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陸軍航空の情報センター

ハード・クラッチ問題:日本のV-22への影響は今のところなし

アメリカ海兵隊機の修理は順調に進捗

コリン・クラーク

ある高官は、ブレイキング・ディフェンス誌に対し、「飛行制限を伴う今回の処置は、この問題の発生率をこれ以上増加させないだけでなく99%減少させる、最善のものだろう」と語った。

2016年に行われたPhilippine Amphibious Landing Exercise 33において、人道支援合同調査団(Joint Humanitarian Assistance Survey Team, JHAST)を搭乗させるMV-22オスプレイ(撮影:海兵隊/ロジャー・ホレンベック少佐)

シドニー発-アメリカ国防総省の高官がブレイキング・ディフェンス誌に語ったところによると、ハード・クラッチ問題によりアメリカ軍の多くのV-22オスプレイが飛行停止になったが、世界で最も新しい日本のV-22オスプレイには影響が生じていない。ただし、それはこの機体が将来にわたって交換部品を必要としないことを意味するものではない、という。

その高官は、オーストラリアで取材中のブレイキング・ディフェンス誌に対して、アメリカ海兵隊が、アメリカ空軍による対応を不必要であると判断してからわずか数ヵ月後に、一部のオスプレイについて飛行停止を命じた理由について、新たな見解を示した。

2月4日、アメリカ国防総省は、オスプレイのエンジンと動力伝達系統を接続する「インプット・クイル・アセンブリ」と呼ばれるエンジン部品の摩耗を理由に、海兵隊、海軍および空軍が使用するオスプレイの「一部」を飛行停止にすると発表した。この飛行停止措置が日本のオスプレイに影響を及ぼすのかどうかは、これまで明らかにされていなかった。

日本は17機のオスプレイを保有しているが、その受領を開始したのは2020年7月のことであり、海兵隊の大部分の機体よりも飛行時間が少ない。このため、日本のオスプレイは飛行を停止する必要がない、とその高官は述べた。ただし、飛行時間の増加に伴い将来的に部品交換が必要になる可能性については否定しなかった。

ブレイキング・ディフェンス誌は、本件に関するコメントを日本政府に求めたが、回答は得られていない。

その高官は、オスプレイが、「毎月」、飛行停止を解除され、順調に戦闘態勢に復帰していることに満足していると述べた。ただし、具体的に何機のオスプレイが飛行停止になり、どれくらいの期間で飛行再開し、何機が修理を完了したのかについては明言を避けた。

「最初の30日間で状況は改善し、健全な状態に回復しました。現在も、毎月改善が見られており、必要な部品の製造が進捗するに従って、修理期間の短縮が図られてきています」と述べた。「修理期間は、50%近くまで短縮されました」その高官によると、問題の根本原因については、まだ特定に至っていないが、実証された対策を実施しつつ、「根本原因を追求するための4つの取り組みと24の事業」が継続されているという。

海軍、海兵隊および空軍用の派生機を総括するV-22プログラム全体では、2010年以来、15件のクラッチ関連事故が発生しており、そのうち10件は海兵隊機によるものであった。その15件の事故の中に、海軍のCMV-22派生機で発生したものはない。

昨年8月、空軍は安全点検のためにV-22を飛行停止にしたが、海兵隊はそれに同調せず、パイロットによる対応で問題の発生を防止できると主張し、しばらくの間その状態を継続していた。空軍の関係者は、海兵隊がこの問題を真剣に受け止めていない、と感じていた。

2月になると、この状況に変化が生じた。3つの軍種すべてにおいて、飛行停止の措置がとられたのである。当時、ワシントンの当局者は、ハード・クラッチ状態のリスクが増加していることを示す新たなデータが得られた、と述べたが、それ以上の詳細は明らかにしていなかった。今月に入って、その国防総省の高官は、ブレイキング・ディフェンス誌に対して、計画立案者は2つのリスク・モデルを立ち上げている、と語った。1つは発生率を考慮したもので、もう1つは発生した事象の程度を分析したものだという。

「これらの活動を通じて、ハード・クラッチ・エンゲージメントの発生率の増加が確認されたのです」とその高官は述べた。信頼性モデルを利用することで、多くの事故が海兵隊で発生したのは、特定の飛行時間において部品の摩耗が生じたためであることが判明した。

「そのデータは、発生率が今後も上昇し続ける可能性があることを示していました。したがって、飛行制限を伴う今回の処置は、この問題の発生率をこれ以上増加させないだけでなく99%減少させる、最善のものだと思います」

その際に強調されたのは、モデルから得られたデータやパイロットの訓練のおかげで、飛行停止された海兵隊機も、必要に応じ、安全に任務を遂行できるということである。「パイロットは、動力伝達系統に問題が生じても適切に対処できるように十分に訓練されています。それは、何年も前から行われてきたのです」とその高官は語った。

また、「我々は、いつでも、いかなる任務や任務に対しても即応できる態勢にあります」と述べた。「もし大統領などから(大地震が発生した)トルコに海兵隊を派遣せよと命ぜられたならば、MV-22を使っていたでしょう。また、太平洋でのいかなる災害に対しても、数時間のうちにこの機体を飛せる態勢を整えています。」と付け加えた。

飛行停止が発表されて以来、海兵隊の整備員やパイロットは、この問題の進展状況に関する情報を継続的に提供され、「重要な意見具申」を発信してきた。

「上級指揮官は、透明性を確保しています。私や技術者たちは、V-22を飛行させるすべての部隊に直接赴き、コミュニケーションをとってきました。」

もうひとつの良いニュースは、交換部品が複数の会社によって製造されていることである。

「問題の部品は、話題になっている部品枯渇問題が生じているものではありません。まだ生産中の部品であったため、設計段階に戻ったり、停止していたラインを再稼働したりする必要がありませんでした」とその高官は述べた。

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出典:BREAKING DEFENSE INDO-PACIFIC 2023年03月

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

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