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陸軍航空の情報センター

死亡事故の発生に伴いオスプレイの飛行規程を改訂

リチャード・ウィッテル
2015年7月16日

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ワシントン:本ウェブサイト(ブレイキング・ディフェンス)が確認したところによれば、5月17日にハワイで発生した死亡事故への対応の一環として、全飛行部隊のMV-22のパイロットに対し、砂塵環境下で30秒以内に着陸を完了できない場合は復行することを指示する命令が発簡された。経験を積んだオスプレイやヘリコプターのパイロットであれば、このようなリスクの高い環境での着陸は、10秒程度で終わらせるのが通常であるが、これまでは、60秒以内と規定されていたのである。

訓練飛行中のMV-22Bオスプレイがハードランディングし、搭乗していた2名の海兵隊員が死亡したこの事故の調査は、まだ継続中である。このため、事故原因は公式には発表されていないが、当該機は、砂塵の降着地域の上空で45秒間という通常よりも長い時間のホバリングを行った後、両エンジンが出力低下に陥り、左側エンジンにコンプレッサー・ストールが発生して停止した、とブレーキング・ディフェンスは確認している。

新しい飛行規程は、事故発生状況を撮影した旅行者のビデオ、機内システムからダウンロードされたデータおよび生存者からの証言に基づいて起案されたものと考えられる。

オスプレイのパイロットたちは、RVL(Reduced Visibility Landing, 視界不良状態での着陸)間は、エンジン性能を監視するとともに、RVLの訓練飛行またはRVLが予期される任務を実施する場合は、全搭乗員に対し「ホバリング中のエンジン停止」における手順を確認するように義務付けられている。

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RVLとは、ローターのダウンウォッシュが埃、砂、雪、その他の粒子を巻き上げ、搭乗員が地上を視認できない状態を言い、ティルトローター機であるオスプレイだけではなく、ヘリコプターにも同じように発生するものである。2001年以来、そのような状態において墜落した米軍ヘリコプターは、420機に上っている。

オスプレイにおいても、「プロップローター」が発生する強烈なダウンウォッシュにより、そのような状態が生じる場合が少なくない。「プロップローター」は、ヘリコプターのローターと比較して、直径が小さく、ブレードがより強くねじられており、前進飛行時にプロペラとしても機能できるようになっている。

一部の最新式ヘリコプターと同じように、MV-22Bにも電子式操縦系統および「グラス・コックピット」が装備されている。このため、オートパイロットの1つの機能である「フライト・ディレクター」と「ホバー・ページ」をカップリング(連携)させれば、RVLにおける操縦を援助することが可能である。ホバー・ページには、中央に航空機が描かれた円と、そこから搭乗員があらかじめ座標で指定した着陸地点まで伸びる線が「ロリポップ・キャンディー」のように表示されるようになっている。

十分な経験を有するパイロットであれば、プロップローターが巻き上げる砂塵や粉塵雲よりも高い高度(通常、地上50フィート)でホバリングに移行し、フライト・ディレクターをホバー・ページにカップリングさせてから機体を自動的に着陸させることにより、ドリフト(横滑り)のリスクを回避することができる。フライト・ディレクターとホバー・ページのカップリングがうまくいかなかった場合、パイロットは、その手順を繰り返すことになっている。

オスプレイは、エアプレーン・モードやある程度までプロップローターを上に向けた状態であっても、一方のエンジンのみでの飛行が可能である。しかしながら、一方のエンジンだけでホバリングできるのは、搭載物の重量が軽く、高度が低いという条件が揃った場合だけに限定される。ハワイにおける事故においては、左側エンジンが停止した後、右側エンジンだけでは、機体の降下を止めるために必要な出力を供給できなかった。

その日、当該機が既にその砂塵の多い着陸地域で何回も着陸を繰り返していたことが、その要因の1つであった可能性がある。当該機は、また、「地面効果外」のホバリングを行ったため、ダウンウォッシュが地面に直接到達する高度よりも、より多くの出力を必要としていた。さらに、22名の海兵隊員を搭乗させていたため、荷重が大きかったと考えられる。

                               

出典:Breaking Defense, Breaking Media, Inc. 2015年07月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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1件のコメント

  1. 管理人 より:

    この記事は、オスプレイに関するノンフィクション「ドリーム・マシーン」の原著者であるリチャード・ウィッテル氏が、オスプレイ関係者にとって参考となる記事として紹介してくれた、いくつかの記事のうちのひとつです。他の記事についても、引き続き、翻訳・掲載してゆきたいと思います。