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V-22はヘリコプターよりも安全かつ効率的

リチャード・ウィッテル
2011年8月9日

V-22 Osprey

編集者である私が、今回、ある重要な(たとえ重要でないとしても独立した)V-22に関係する組織からの取材に基づくこの記事を取り上げることにしたのは、それに関する基本的な疑問に答えることが重要であると考えたからである。その疑問とは、V-22はアメリカが費やした生命や財産に見合うものなのか、というものである。記者であるリチャード・ウィッテル(オスプレイに関する文献の著者)の答えは、それを完全に肯定するものであった。ニューヨーク・タイムズ紙のような権威ある組織に所属し、V-22をいまだに「問題のある」航空機とみている素人たちにも、ぜひ、このことに気づいて欲しいものである。もうその時は来ているのだ。今回のリチャードの記事は、この問題の実態に可能な限り迫ったものである。編集者より

軍産複合体という邪悪な組織は、ヘリコプターと固定翼機が突然変異で合体したような、危険かつ高価極まりない奇妙な飛行マシーンを生み出した。その獣を殺そうとして輝く鎧を身に着けた騎士たちが果敢に挑んだが、GAO(会計検査院)報告書で武装した思想の偏ったご機嫌取りや盲目のインテリたちによって阻止されてしまった。

これは、V-22オスプレイの最も厳しい批評家たちが信じているおとぎ話である。しかし、海兵隊が四半世紀にわたってその存続をかけて戦ってきたティルトローター輸送機をめぐる物語は、もっと幸福感に満ちたものなのである。オスプレイという醜いアヒルの子は、今まさに、白鳥に生まれ変わろうとしている。

海兵隊および空軍特殊作戦コマンドにより、これまで4年近くも戦闘地域で運用されてきたオスプレイは、パイロットたちからの強い支持を得ている。V-22は、見た目は決して美しい飛行機ではないけれども、その飛行は、上品かつ驚くべきものである。翼端の2つの巨大なローターを、離着陸時にはヘリコプターのように上方に向け、前進飛行時には固定翼機のように前方に傾ける。そのことにより、時速約290マイルで巡航することができる。これは、ローターの空気力学的特性のため最高速度が時速140から175マイルに制限される軍用ヘリコプターに比べて、2倍以上速い。

2007年に海兵隊がオスプレイをイラクの作戦に投入するまでの間に、オスプレイには、海兵隊がかつて調達したいかなる装備品よりも多額の予算と多くの人命が費やされてきた。その25年間の開発期間に220億ドルの予算が投入され、30名の人命が失われたのである。オスプレイは、まさしく醜いアヒルの子であった。

その後、オスプレイの物語は全く違った展開を見せるのであるが、ニューヨーク・タイムズ紙社説などのオスプレイ反対者たちは、その物語の半ばで眠りについてしまったかのようである。タイムズ紙は、この2月に「危険なV-22オスプレイは、今こそ、その計画を縮小すべきだ」と主張した。また、4月にも「事故の多いV-22オスプレイ」の計画中断を要求した。

開発中に発生した3件の死亡事故のうち2件が発生していた10年前の時点であれば、オスプレイに「危険」だとか「事故の多い」だとかというレッテルを張ることは、正当なことであったかも知れない。しかし、その数字こそが真実を物語っている。オスプレイが運用開始に至るまでに発生した死亡事故は、3件に過ぎないのである。これらの事故により30名が死亡したのは、オスプレイが兵員輸送機であるが故のことである。試験飛行中に発生した1件の悲運な事故の最中に、19名の海兵隊(そのうち15名が搭乗者)が死亡してしまったのだ。これらの悲惨な事故の後、米国防総省は、オスプレイを17ヵ月間飛行停止にし、問題の改善を図った。

2001年から2005年にかけて、オスプレイの再設計と再試験が行われた。このことは、私が自分の著書である「ドリーム・マシーンー悪名高きV-22オスプレイの知られざる歴史」の中で述べているとおりである。配置が不適切なため、重大な作動油漏れが頻繁に発生していた油圧配管は、その経路が変更された。作動油漏れが生じた際の作動に問題があり、死亡事故の原因となった飛行制御ソフトウェアの欠陥も是正された。3件の事故のうち最悪の事故の原因となった、当時まだ良くわかっていなかったある空力現象については、3名の勇敢なテストパイロットたちによる周到に準備された試験飛行が繰り返し行われ、その現象が再現され、どうやったらそこから脱出できるのかが究明された。その結果、この「ボルテックス・リング・ステート(渦輪状態)」という現象に陥らないようにするための警報装置が初めて搭載されることになった。

これらの努力の結果、5月にカリフォルニア州民主党のリン・ウールジー下院議員は、V-22の国防予算を削除しようとする無駄な努力を繰り返そうとしたとき、無意識のうちに真実を語ってしまうことになった。議員は、「オスプレイの事故は、実質的に伝説となっている」と主張したのである。

「伝説」という表現は、まさに正しい。2000年12月11日以来のオスプレイの死亡事故発生件数は、1件だけである。(訳者注:その後2017年8月までの6年間に3件の死亡事故が発生している)。11年間で1件に過ぎないのである。2010年4月8日、1機の空軍のV-22が、アフガニスタンで夜間に襲撃を行う米陸軍レンジャー部隊を空輸中、予定していた降着地域の0.5マイル(約805メートル)手前に地面に滑走するような形で墜落した。前輪が水路に衝突し、機体が背中を下に向けてひっくり返り、搭乗していた22名のうち4名が死亡した。この事故のほかに2000年以降発生したオスプレイのクラスA事故(死亡、身体への障害、または200万ドル以上の損害をもたらしたもの)は、2007年11月6日にノースカロライナ州の海兵隊訓練飛行隊所属のV-22が一方のエンジンの空気取り入れ口に取り付けられている砂塵フィルターに火災が発生したため、緊急着陸した1件だけである。その事故による負傷者はなく、その後、EAPS(エンジン空気・砂塵分離機)と呼ばれるフィルターの設計が変更された。

残念ながら、オスプレイ反対者たちがオスプレイに代えて購入すべきだと主張するヘリコプターは、そのような優れた安全記録を持っていない。通常のヘリコプターとオスプレイの安全に関する記録を比較すると、次のとおりである。2001年10月1日以来、米軍は、世界各地で405機のヘリコプターを失い、583名の米国人が死亡している。そのうち敵からの射撃により墜落したものは、その3分の1に過ぎない。その死亡者の中には、8月6日にタリバンの抵抗勢力が発射したRPG(携行式ロケット弾)により撃墜されたCH-47輸送ヘリに搭乗していた30名の米軍兵士が含まれている。また、この統計には、この他に2001年以降に墜落した6機のCH-46シーナイトで死亡した米国人20名も含まれている。CH-46は、海兵隊がオスプレイへの更新を進めているヘリコプターである。

10万飛行時間あたりのクラスA事故の発生件数に基づけば、再設計され、再試験されたオスプレイの安全に関する記録は、海兵隊が運用する回転翼機の中で最も安全なことを示している。これらの見解は、すべて海軍安全センターの公式の統計に基づくものである。

このような記録が達成されてからというもの、オスプレイを「危険」だとか「事故の多い」と指摘する人は皆、今日では、事実を知ろうとしないか、または意図的にそれを無視するようになっている。

オスプレイがこの偉大な安全記録を打ち立てることのできた理由の1つには、2007年以来、海兵隊および空軍がそれぞれのV-22をおおよそ2万時間の戦闘任務に使用する間、アフガニスタンでは、AK-47に使われる7.62mm弾に被弾した機体が何機もあったにも関わらず、そのすべてが無事に基地に帰投し、1機も撃墜されなかったことが挙げられる。ある事象がなぜ発生しなかったのかを明らかにするのは難しいことではあるが、その1つの理由としては、タリバンの装備する武器でV-22に命中させることはヘリコプターに命中させるよりも難しい、ということが挙げられるかも知れない。オスプレイは、ヘリコプターと同じように離着陸を行うが、離陸後にエアプレーンモードに切り替えて上昇することにより、降着地域から素早く離脱し、小火器の射程外へと出ることができるのである。また、海兵隊のオスプレイの飛行時間は、敵の脅威がほとんどない8,000フィート以上の高空での飛行がその大部分を占めているのである。速度が遅いヘリコプターは、地面近くを飛行する方が撃墜しようとする敵から発見される可能性が少ないため、戦闘地域で低空を飛行することが多い。しかしながら、低空での飛行は、8,000フィート以上の高度を飛行するのとは違って、小火器による被弾の可能性がある。

上記以外の点においても、オスプレイの性能は、兵士の命を守ることに貢献している。3月にリビアでF-15Eから脱出した後、オスプレイで救助されたパイロットからは、次のようなに語っている。USSキアサージから離陸した2機のV-22は、その強襲上陸艦から150マイル(約278キロメートル)ほど離れたそのパイロットのところまで約45分間で到着し、独裁者のムアマル・ガダフィーが率いる軍に発見される前にそのパイロットを救助することができたのである。

今日において、オスプレイに反対する唯一の正当な理由はその価格であろうと思われる。しかし、オスプレイ反対者の多くは、この点においても事実をきちんと把握できていない。

「V-22オスプレイというヘリコプターには、長きにわたってコスト超過という問題が生じてきた」アメリカ進歩センターは、7月のはじめに、それが今日のニュースであるがごとく報道した。確かに、まだ醜いアヒルの子だったオスプレイには多くのコスト超過が生じていたし、原型機の不備を是正するためには多くの費用が投入された。しかしながら、2008年にNAVAIR(海軍航空システム・コマンド)とベル・ヘリコプター社およびボーイング社が5か年契約を締結してからは、製造コストに相当な低減が見られるようになってきている。この件に詳しいある政府高官によれば、ベル・ボーイングの総額109億ドルのプロジェクトの全体を通じて、約2億ドルの経費節減が見込まれているのである。コスト低減の理由には、ベル・ボーイングがオスプレイをより効率的に製造し、安い価格で機体を供給できるようになったことに加えて、NAVAIRがコスト削減キャンペーンを積極的に展開したことが挙げられる。

8月4日、ベル・ボーイングは、政府に対し、122機のオスプレイを製造する2回目の5か年契約の提案を行った。この契約が履行されれば、海兵隊および空軍は、計画している合計410機のオスプレイの装備を完了できることとなる。両社が提案している価格は交渉中のものであり、まだ公表されていないが、法律の定めにより、政府は、同じ期間内に単年度契約を連続する場合に比較して「相当な節減」を伴うものでなければ、この種の取引に応じることはできないことになっている。議会の非公式の見解によれば、「相当な節減」とは、少なくとも10パーセントの節減を意味する。

海兵隊、空軍、NAVAIRおよびベル・ボーイングが、21世紀を通じて活躍するオスプレイに関し、さらなる経験を積めば、その運用コストの低減も図られるものと考えられる。NAVAIRプログラム・マネージャーの海兵隊大佐グレッグ・マジエッロによれば、過去1年間で、オスプレイの1飛行時間当たりのコストは、15,000ドルから9,500ドルまで低下した。

マジエッロ大佐は、また、今年のパリ航空ショーにおいて、オスプレイの速い飛行速度とそれがもたらす長い航続距離により、オスプレイは、反対者たちがしばしば代替機とすることを求める陸軍のUH-60ブラックホークなどよりも、遥かに安価な戦場での兵員輸送方法になり得る、という分析結果を公表した。この分析結果によれば、1個中隊の兵員を輸送するために必要なのは、4機のオスプレイまたは16機のヘリコプターのいずれかである。ただし、オスプレイであれば、その兵員を250海マイル離れたところまで一挙に運ぶことができるが、ヘリコプターの場合は、途中に設けられたFARP( 燃料弾薬再補給点)に立ち寄らなければならない。そのFARPの施設を運用・警戒し、そこまで地上で燃料を輸送するためには、多くの人員が必要となる。16機のヘリコプターの代わりに4機のオスプレイを使うことによって節約できる費用の総額は、約2億2400万ドルとなる、とマジエッロ大佐は述べている。

昨年行われた海兵隊内での別の分析では、効率性を表す指標として民間航空会社で一般的に用いられているコスト/シート・マイル(1海マイルあたりの乗客1人あたりの1飛行時間あたりの費用)を用い、オスプレイは、その速度と航続距離のおかげで、海兵隊や海軍のヘリコプターよりも遥かに安価であることが明らかにされた。その分析においては、2010年度のオスプレイの1飛行時間当たりの飛行コストが11,651ドルであったとしたうえで、24名が搭乗できるV-22 のコスト/シート・マイルは1.76ドルであるのに対し、7名が搭乗できる海軍のMH-60Sブラックホークは2.84ドル、12名が搭乗できるCH-46シーナイトは3.17ドル、24名が搭乗できるCH-53Eスーパースタリオンは3.12ドルであると算定されている。

このような状況を踏まえ、2000年に発生した事故の後は冷え切っていた、諸外国のオスプレイの調達に対する関心が高まりつつある。最近では、イスラエルが、ノースカロライナ州のニュー・リバー海兵隊航空基地に専門家チームを送り込み、オスプレイの試乗を行うなど、高い関心を示している。(訳者注:その後、イスラエルはオスプレイの調達を一旦キャンセルしている。)ベル・ボーイングは、最終的には、10か国以上がV-22を購入する可能性がある、と語っている。オスプレイに関する最新の事実を知った者たちは、それに感銘を受けているのが明らかなのである。オスプレイは、もはや、おとぎ話ではない。

出典:The V-22 is Safer Than Helos, Breaking Defense, 2018 Breaking Media, Inc.

翻訳:影本賢治, アビエーション・アセット管理人

備考:本記事の翻訳・掲載については、出典元の承認を得ています。

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4件のコメント

  1. 管理人 より:

    「ドリーム・マシーン」の出版に関わる業務があったため、前回の投稿からの期間が長くなってしまいました。

  2. 管理人 より:

    この記事は、オスプレイに関するノンフィクション「ドリーム・マシーン」の原著者であるリチャード・ウィッテル氏が、オスプレイ関係者にとって参考となる記事として紹介してくれた、いくつかの記事のうちのひとつです。今回、紹介された記事の翻訳は、これで終了です。

  3. 管理人 より:

    この記事から学ぶべきことの1つは、「事故発生率をもって安全性を議論することは無意味だ」ということだと思います。

  4. 管理人 より:

    同様に「ヘリコプターとティルトローターを比較することも無意味だ」とも言えると思います。