統合上の複雑さを排除します。このアプローチにより、構成要素の迅速な搭載と交換が可能となり、整備停止時間と改修作業が大幅に削減されます。

「FLRAAでは、アーキテクチャと機上のデジタル・バックボーンを設計・分析するための強固なプロセスと要求事項を確保しています。これに、PMOが適切なレベルのデータ権限を確保する強固な知的財産戦略を組み合わせることで、FLRAAのオープン・システム・アプローチが実現されます。これにより、プラットフォームのアップグレードと維持整備が容易かつ低コストになり、政府側またはサードパーティによる維持整備も可能になります。システムのアーキテクチャにより、プライム・コントラクターへの依存度が低下し、維持整備コストの削減に貢献します」とギルバートは説明しています。

飛行中の実証機 — 前進飛行中のベルV-280技術実証機。(写真提供:航空プログラム・エクゼクティブ・オフィス)

兵士による試験とスケジュール

新しいデジタル技術を導入する際、それが実世界の作戦ニーズを確実に満たすようにするため、兵士による試験とフィードバックは不可欠です。エンドユーザーからの直接の意見は、使いやすさの問題の特定、機能性の改善、そして技術が任務の効果と兵士の即応性を高めることの確認に役立ちます。

FLRAAプログラムにおける兵士のフィードバック取得方法には二つのアプローチがあります。一つは、特別ユーザー評価(兵士タッチポイント)で、機体のモックアップを使用して最適な座席配置の確認や、兵士が機体から安全に乗降できるかどうかの確認などを行います。2025年春に実施されたユーザー評価では、兵士がシステム上でどのようにミッション・プランニングを行うかを観察し、これがミッション・プランニングのソフトウェア要求事項に反映されます。

もう一つのアプローチは仮想プロトタイプ・シミュレーションによるものです。

「仮想プロトタイプを活用してユーザーからのフィードバックを収集し、ユーザー・インターフェースやフライト・コントロール・ローなどの改善に役立てています。開発段階を通じて物理的なプロトタイプ機が完成するまで、特別ユーザー評価の一部として仮想プロトタイプを活用し、反復的なユーザー・フィードバックを得ていく計画です」とギルバートは述べています。


おわりに

FLRAAプログラムは、2024年4月にFLRAAが中間取得経路(Middle Tier of Acquisition)を活用した基本設計のハイブリッド・アプローチを採用し、仮想プロトタイプを開発して以来、大きく前進しました。2024年7月、マイルストーンBにおいて主要能力取得プログラムおよびプログラム・オブ・レコードへと移行しました。

「近い将来は詳細設計に注力しますが、私たちの取得戦略は詳細設計が完了するまでプロトタイプ製作の着手を待つというものではありません。取得戦略を策定した際に意図的にそのようにしました。サブシステムが適切な成熟レベルに達すれば、直ちに製作・組立の段階に移行できます」とギルバートは述べています。「設計と支援分析が完全に文書化されていない段階でも、適切なレベルのリスクを認識した上でサブシステムの製作を開始することができます。これにより、厳密さを保ちながらスケジュール目標の達成を支援します」

現在、陸軍は2030会計年度に最初の部隊への配備を開始し、2031会計年度に最初の完全装備部隊を完成させる計画です。「現在の焦点は設計を正しく行うことであり、これがプロトタイプ製作の成功と将来の量産において重要です。2028年に予定されているマイルストーンCによる量産決定に向けて、プロトタイプの製作と試験を進めています」とギルバートは述べています。

「特に航空プラットフォームは耐空性の確保のために多くの取り組みが必要なため、開発には数年を要します。兵士がシステムを運用できるようになるまでに、やらなければならないことが多くあります。だからこそ、仮想プロトタイプやモックアップのようなものが私たちにとって非常に重要なのです。機体自体の耐空性を実証している最中から兵士を開発に参加させる手段になるからです」とギルバートは述べています。

詳細については、PEO Aviationのウェブサイトを参照してください。

                               

出典:U.S. ARMY, 2025年09月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

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1件のコメント

  1. 管理人 より:

    FLRAAの配備開始は、本記事に記載の時期よりも早まっています。