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翻訳作業の負担軽減には翻訳メモリ

はじめに

昔のことを言うと若い人に笑われてしまいそうですが、私が英語の業務を始めた頃の道具は、紙の辞書と機械式の英文タイプライターでした。その後、ワープロ専用機を使うようになり、さらにパソコンを使うようになって、翻訳作業の負担は大きく軽減されました。

翻訳作業において、パソコンを活用できるかどうかは、その効率性、正確性に大きく影響を与えると思っています。そこで、私の翻訳作業に欠かせないものとなっている「翻訳メモリ」について、その概要を紹介したいと思います。

翻訳メモリとは

原文を構文解析し訳文を出力する翻訳作業そのものを行うソフトを「翻訳ソフト」と言い、これまで数多くのものが開発、公開されてきました。その性能は徐々に向上していますが、未だに不完全な訳語が出力されることが多く、翻訳者に代わるものとはなっていません。

翻訳メモリの構造(一例)
翻訳メモリはワード、エクセル、パワーポイント、PDFなどの形式のファイルを読み込んで、トランスレーション・メモリを活用しながら翻訳作業を行った後、翻訳結果を元通りのファイル形式で出力できる翻訳支援ソフトです。

一方、翻訳作業そのものを行うのではなく、翻訳結果をデータベース化して必要な過去に自分が行った本訳を自動的に検索・抽出する等により、翻訳作業を支援するソフトを「翻訳メモリ」と言い、多くの翻訳者にその効果が広く認められ、活用されています。

翻訳メモリの効果を理解しやすくするため、まずは、翻訳メモリを使わない場合の翻訳作業の一般的な手順を考えて見ましょう。ワードファイルやテキストファイルの原文をワードやエディターで開き、文の切れ目に改行を入力し、その下に訳文を入力してゆきます。この際、過去に翻訳したものと同じような原文が出てきた場合は、その都度、過去の翻訳結果を参照し、訳文をコピー&ペーストします(同じ原文の訳文がまちまちでは困るからです)。訳文の入力が完了したならば、訳文に原文と同じ書式を設定したうえで原文を削除し、ファイルの名前を変えてから保存します。この一連の作業は、特に長文を翻訳する場合、大変面倒なものとなります。

これに対し、翻訳メモリを使う場合には、原稿をワードではなく、翻訳メモリで開きます。すると画面に原文が表示されますので、それに対応する訳文を入力してゆきます。この時、過去に翻訳したものと同じような原文がでてきた場合は、それに対応する訳文が自動的にデータベースから検索・表示されます。また、原文に対応する用語集や辞書が自動的に表示されるように設定することもできます。さらに、翻訳メモリから翻訳ソフトを呼び出し、原文を機械翻訳で下訳させてから手直しすることもできます(私の場合は、グーグル翻訳のお世話になっています。機械翻訳で下訳をさせる最大のメリットは、簡単な単語の読み間違えや数字の置き換えの誤りなどの、単純ミスを少なくできることです。)訳文の入力が終わって、ファイルを保存すると、自動的に原文と同じ書式が適用された訳文が原文と同じファイル形式で出力されます(図参照)。

このように、翻訳メモリを使えば、極めて円滑かつ効率的な翻訳作業が可能となるのです。

利用可能な翻訳メモリ

翻訳メモリにもいろいろなものがありますが、最もポピュラーなのは、「Trados」という翻訳メモリであり、翻訳業界の標準的な翻訳メモリとなっています(プロの翻訳者の場合は、Tradosのファイル形式での納品が求められることも多いようです)。また、最近では、「MemoQ」という翻訳メモリも注目されているようです。しかしながら、これらの翻訳メモリは、かなり高価なことから、私は使用したことがありません。

私が現在使用しているのは、「OmegaT」というフリーの翻訳メモリです。その概要については、こちらのコラムで紹介していますが、必要最小限の機能を持ちながら、軽快に動作するところが気に入っています。

なお、以前は、「Wordfast Pro」という比較的安価な翻訳メモリを使用していました。翻訳作業の進捗状況の表示などの機能が充実していて、メニューも分かりやすいアイコンで表示されます。この翻訳メモリと「OmegaT」との違いについては、こちらのコラムで紹介しています。

おわりに

翻訳メモリは、翻訳作業の負担を劇的に軽減してくれる強い味方です。私の場合、これを使うようになってからは、もうワードやエディターでの翻訳作業には絶対に戻れません。いずれの翻訳メモリも試用ができますし、「OmegaT」ならば無料で使用できますので、一度試してみてはいかがでしょうか。

このコラムは、「パソコン(Personal DictionaryとWordfast Pro)を活用した翻訳作業」として掲載されていたコラムから、翻訳メモリに関する部分を抜粋・編集したものです。

発行:Aviation Assets, 28 March 2017

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