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陸軍航空の情報センター

MV-22オスプレイ死亡事故(2017年)の原因

海兵隊員を満載した状態で米海軍ドック型輸送揚陸艦グリーン・ベイに着艦中、急激に高度が低下(2022年7月3日)

タイラー・ロゴウェイ

ある動画がオンラインで公開された。そこには、2017年8月5日、第265海兵中型ティルトローター飛行隊所属のMV-22Bオスプレイが、オーストラリアのクイーンズランド近海でUSSグリーンベイ(LPD-20)に着艦しようとして墜落する様子が映し出されていた。私たちの知る限り、この動画はこれまで公にされていなかったものである。そこには、非常に恐ろしい光景が映し出されていた。当該機は、サンアントニオ級ドック型輸送揚陸艦の多くの航空機がひしめき合う飛行甲板に向かって、通常どおりの進入を行っているように見えたが、突然、高度を下げ、激しくピッチングおよびバンキングしながら左側エンジンナセルを甲板に叩きつけた。撮影者である乗員は、当該揚陸艦の格納庫入口付近から着陸の模様を撮影していたが、危険を感じるとカメラを回したまま退避した。

この動画は、過去24時間以内にYoutubeのWhat You Haven’t Seenというチャンネルに投稿された。

強襲揚陸艦は、近傍に他機が駐機していたり、燃料や武器が集積されていたりすることが多く、離着陸に利用できる地積が小さくて逃げ場がほどんどない。このため、ヘリコプター(またはティルトローター)が墜落すると、甚大な被害をもたらす可能性が高い。オスプレイ自身も大量の燃料を積載しており、かつ、甲板などに接触するとローターブレードの破片が飛散し、人員や航空機に危害を及ぼす恐れがある。(訳者注:オスプレイのローターブレードは、エアプレーン・モードで滑走着陸した場合の安全性を確保するため、比較的細かい破片になるように設計されている。)

この恐ろしい事故により、3名の隊員が死亡し、23名の隊員が負傷した。(訳者注:事故機には合計26名の隊員が搭乗していた。負傷者の中に甲板上にいた人員が含まれているという情報は確認できていない。)

USSグリーン・ベイの飛行甲板

2018年5月21日、USNIニュースは、事故調査委員会の調査結果に関する記事を掲載していた。その骨子は、次のとおり。

調査の結果、事故発生時の当該機の任務は、複雑ではあるがリスクは低いものであった。当該機は、ダウンウォッシュが強すぎたため、ホバリング状態を継続するための推力に不足が生じて墜落した、と海兵隊は結論付けた。ただし、ある国防総省関係者は、当該機は積載重量が重すぎた可能性がある、とUSNIニュースに語っている。当該関係者によると、海軍航空システム・コマンドの技術者たちは、着陸中の機体に対するダウンウォッシュの影響に注目し、オスプレイがダウンウォッシュに打ち勝って安全に着陸するために必要なパワーについて検討した結果、着陸に必要なパワーを確保するため、海上で艦船に進入する際にオスプレイが搭載できる重量に関する規定を修正した。本事故の発生に関し過失を犯した者はおらず、3名全員の死亡が不正行為によるものではなく、職務上やむを得なかったものであった、と調査報告書は明言している。

当該オスプレイは、その日、3機編隊のうちの1機として、大使館への増援、非戦闘員の避難、死傷者の空輸および兵站活動を想定した複数の複雑な任務を遂行していた。強襲揚陸艦USSボノム・リシャール(LHD-6)からラズベリー・クリーク沿岸まで飛行して大使館に増援要員を投入し、給油のために揚陸艦に一旦帰投した後、近傍にいたUSSアッシュランド(LSD-48)に貨物および人員を空輸し、ボノム・リシャールに帰投し、甲板上で大量の死傷者を空輸する訓練に参加し、死傷者をラズベリー・クリーク沿岸まで空輸し、他の人員を搭乗させてボノム・リシャールに帰投し、もう一度ラズベリー・クリークに戻ってボノム・リシャールに戻り、最後にもう一度ラズベリー・クリークまで飛行して非戦闘員の避難民をピックアップし、グリーン・ベイに向かったところで事故が発生したのであった。

グリーン・ベイに進入する際、艦船の戦術航法装置(Tactical Air Navigation)との接続に問題が生じたため、航空管制官による誘導が行われた。最終進入時、無線機を発着艦周波数に切り替えた。報告書によると、グリーン・ベイの5番スポットに着陸するように指示された当該機は、それに従った適切な対応を行っていた。

報告書では伏せられていたが、USNIニュースによると海兵隊少佐である当該機の機長は、「TCL(推力制御レバー)を使用してパワーを調整し、毎分200〜300フィートの降下率になるように修正しようとしていた」が、飛行甲板に接近した際に機体の高度が急激に低下した、と報告書は述べている。機体の沈下を止めることができなかった機長および副操縦士(死亡しベンジャミン・クロス中尉)は、ナセルを前方に倒すなど、複数の対応を行っている。左側のナセルがグリーン・ベイの飛行甲板に衝突し、機体は飛行甲板の右舷に沿って前進し、鋼鉄製の階段に衝突した。左側のプロップローター・ブレードが飛行甲板および付近に駐機していたヘリコプターに損害を与え、コックピットが衝撃により押しつぶされたため機長は腰部および脚部を負傷した。機体は、30フィート下の海面に落下し、コックピットに生じた穴から急速に水が侵入して、機首方向から沈没した。

USNIニュースの記事は、調査結果の内容にさらに踏み込み、事故後のオスプレイの運用がどのように修正されたかや、2年前にUSSニューオーリンズで発生した軽微な事故との類似性などについて解説している。記事の全文については、下記のリンクから参照されたい。

https://news.usni.org/2018/05/21/investigation-2017-osprey-crash-due-heavy-downwash-excessive-aircraft-weight-may-contributed

隊員を満載した状態で事故が発生したにもかかわらず、3名の犠牲者を除いた隊員たちが生還できたことは、奇跡に等しい。さりながら、事故の発生に全く責任のない隊員たちが亡くなったことは、痛恨に堪えない。死亡した隊員は、つぎのとおり。

混乱を極めた長い開発期間を経た後、成功を収めてきたオスプレイであるが、このティルトローター機に対する批判の声も根強く残っている。MV-22だけを見ても、先月には、カリフォルニア州エルセントロ近郊で海兵隊のオスプレイが墜落し、搭乗していた5名全員が死亡している。また、3月にも、別のMV-22がノルウェーで墜落し、4名が死亡している。しかし、何百機もの海兵隊機および空軍の同系列機が、日々、想像を絶するような厳しい環境下で、しっかりと任務を遂行し続けているという事実は、オスプレイ計画が飛躍的な進展を遂げてきたことの証左にほかならない。

この動画が改めて認識させてくれたのは、特に高い危険性が潜む海上運用環境における回転翼機の運用では、通常の状態から壊滅的な状態まで、事態は極めて急速に悪化する、ということである。隊員たちにとっては当然のことなのかも知れないが、危険を伴う非常に困難な任務を毎日のように遂行している勇敢な男女がいることを忘れてはならない。

改めて、亡くなった隊員たちの冥福を祈るとともに、国防のために命を懸けている隊員たちに感謝の意を表したい。

編集者注:動画が最初に投稿されたのはYoutubeのWhat You Haven’t Seenチャンネルであるという記述は、編集部において修正を加えたものです。

                               

出典:The WARZONE 2022年07月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

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3件のコメント

  1. 匿名 より:

    可哀そう

  2. 上野永遠 より:

    かわいそうだなーーーー。!!