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陸上航空(陸上自衛隊航空科職種)の教育訓練、運用、装備、安全等に関連する米軍情報の発信源

ラプター(猛禽類)大隊の存在と成功

陸軍中佐 フェルナンド・グアダルーペ・ジュニア
最先任上級曹長 ウィル・G・エリオット 共著

カリフォルニア州フォート・アーウィンに所在するナショナル・トレーニング・センター(National Training Center, NTC)は、編成部隊である旅団戦闘チーム(brigade combat team, BCT)及び多機能航空タスク・フォース(multi-functional aviation task force, MFATF)の作戦準備を支援するため、実弾を用いた対抗方式による実動演習を実施し、統合作戦及び統一行動(unified action)(訳者注:「統一行動」とは、軍事作戦に参加する政府及び非政府組織との活動を含めた軍事行動をいう。FM 3-0 Operation 2-1項参照)の想定に従った一連の行動を演練しています。

A中隊(愛称:REDTAILS)-2013年10月26日、派遣準備部隊とともに、スリング訓練を実施しているUH-72Aの搭乗員
 訳者注:UH-72Aのスリング・フックは、機体に直接装備されておらず、ケーブルでぶら下げられている。搭乗整備員は、機体の左右から顔を出して、機内から機体の誘導を行っているようである。地上勤務員は、スリング作業実施前に静電気放電用の杖(static electricity discharge wand)を使用して機体の静電気を除去している。

ナショナル・トレーニング・センターの重要な一員である第2916航空大隊は、派遣準備訓練等を実施する旅団戦闘チームに対し、各種航空支援を行う部隊です。旅団戦闘チームとは、実任務(decisive action, DA)及び任務即応訓練(mission readiness exercises, MRE)に際して編成される部隊であり、不朽の自由作戦(Operation Enduring Freedom)における展開部隊及び各種統合作戦訓練を実施する統一行動参加組織(unified action partners , UAP)を支援する部隊として、重要な役割を果たした実績を有しています。

ラプター大隊

2011年に創設された第2916航空大隊(愛称:ラプター大隊)は、米国内で最も厳しい環境下で運用される実動航空部隊であり、ナショナル・トレーニング・センターで訓練を行う陸軍旅団戦闘チーム等に対する一般的飛行任務、患者後送及び演習対抗部隊(Contemporary Operating Environment Force, COEFOR)支援の実施を任務としています。また、バイシクル・レイク陸軍飛行場の指揮・統制業務も担任していますが、同飛行場がナショナル・トレーニング・センターの空域に進入する対抗演習参加機だけではなく、飛行訓練を行う空軍の固定翼機も離発着を行うことから、その任務は非常に重要なものとなっています。さらに、ナショナル・トレーニング・センターに所在する全ての陸軍航空機に関する航空整備の管理及び契約監督業務を担任しています。
 第2916航空大隊は、今後も逐次に改編される予定であり、来年度までには、ナショナル・トレーニング・センターMQ-1Cグレーイーグル(米陸軍の無人偵察機)中隊が編組部隊として編入・統合される予定です。

新しい部隊

第2916航空大隊が運用している機体は、ユーロコプター社製EC145の軍用バージョンであるUH-72Aラコタです。この機体は、そのモジュール設計、計器飛行(Instrument Flight Rules, IFR)能力及び航続時間に大きな特徴を有しています。まず、モジュール設計は、各種任務装備品の迅速かつ効果的な搭載を可能とし、対抗演習部隊に対する一般的飛行任務からナショナル・トレーニング・センターで最も重要な任務のひとつである患者後送までのあらゆる任務要求に最大限に対応できる機体となっています。また、計器飛行に必要な搭載機器としては、最新の通信機器一式に加え、FAA認定の全地球測位システム(GPS)を装備した3軸自動操縦装置を装備しており、全地球航空交通管制方式(global air traffic control management)の管制空域で必要となる通信能力を保持し、ラスベガス、サンディエゴ、ロサンゼルスのクラスB空域等の非常に錯綜した空域における運航も可能となっています。さらに、UH-72Aの優れた燃料消費率は、気象条件、飛行要領及びパフォーマンス・プラニングを考慮した上で、十分な予備燃料を確保しつつ、あらゆる任務の遂行を可能としています。

第2916航空大隊編成表
訳者注:大隊は、合計23機ものUH-72Aを装備している。

課題への取り組み

C中隊(愛称:DESERT DUSTOFF)-2013年9月19日、ホイスト訓練を実施する患者後送(MEDEVAC)機
 訳者注:患者後送機には、赤十字マークがペイントされている。ホイスト操作員は、機体から出て、スキッドの上に立って操作を行っている。

一方、UH-72Aのような新機種の装備は、その運用及び訓練に多様な課題をもたらすものです。このため、搭乗員には、非常に複雑かつ困難な状況に対応できる高い練度が要求されています。ご存知のとおり、フォート・アーウィンは、モハーベ・ハイ・デザートに位置する、1,000平方マイル(2,600平方キロメートル)以上の広さを有する軍事施設であり、派遣準備訓練等を実施する部隊は、最新装備の能力を最大限に発揮しつつ、実際の戦闘隊形で実戦的な訓練を行うことができます。このため、ナショナル・トレーニング・センターは、砂漠を機動する地上装甲部隊だけではなく、陸軍航空部隊にとっても、克服が困難な環境下で効果的な訓練ができる施設となっています。第2916航空大隊の搭乗員は、ナショナル・トレーニング・センターの空域内及びその周辺の砂漠環境を安全に飛行するだけではなく、クラスB空域が設定されているロサンゼルス盆地という世界で最も錯綜した空域で航空機を運用できる操縦技量と状況判断能力を保持していなければなりません。多様な機種を装備する陸軍航空の各部隊から第2916航空大隊に転属してくる操縦士及び機付長は、UH-72Aを運用するのが全く初めての者ばかりです。このため、教官操縦士及び訓練担当操縦士は、すべての転入搭乗員に対し、段階的な訓練を実施し、その技量を着実に向上できる態勢を整えています。第2916航空大隊に転入する将兵が備えるべき基本的資質は、「機敏」であることです。転入した将兵は、速やかに自己の能力を最大限に発揮し、各人が搭乗していた機種からUH-72Aへの機種転換を行い、UH-72Aの装備品等の取り扱いに習熟し、機長資格を有する者は機長への昇格を達成し、機長資格を有しない操縦士等であっても、3段階のうち最も高いレベルであるレディネス・レベル1(米陸軍訓練資料TC 1-210参照)の飛行任務を短期間に遂行できなければなりません。

チームの活用

B中隊(愛称:SOKOL)-2013年6月19日、攻撃任務に参加するため、第11機甲騎兵連隊(Armored Cavalry Regiment, ACR)から派遣された地上機動対抗部隊と合流するため推進中の空中対抗部隊(Aerial Contemporary Operating Environment Force, Aerial COEFOR)チーム
 訳者注:対抗部隊任務専用機であるため、特殊なカラーリングが施されている。

ナショナル・トレーニング・センターに特有の事項として、UH-72Aの整備は全てシコルスキー航空メンテナンス・システム(Sikorsky Aerospace Maintenance Systems, SAMS)との契約により実施されています。シコルスキー航空メンテナンス・システムは、整備契約の履行、補給系統の管理、派遣整備の実施、部品及び工具の管理、並びに野整備及び補給処段階整備を行っています。航空機の整備は、すべて連邦航空局(Federal Aviation Administration, FAA)の規則に従って実施され、コントラクターと呼ばれるシコルスキー航空メンテナンス・システムの要員は、大隊航空メインテナンス・オフィサー(battalion aviation maintenance officer, BAMO)と連携し、完全任務可能状態(Fully Mission Capable , FMC)可動率80%を達成する責任を有しています。このシコルスキー航空メンテナンス・システムが導入当初から現在に至るまで成功を収めてきた要因は、彼らのチームワーク、アカウンタビリティ(説明責任)及びコミットメント(義務履行)です。UH-72プロジェクト・マネージャ(調達、補給整備、ライフサイクル管理担当者)、第2916航空大隊、および関連企業のチームは、UH-72Aの整備性を継続的に向上させつつ、ナショナル・トレーニング・センターの任務遂行を確実なものとするため、その能力を最大限に発揮してきました。この結果、装備品製造業者(Original Equipment Manufacturer, OEM)による支援及び現地整備の積極的実施により部品在庫が増加し、非可動時間が劇的に減少しました。また、人的資源の改善や継続的な計画の評価及び見直しにより、第2916航空大隊の完全任務可能状態可動率は、非常に高いレベルに維持されています。このように、このチームは、かつて経験したことのない程の成功を収めてきましたが、引き続き機体の防錆対策、風防の強化、メインローター・ブレード・コーティングによる腐食防止等を焦点として、さらなる改善を推進しています。

訓練への取り組み

本部中隊(愛称:GRIFFONS)-2013年10月28日、定期整備入場前の機体点検を実施中の大隊メインテナンス・オフィサー

第2916航空大隊は、陸軍航空の全兵士に戦場で通用する戦技を習得させるため、実戦的な訓練に取り組んでいます。第2916航空大隊は、UH-72Aによるスリング任務を行うことができる米国陸軍唯一の部隊として、駐屯部隊及び派遣前準備訓練実施部隊の任務及び訓練を支援しています。また、陸軍航空部隊で初めて、地元の州兵部隊と協力して、フォート・アーウィンにおけるドアガン射撃を計画、準備及び実施し、UH-72Aのドアガン射撃要領の検討及び訓練基準の設定に寄与しました。現在は、ドアガン射手に指定される予定の搭乗員に対する訓練を実施しています。さらに、モハーベ・ハイ・デザート及びフォート・アーウィン周辺自治体の緊急事態対処組織と協力した大量患者空輸訓練を初めて実施し、モハーベ・ハイ・デザートにおける初動対処組織との連携を強固にして、即応性の向上を図ったことは、陸軍航空運用の先進性を示す一例でもあります。

能力開発のための戦略

第2916航空大隊の存在とその成功は、陸軍航空の卓越した能力開発戦略の証左であり、早期の段階から高度な技術が教育・構築され、じ後、逐次に増強されて、部隊間及び装備間での相互運用性の向上が図られてきました。この過程を通じて、多くの陸軍航空指導者を訓練・育成し、軍が現在必要とする能力と多様性を有する信頼される人材を上級司令部に輩出しています。ラプター大隊の基盤は、リーダーシップ、航空分野の專門家及び「指揮し、訓練し、そして勝利できる」最高レベルの即応性を有する将兵によって形成されているのです。

陸軍中佐フェルナンド・グアダルーペ・ジュニアは、カルフォルニア州フォート・アーウィンのナショナル・トレーニング・センター隷下の第2961航空大隊の指揮官であり、最先任上級曹長ウィル・G・エリオットは最先任下士官です。
出典:ARMY AVIATION, March 2013, Army Aviation Association of America
翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット
備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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